ふるさと納税は、納税者が特定の自治体に寄付することで税金の控除が受けられ、返礼品を受け取ることができる制度です。
もちろん住宅ローン控除対象者の場合もふるさと納税をすることは可能ですが、住宅ローン控除額によってはふるさと納税がただの寄付になるケースがあります。
今回はふるさと納税制度の概要・控除の仕組みと、住宅ローン利用者が利用する際に気を付けたいポイントについて説明していきます。
目次
- ふるさと納税とは
1-1.ふるさと納税のメリット
1-2.過熱した返礼品競争の見直し - ふるさと納税の控除手続き
2-1.確定申告による方法
2-2.ワンストップ特例制度を利用する方法 - 住宅ローン控除とは
- 住宅ローン控除を受ける方法
- 住宅ローン控除対象者がふるさと納税で注意するポイント
5-1.ふるさと納税手続きを確定申告で行う場合
5-2.ふるさと納税手続きをワンストップ特例制度で行う場合 - まとめ
1 ふるさと納税とは
ふるさと納税は出身地や応援したい自治体に寄付を行うことで自分の所得税・住民税が控除される仕組みで、寄付した額から自己負担額2000円を差し引いた分だけ税金の控除を受けることができます。
1-1 ふるさと納税のメリット
好きな自治体に寄付すると、寄付を受けた自治体から地元の特産品や名産品などをお礼の品として受け取ることができます。返礼品にはお米や肉といった食料品から食事券・宿泊券などのチケットまで魅力ある商品を用意する自治体もあります。
返礼品の寄付金額に対する割合(=還元率)は「30%~50%」としているケースが一般的で、自己負担額2000円を考慮してもお得な制度となっているため、多くの寄付者を引きつける要因となっています。
例えば、10万円を任意の自治体に寄付した場合、自己負担額2000円を差し引いた9万8000円が自分の居住する自治体へ納税する住民税から控除されます。加えて寄付をした10万円の30%相当(3万円)の品物が届けば、10万円の出費で12万8000円相当のメリットが受けられることになります。
1-2 過熱した返礼品競争の見直し
ただ、寄付者を集めようと返礼品の競争が激しくなるあまり、本来の地方自治体を応援するという趣旨からかけ離れ、還元率が異常に高く、地場産業に関係しないと思われる返礼品も多く登場するようになりました。
そこで総務省は、2018年9月、「還元率は30%以下かつ地場産品」とするよう各自治体に通達しました。今後は、還元率が高い返礼品を用意する自治体はふるさと納税の対象から外れる可能性もあります。
2 ふるさと納税の控除手続き
ふるさと納税後に税金控除を受けるためには、「確定申告による方法」「ワンストップ特例制度を利用する方法」のいずれかを選択する必要があります。それぞれ見ていきましょう。
2-1 確定申告による方法
ふるさと納税を行った年度の確定申告により控除を受ける方法です。以下の手順で行います。
- 寄付する自治体を選択する
- 寄付を申込、所定の方法で入金する
- 自治体からお礼の品とともに申告に必要な「寄付金受領証明書」等が届く
- 寄付をした翌年の2月16日〜3月15日までに確定申告を行う
2-2 ワンストップ特例制度を利用する方法
ワンストップ特例制度とは、もともと確定申告の必要のない給与所得者であったり、1年間に寄付をした自治体が5自治体以下であったり、ふるさと納税以外に確定申告をする必要がない場合に利用できる制度です。ただし医療費控除や住宅ローン控除初年度のため確定申告をするときはこの特例制度を利用できないため注意しましょう。
- 寄付する自治体を選択する
- 寄付を申込、所定の方法で入金する
- 特例制度利用に必要な「寄付金税額控除に係る申告特例申請書」を入手する※1
- 寄付をした翌年1月10日までに届くように申告特例申請書に必要事項を記入して寄付をした自治体に送付する※2
※1 自治体からお礼の品とともに届く場合もありますが、原則は自分で総務省のサイトや自治体のサイトで入手します
※2 確定申告の場合と違い、年が明けてすぐ期限が到来するため、年末近くに申し込むときは注意しましょう
3 住宅ローン控除とは
住宅ローン控除は、正式に「特定増改築等住宅借入金等特別控除」といいます。住宅ローンでマイホームの新築、購入、増改築等をした際、一定の要件に当てはまることを条件に所得税などから税額控除が受けられる制度です。
例えば平成30年度中に居住した場合、住宅ローン等の年末残高※の1%が所得税から控除できます。なお所得税で引き切れなかった場合は、住民税から控除されます。期間は10年間です(ただし住宅を取得し居住を開始した時点により若干の違いがあります)。
※最高4,000万円、認定住宅(認定長期優良住宅や認定低炭素住宅のことで、それぞれ法律で規定されている住宅のこと)の場合は5,000万円です。
4 住宅ローン控除を受ける方法
住宅ローン控除を受けるためには、居住を開始した初年度に必ず確定申告を行わなければなりません。なお給与所得者であれば、2回目以降は勤務先での年末調整手続きの中で処理することができます。
5 住宅ローン控除対象者がふるさと納税で注意するポイント
住宅ローン控除対象者はふるさと納税を利用することができます。ただし、住宅ローン控除額が高い場合、ふるさと納税のメリットを十分に受けられないケースがあります。特に、「住宅ローン控除額が所得税額を越えて住民税からの控除上限額に達している方」は注意が必要です。
5-1 ふるさと納税手続きを確定申告で行う場合
ふるさと納税の税控除手続きを確定申告で行う手順を見ていきましょう。
①所得控除としてふるさと納税の寄付金額が控除される | ふるさと納税控除後の課税所得を求める計算式は次の通りです。
総収入-{ふるさと納税額(寄付額)-2000円(自己負担分)}=ふるさと納税控除後所得 |
②基礎控除、配偶者控除、社会保険料控除等の控除により課税所得が確定し、その額に基づき所得税及び復興特別所得税の納付額が確定する | 所得は「ふるさと納税額‐2000円」分だけ減少するため、給与所得者の場合はすでに源泉徴収された所得税等から減少した所得に対応する所得税等が還付されます。その額は次の通りです。
{ふるさと納税額(寄付額)-2000円(自己負担分)}×(所得税+復興特別所得税=所得税率×1.021※) |
③所得税納付額から住宅ローン控除額を控除する | 住宅ローン年末残高の1%か物件取得金額の低い方となります |
④所得税額が住宅ローン控除額で引ききれなかった時は、控除残額につき住民税から控除限度額まで控除する | 所得税の課税所得金額の7%まで、最大13万6500円となります |
⑤残る住民税からふるさと納税の寄付金額を控除する | a 住民税からの控除額(基本分) ふるさと納税額(寄付額)-2000円(自己負担分)×10% b 住民税からの控除額(特例分) |
①のふるさと納税での所得控除が先に行われ、所得が減少することで所得税・住民税がその分減ります。
次に住宅ローン控除を所得税、住民税の順で行いますが、住民税から控除できる上限は所得税の課税所得金額の7%(最大13万6500円)と定められています。
住宅ローン控除額の残額が上限以上であれば住宅ローン控除がそれだけ有効活用できないことになります。
つまり「住宅ローン控除額が所得税額を越えて住民税からの控除上限額に達している」場合です。
ふるさと納税手続きを確定申告で行う場合の限度額を調べる方法
ふるさと納税がいくらまでお得に利用できるかは次の通りです。
①所得税額と住民税額を調べる
所得税については、所得や所得税控除額が前年と大きく変わらない場合は給与所得者であれば前年の源泉徴収票を参考するのが確実でしょう。上部右端にある源泉徴収税額が「所得税年税額」です。
住民税(都道府県民税と市町村民税を合算したもの)については、6月ごろ発行される住民税決定通知書(名称は各自治体により異なる)を参考にします。文書に記載されている「所得割額(都道府県民税と市町村民税を合算)」と「均等割額(都道府県民税と市町村民税を合算)」の合計が「住民税の年税額」となります。
②住宅ローン控除額を算定する
年末残高の1%となるため、支払明細書から12月分支払後の残高を確認して算出します。
①、②で算出した金額を基に住宅ローン控除後の所得税・住民税額を確認する
まず所得税から住宅ローン控除額を差し引きます。所得税が全て控除されてもまだ住宅ローン控除額に残額があれば、次に残額を住民税から控除します。
しかし住民税から控除できる上限は所得税の課税所得金額の7%(最大13万6500円)であるため、控除額の残額が最大限度以上であれば、住宅ローン控除がそれだけ有効活用できないことになります。
住民税を控除した残額がある場合、ふるさと納税により控除を受けられる余地があります。しかし残額がない場合、ふるさと納税をしても控除できる税がない以上、単に寄付をしただけで税控除を有効に利用できないことになります。
なお住民税に残額があっても全てをふるさと納税で控除できるわけではありません。「住民税の所得割の20%」以上の控除はできないため、住民税の所得割の20%を超えないようにふるさと納税額を設定するのがポイントです。
具体的な計算例
上記の検討方法を住宅ローンの控除額別に見てみましょう。
①「所得税年額」10万円、「住民税年額」15万円(うち所得割14万円)、所得税率10%の場合で、住宅ローン控除額が20万円のケース
まずは、所得税納付額から住宅ローン控除額を控除します。
所得税年額10万-住宅ローン控除額20万=-10万
10万円分余ったため、その分の住民税につき住宅ローン控除が受けられます。
住民税は以下の通りです。
15万円-10万円=5万円
結果、住宅ローン控除額を全て使い切ることができ、5万円のふるさと納税の控除を利用する余地があります。
しかし所得割14万円の20%=2万8000円がふるさと納税控除限度額となるため、控除額が2万8000円になるふるさと納税額(寄付上限額)は次の通りです。
2万8000円÷(90%-10%×1.021)+2000円≒3万7000円
② ①において住宅ローン控除額が26万円のケース
所得税納付額から住宅ローン控除額を控除すると10万-26万=-16万ですが、控除額は最大13万6500円となるためこれ以上控除することはできません。
住民税控除額は13万6500円で、住民税は15万-13万6500円=1万3500円となります。住宅ローン控除額を全て使い切ることはできず、ふるさと納税を控除する余地も1万3500円しかないことになります。
なお控除額が1万3500円になるふるさと納税額(寄付上限額)は1万3500円÷90.21%+2000円≒1万7000円となります。
なお所得や家族構成、住宅の購入時期や住宅ローン残高などの条件によって結果は異なります。ネット上に多くの住宅ローン減税とふるさと納税の併用判定ツールが掲載されており、それを活用するのもいいですが、専門家である税理士に相談すると最も正確に計算してくれるためおすすめです。
5-2 ふるさと納税手続きをワンストップ特例制度で行う場合
一方、ワンストップ特例制度を利用した場合は次の順序で控除が行われます。
①所得税から住宅ローンの控除額を控除します
(住宅ローン年末残高の1%か物件取得金額の低い方)
②所得税額が住宅ローン控除額で引ききれなかった時は、控除残額につき住民税から控除限度額まで控除します
(所得税の課税所得金額の7%まで、最大13万6500円)
③残る住民税からふるさと納税の寄付金額を控除します
a 住民税からの控除額(基本分)
ふるさと納税額(寄付額)-2000円(自己負担分)×10%
b 住民税からの控除額(特例分)
ふるさと納税額(寄付額)-2000円(自己負担分)×{100%-10%(基本分の税額控除)-(所得税+復興特別所得税=所得税率×1.021)}
ふるさと納税の控除は住民税についてのみ行われるため、確定申告による場合と違って所得控除がされません。したがって納税額が減少せず元々の住宅ローン減税、ふるさと納税の控除を有効に活用することができます。
住宅ローン控除後の住民税と自己負担分2000円を差し引いたふるさと納税額と同額になるようにすればいいでしょう。
なお確定申告が不要な方はワンストップ特例制度を利用したほうが簡単です。
6 まとめ
いかがでしたでしょうか。ふるさと納税は手段・金額を事前に十分に検討しておけば住宅ローン控除と上手く併用できる制度です。今回の記事を参考に両方の制度を上手に活用してみてください。
なお、現在の金利をどれだけ削減できそうか、無料で簡易診断してくれるサービスなどもありますので、住宅ローン自体の返済額が落とせないかも検討されてみると良いでしょう。
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HEDGE GUIDE 編集部 ふるさと納税チーム

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