経済格差はなぜ生まれるの?格差社会の問題点や格差問題・貧困問題に取り組むNPO法人も

2019年の「国民生活基礎調査」によると、世帯の年間の手取り収入が127万円未満の世帯員の割合である「相対的貧困率」は15.4%で、日本では約6人に1人が貧困状態にあると指摘されています。

このような経済格差が生まれてしまう原因、また経済格差によって生じる問題にはどのようなことがあるのでしょうか。

本記事では日本の経済格差の現状、経済格差と貧困、貧困問題に取り組む団体3つを解説していきます。

目次

  1. 調査結果からみる日本の経済格差の現状
    1-1.ジニ係数から見る日本の経済格差
    1-2.経済格差と貧困の問題点の違い
  2. 経済格差が起きる原因
  3. 経済格差・貧困問題に取り組む主な団体3つ
    3-1.認定NPO法人3keys
    3-2.一般社団法人反貧困ネットワーク
    3-3.公益財団法人あすのば
  4. まとめ

1.調査結果からみる日本の経済格差の現状

厚生労働省が実施する「2019年国民生活基礎調査」によると、2018年の1世帯当たり平均所得金額は552万3千円となっています。

高齢者世帯は312万6千円、高齢者世帯以外の世帯で659万3千円、児童のいる世帯では745万9千円です。

世帯の年間可処分所得(手取り収入)を世帯人員で調整したものは「貧困線」と呼ばれます。上記の調査が行われた2018年の貧困線は127万円で、127万円に満たない「相対的貧困率」は15.4%、日本では約6人に1人が貧困状態にあると言えます。

1-1.ジニ係数から見る日本の経済格差

経済格差を測る代表的な指標として「ジニ係数」があります。イタリアの統計学者コラド・ジニにより考案された所得などの分布の均等度合を示す指標で、近年は所得差に応じた税金の徴収や社会保障によりジニ係数は改善傾向にあります。

※画像引用:厚生労働省「所得再分配によるジニ係数の改善の推移

ジニ係数の改善が出来ている要因に、税金や社会保障制度による「所得再分配」があります。

税金・社会保障は、累進課税制度によって所得の高い人に多く税金を負担してもらい、社会保障給付によって低所得者に所得を移行します。このような所得再分配の効果により、ジニ係数は年々改善傾向にあることが分かります。

1-2.経済格差と貧困の問題点の違い

経済格差と貧困については異なる視点でとらえることが重要です。経済格差の要因は個人の能力や成果によるところもあり、個人が自由に経済活動を行う資本主義では不平等や格差が生まれやすい傾向があります。資本主義を持続させるためには不平等・格差是正が前提であるという指摘もあります。

一方の貧困問題について見てみましょう。貧困には、生活に必要最低限の衣食住や教育などが受けられない「絶対的貧困」と国や地域の中で相対的に貧しい「相対的貧困」の2つの定義があります。経済格差の広がりが貧困を生み、貧困が深刻化することで経済格差がさらに広がるというスパイラルがあります。

公益社団法人チャンス・フォー・チルドレンの「コロナ禍における生活困窮世帯の子ども及び家庭に関する調査報告書」によると、生活困窮世帯の49%が「コロナ禍の影響で所得が減少した」と回答しています。また、今後所得が減少する見込みがあると回答した世帯を合わせると74%に上ります。

コロナ禍の影響による子どもの教育や学習に関して尋ねたところ、「学校事情による授業機会減少(休校・学級閉鎖)」と回答した割合が45%、「学習塾に通えない」と回答した割合が32%でした。十分な教育を受けることができないと就職や所得などに影響すると考えられるため、貧困を放置することで、経済面では国全体の所得減少、税・社会保険料収入の減少、社会保障給付の増加など、社会的損失につながる可能性も高まります。

一方、社会面から貧困を考えると、貧困は社会とのつながりが少ない状態でもあります。つながりが少ないと、困ったことがあったときに親族や友人、地域など他者に適切に助けを求めることができず、問題を一人で抱えることになります。孤立状態を解消することで貧困のスパイラルから抜け出せるきっかけをつかみやすくなるため、貧困問題解消のアプローチの一つは孤立問題の解消と考えることができます。

2.経済格差が起きる原因

所得格差が生まれる理由は、様々な歴史的・社会的要因が積み重なっており、何か1つに限定することはできません。

例えば、資本主義社会においては運用できる余裕資金を多く持っている方が、投資や資産形成に回せる資金も多くなり、格差を助長することになります。貧困により生活資金しか捻出できない層と格差が広がる大きな原因の一つと言えるでしょう。

その他、直接的な資金運用という面だけでなく、雇用についても格差が見られます。公益社団法人経済同友会の「子どもの貧困・機会格差の根本的な解決に向けて」では、経済格差の原因として高齢化の進展、離婚率の上昇・都市と地方の格差の広がりに加え1990年以降の長期不況による影響が大きいと指摘されています。

近年では、新型コロナウイルスの流行により経済活動が制限された結果、非正規雇用者(有期雇用者)が職を失うなど低所得者層が大きな影響を受けています。長期に渡る不況と雇用形態の変化で非正規雇用が増加し、個人間の賃金格差・所得格差が拡大した、という側面もあるでしょう。

このように経済格差が起きる要因は一つではなく、それぞれの社会情勢や状況に適した対策が重要であると言えます。

3.経済格差・貧困問題に取り組む主な団体3つ

経済格差がすでにある状況では、すべての人に一律な(平等な)対応を行ってしまうと、経済的に富める人にも再分配が行われ、貧しい人との格差を埋めることができないという問題があります。このような格差を埋めるには、経済的な公平性に取り組む活動が必要です。

様々な人のニーズに合わせた支援ができるNPOでは、公平に近づける機会を提供しやすいと言えます。「格差を埋める」だけではなく「生まれた環境による格差の連鎖をどのようにして断ち切るか」がより重要な視点と言えるでしょう。以下、経済格差・貧困問題に取り組む主な団体をご紹介します。

  • 認定NPO法人3keys
  • 一般社団法人反貧困ネットワーク
  • 公益財団法人あすのば

3-1.認定NPO法人3keys

3keys認定NPO法人3keysは「子どもの権利が保障されない子どもたちをゼロにする」をミッションに子どもたちの格差・貧困・社会保障などの現状を社会に伝え、問題解決に取り組む団体です。

子供達の現状を伝えるためにホームページで公開している「白書日本の子どもたちの今」では7人に1人の子どもが貧困状態であることが記されています。セミナー・講演などでも啓発・普及活動を行っています。

また、子どもたちの支援事業として10代向け支援サービス検索・相談サイト「Mex(ミークス)」の運営、YouTubeオンライン相談会などを展開しています。

寄付は毎月の継続寄付と単発寄付、不要品買取サービスを利用して買取料金を寄付する事が可能です。寄付つき自動販売機やふるさと納税からも寄付ができます。寄付金は、寄付金控除の対象となります。

3-2.一般社団法人反貧困ネットワーク

一般社団法人反貧困ネットワーク一般社団法人反貧困ネットワークは2007年に貧困問題に取り組む多様な市民団体・労働組合・法律家などが集まり結成されました。

貧困問題を社会的・政治的に解決し、人間らしい生活と労働の保障を実現させることを目的としています。

2020年に3月には新型コロナ感染症により拡大する貧困問題を解決するため、貧困問題に取り組む団体と共に「新型コロナ災害緊急アクション」を結成し、「新型コロナウイルス災害:緊急連帯基金」を発足させました。

2021年度活動報告によると、約1億6,000万円の寄付金が集まり、8,600万円以上を給付しました。

毎月の寄付と単発の寄付に加え年間3000円以上の寄付により賛助会員になることができます。単発の寄付は①支援活動、②宿泊費や生活費などの直接給付に活用されるささえあい基金、③居場所を失った犬や猫の支援から選ぶ事が可能です。

3-3.公益財団法人あすのば

公益財団法人あすのば公益財団法人あすのばは「明日の場」であると同時に「US(私たち)」と「NOVA(新しい・新星)」を組み合わせ名づけられました。

主に子どもの貧困問題に対する調査や政策の提言・啓発事業、子どもを支える組織・人への支援、合宿キャンプの開催、入学・新生活を迎える子どもへの給付金など子供への直接支援分野などで活動しています。

ホームページ内の「あすのば通信」でキャンプなどのイベント開催、活動報告を見る事が出来ます。寄付は継続又は単発で受け付けており、毎月の寄付は500円から設定可能です。

Yahoo募金やTポイント・ソフトバンクの携帯電話料金と一緒に決済(つながる募金)でも寄付が出来ます。寄付金は基本的に寄付金控除の対象となりますが、Yahoo募金・つながる募金経由での寄付は、寄附金控除が適用されないためご注意ください。

【関連記事】寄付をすると住民税・所得税は安くなる?寄附金控除の仕組みや手順を解説

まとめ

日本の経済格差の実態、経済格差と貧困について、貧困問題に取り組む団体3つをお伝えしてきました。

経済格差は長期の不況による影響が大きいと推測されています。本記事でご紹介した貧困問題に取り組む団体は全て継続寄付と単発寄付を受けつけており、少額からでも寄付が可能です。

この記事を参考に経済格差と貧困、貧困問題に取り組む団体について知り、今後の活動に役立てていきましょう。

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田中 あさみ

経済学部在学中に2級FP技能士(AFP)の資格を取得。ライターとして不動産投資を含む投資や年金・保険・税金等の記事を執筆しています。医療系の勤務経験がありますので、医療×金融・投資も強みです。HEDGE GUIDEでは不動産投資を始め、投資分野等を分かりやすくお伝えできるよう日々努めてまいります。