不動産価格の高騰は止まらず、2025年にはついに政策金利の引き上げも実行されました。このような市場環境で、「今から不動産投資を始めても、本当に利益を出せるのだろうか?」「金利上昇で、将来のキャッシュフローが悪化するのではないか?」といった不安や疑問をお持ちの投資家は少なくないでしょう。
本記事では、そのような不確実性の高い市場を冷静に見極めるため、2025年上半期の不動産市場を最新データに基づき多角的に分析します。たとえば、2025年上半期の不動産市況は、2024年以前のトレンドと大きく変わらず、価格上昇が続きました。賃料相場が上昇したため、利回りは横這い~微減に留まっています。地域・物件タイプによっては、2024年末から利回りが上昇したカテゴリーもありました。
また、後半では2025年下半期の不動産投資戦略のポイントも紹介しています。これからの不動産投資を検討するうえで、ぜひ参考にしてください。
目次
- 不動産市場に関する各種データ
1-1.区分マンションの市況
1-2.一棟アパートの市況
1-3.ローン金利の推移 - 下半期の見通しと不動産投資戦略
2-1.市況の方向性は大きく変わらない想定
2-2.一棟アパートに投資妙味がある状況
2-3.三大都市圏の特性を捉えてエリア選びを - エリア選定や融資付けを相談できる不動産会社
- まとめ
1 不動産市場に関する各種データ
2025年上半期の不動産市場のデータをまとめました。まずは利回りです。
区分マンション・一棟アパートの利回り
引用:「不動産投資と収益物件の情報サイト 健美家(けんびや)レポート「収益不動産 市場動向マンスリーレポート2025年6月期」
一棟アパートが、2025年6月の利回りが7.99%で、2024年12月から0.19%下がりました。区分マンションの同月利回りは6.63%で、こちらは2024年12月対比で横ばいです。
次に、価格の推移は以下のとおりです。
区分マンション・一棟アパートの価格
引用:不動産投資と収益物件の情報サイト 健美家(けんびや)「収益不動産 市場動向マンスリーレポート2025年6月期」
一棟アパートの価格は2025年6月時点で8,315万円で、2024年12月対比で+521万円(+6.7%)と上昇しています。区分マンションの価格は2,334万円で、2024年12月対比+91万円(+4.3%)です。これは、継続的な建築費・人件費の高騰、円安を背景とした海外投資家からの資金流入、そしてインフレヘッジとしての不動産需要が複合的に作用した結果と考えられます。
不動産全体の価格が長期で上昇傾向にあるなか、この上半期は相対的に利回りが高いアパートの方が価格上昇・利回り低下が進んだ形です。
区分マンションは、価格が上昇したにもかかわらず利回りがほとんど変わっていません。賃料上昇が、価格の高騰をカバーしているものと推測されます。
区分マンション・一棟アパート共に、価格は上昇基調を維持しています。
続いて賃料の推移については、マンション・アパートの区分けがありませんが、地域別で以下のような状況となっています。
全国および三大都市圏の賃料変化(1部屋)
引用:全国賃貸管理ビジネス協会「全国家賃動向」
全国的に賃料は上昇傾向にあり、特に大阪府の上昇が顕著です。この背景には、物価上昇分の価格転嫁が進んでいることに加え、住宅価格の高騰により「購入」から「賃貸」へシフトする層が増加していることも一因として考えられます。大阪の突出した上昇は、万博開催に向けた再開発やインバウンド回復に伴う在留外国人の増加が賃貸需要を強力に押し上げていることを示しています。
1-1 区分マンションの市況
続いて、区分マンションに絞ったデータをまとめました。
区分マンションの全国・三大都市圏利回り
引用:不動産投資と収益物件の情報サイト 健美家(けんびや)レポート「収益不動産 市場動向マンスリーレポート2025年6月期」
近年は三大都市圏の中では、東海地方が利回りが高い状態が続いています。全国的に区分マンションの利回りがすでに低位にある中で、東海地方の利回り低下が進んでいるのが、足元の傾向です。東海地方の利回りは、2025年6月で7.94%で、2024年12月対比で-1.03%も下がりました。
区分マンションの全国・三大都市圏価格推移(万円)
不動産投資と収益物件の情報サイト 健美家(けんびや)レポート「収益不動産 市場動向マンスリーレポート2025年6月期」
価格については首都圏で上昇が進んでいます。2025年6月の首都圏の区分マンション平均価格は2,713万円で、過去1年で335万円上昇しました。東海と関西は月によって上下はあるものの、概ね横ばいとなっています。
1-2 一棟アパートの市況
一棟アパートの状況も見てみましょう。まずは利回りです。
一棟アパートの全国・三大都市圏利回り
引用:不動産投資と収益物件の情報サイト 健美家(けんびや)レポート「収益不動産 市場動向マンスリーレポート2025年6月期」
大幅に変化しているわけではないものの、足元半年で見ると首都圏・関西が低下し、東海はやや上昇しています。全国平均が7.99%(2024年12月対比-0.19%)、首都圏が7.26%(同-0.24%)、関西が8.75%(同-0.50%)である一方、東海圏は9.29%(同+0.50%)です。これは、東海圏の区分マンションとは逆の動きであり、物件価格の上昇ペースが賃料上昇に追いついていない可能性を示唆しており、投資家にとっては相対的な「割安感」のシグナルと捉えることもできます。
続いて不動産価格は次のとおりです。
一棟アパートの全国・三大都市圏の物件価格
引用:不動産投資と収益物件の情報サイト 健美家(けんびや)レポート「収益不動産 市場動向マンスリーレポート2025年6月期」
物件価格は全国・三大都市圏全て上昇しています。特に首都圏が顕著で、2025年6月時点で9,064万円(2024年12月対比+681万円)となっています。東海圏は6,577万円(同+196万円)、関西圏は7,594万円(同+320万円)です。首都圏は物件価格が9,000万円を超えており、取引価格が高額化しています。
1-3 ローン金利の推移
日銀が公表する長短プライムレートの2025年に入ってからの推移はつぎのとおりです。
長短プライムレートの推移
引用:日本銀行「長・短期プライムレート(主要行)の推移 2001年以降」
日銀は、2025年1月に0.5%への利上げを実行しています。その影響が上半期には現れており、長短プライムレートは共に小幅に上昇しました。変動金利を借りて投資を行っている方は、ローンの返済負担が重くなる可能性があるため、注意が必要です。
また、金利上昇は、投資家が不動産に期待する利回り(キャップレート)の上昇圧力となります。現状ではまだ歴史的な低金利水準であるため、市場のトレンドを転換させるほどのインパクトには至っていませんが、今後の動向次第で金融機関の融資スタンスがより慎重になる可能性も考えられるため、一層の注意が必要です。
2 下半期の見通しと不動産投資戦略
不動産価格が高騰する中、相対的に利回りが低い区分マンション投資の実行には、慎重な判断が求められます。
一棟アパートであれば、依然としてキャッシュフローを確保しながら投資する余地がありそうです。エリアについては三大都市圏であればいずれも投資機会はありますが、自分のリスク・リターンへの考え方に合った地域を選びましょう。
2-1 市況の方向性は大きく変わらない想定
現時点では、不動産価格が緩やかに上昇する傾向は変わらないと想定しています。また、物価高騰を背景に賃料が上昇傾向にあるため、利回りはおおむね横ばいに近い推移となる見込みです。
ここからの政策金利の引き上げは慎重に行われると見込まれます。次の利上げは、2026年以降になる可能性も相応にあります。ゼロ金利からは幾分金利があがったとはいえ、まだまだ不動産投資に取り組みやすい環境です。
入居率は安定しており、賃料の上昇傾向も短期的には変わらないでしょう。すなわち、入居需要・投資需要ともに、短期的に不動産市況が悪化するリスクは限定的です。
2-2 一棟アパートに投資妙味がある状況
足元の投資環境を踏まえると、一棟アパートへの投資の魅力が相対的に高まっているといえます。
利回りが極端に低下した区分マンション投資は、金利上昇が重なると、毎月のキャッシュフローが赤字になる「逆ザヤ」状態に陥るリスクが非常に高まっています。将来の大きな売却益を確信できない限り、慎重な判断が必要です。
対して一棟アパートは、利回りが低下傾向にあるとはいえ、区分マンションより高い水準を維持しており、キャッシュフローを確保しやすい優位性があります。
さらに、一棟アパートには、建物だけでなく「土地」という資産を保有できるため、長期的な資産価値の保全に繋がる「資産価値の安定性」、金融機関からの評価が高まりやすく、融資戦略の幅が広がる「融資戦略の柔軟性」、投資家向けだけでなく、土地として実需層(戸建て用地など)への売却も視野に入れられるため、出口戦略の選択肢が豊富である「出口戦略の多様性」といった戦略的なメリットも存在します。
現状の投資環境でも、エリア選び・物件選びなどを工夫すれば、うまく経営を進める余地は充分にあるでしょう。
2-3 三大都市圏の特性を捉えてエリア選びを
三大都市圏は、現状であればどこでも投資機会があります。ただし、自分の投資スタンスと合った地域をしっかりと選びましょう。
堅実に投資を進めたい方は、首都圏を選ぶのがよいでしょう。賃料が最も高いため、金額で見たときには、潤沢なキャッシュフローを獲得できる可能性があります。
ただし、今後も安定した需要が見込まれる分、利回りは相対的に低くなります。一棟アパートで、平均9,000万円を超える高額な物件価格にも注意が必要です。与信枠や手元の自己資金が潤沢にある方が検討しやすいエリアといえます。
大阪は、リスク・リターンの面でもっともバランスが取れたエリアとなっています。インバウンドや万博をターゲットとした開発の影響もあったのか、賃料が足元上昇し、次に紹介する東海地域との差が拡大傾向です。
一棟アパートの利回りは首都圏より0.8%高く、高い収益性を維持する余地があります。万博特需の剥落には一応の留意が必要ですが、現在の指標を見る限り極端に割高化している様子はないため、過度な心配は不要と考えてます。
高い収益性を狙いたいなら、東海地域でのアパート投資を検討するのも一案です。東海地方のアパート利回りは、2025年6月で平均9.3%に達しています。
三大都市圏の中では人口などでみた都市の規模が最も小さいこともあり、ややリスクの高い投資先とみられています。賃料収入も、三大都市圏の中で最も低くなっています。
過去半年で利回りが0.5%ほど上昇していて、相対的に割安感が強まってるというのも一つの考え方です。東海地域だけが、三大都市圏の中で急速に衰退するリスクは必ずしも高くありません。
むしろ、東京・名古屋間でのリニア開通に向けて、今後さらなる発展が期待できる地域です。相対的な割安感を評価して、あえてリスク高めの投資を行うなら、東海地域を選ぶのも一つの選択肢といえます。
3 エリア選定や融資付けを相談できるアパート経営会社
ここではエリア選定や融資付けに強みがあるアパート経営会社2社をご紹介します。
3-1.シノケンプロデュース

- 駅徒歩10分以内の土地にこだわり、入居率98.75% (2024年年間平均/自社企画開発物件)
- 管理戸数50,000戸以上(2024年12月末時点)の豊富な管理実績
- 初回の入居が成約になるまで家賃を100%保証する「100%初回満室保証」
シノケンプロデュースは、東京・福岡・大阪・名古屋・仙台の都市圏で投資用アパートの販売を中心に行っているシノケングループのグループ企業です。管理戸数50,000戸以上(2024年12月末時点)の実績があり、直近10年の入居率は98%超の実績があります。初回の入居が成約になるまで家賃を100%保証する「100%初回満室保証」や、入居者からの家賃の支払いが遅れた場合の家賃滞納保証などオーナーが安定した収益を生むための保証制度も充実しています。購入者の半数以上がリピーターとなっており、会社員・公務員からの評判も良い会社です。
さらに、シノケンでは入居者向けコールセンター(24時間365日8カ国語対応)で、外国人や高齢者など敬遠されがちな方にも手厚い対応を行っています。このような入居者向けサービスは、高齢者の継続的な安否確認、外国人の言語の壁によるコミュニケーションや生活マナーの改善などが期待でき、オーナーにとっても入居者層を広げられるメリットや将来的な入居需要に応えることができるメリットがあります。
【関連記事】シノケンのアパート経営の評判は?営業、融資、物件、入居率の評判・口コミ
3-2.アイケンジャパン

- 入居者のターゲットを社会人女性に絞り、入居率99.3% (2024年年間平均/自社企画開発物件)
- 入居者が決まるまで無期限で家賃保証が行われる「初回満室保証」
- 女性入居者に合わせた高い防犯性を備えている点も特徴的
アイケンジャパンは、「堅実なアパート経営」をコンセプトに掲げる不動産投資会社で、2006年の創立から1000棟以上の開発・引渡し実績があります。
アイケンジャパンのアパートは、対象エリアを主要駅10分圏内(首都圏は15分圏内)、入居者のターゲットは物件選びの目線が厳しい社会人女性に絞って、防音性・防犯性・デザイン性・コストパフォーマンスなどを追求し、入居率99.3%(2023年年間実績)を実現しています。事業計画の設定家賃に対しても、10年以上経っても98.7%(2024年6月末時点)の高い収益率を達成できており、オーナーからの紹介・リピート率も高い会社です。
さらに、オーナーに対する保証やサポートが手厚いのもアイケンジャパンの特徴です。家賃滞納保証や管理代行サポートなども利用できるため、初心者の方でもアパート経営に取り組むことができます。建物完成後は全部屋に入居者が決まるまで無期限で家賃保証が行われる「初回満室保証」があり、地盤の問題や構造上の欠陥についても、建物引渡日の翌日から20年以内に不同沈下が発生し、建物に被害が出た場合、建物と地盤の修復工事を行う「宅地地盤保証」という保証があります。
また、アイケンジャパンの入居者のターゲットとして想定しているのは「社会人女性」のため、①オートロック・カラーモニターフォン、②共用廊下・共用階段が屋内となるように設計、③バルコニー前をライトで照らすなど、④高さのあるベランダにする、⑤防犯シャッター、⑥防犯カメラの設置など、ターゲットから求められる高い防犯性を備えている点も特徴的です。
3 まとめ
物価の上昇が進むなか、上半期の不動産市況はおおむね良好で、賃料と不動産価格は高騰しました。
利回りについては、エリアや物件タイプによって方向性がまちまちとなっています。上半期には政策金利の引き上げやローン金利水準の小幅上昇もみられましたが、不動産市況のトレンドが悪化する兆しはあまりみられません。
下半期も状況は大きく変わらず、物価上昇や低位にとどまるローン金利が、不動産市況の下支えとなる見込みです。そのような環境の中で、毎月のキャッシュフローを維持しやすいアパート投資を行うのは、有効な選択肢の一つといえるでしょう。
価格が高騰し、金利も上昇する環境では、以前よりも多くの自己資金とリスクへの備えが求められます。ご自身の現在の財務状況と、どこまでのリスクなら許容できるのかを冷静に再評価しましょう。また、現在検討している物件について、将来の金利が1%、2%と上昇した場合でもキャッシュフローが維持できるか、具体的な数値で厳格にシミュレーションを行う必要があります。
さらに、投資前には、マクロな市場データだけでなく、実際に足を運び、候補エリアの駅周辺の雰囲気、競合物件の家賃や稼働状況、地域住民の属性など、ミクロな情報を収集することも非常に重要です。その「肌感覚」が、最終的な投資判断の精度を大きく左右します。不確実な時代だからこそ、データに基づいた冷静な分析と、それに基づく具体的な行動が不可欠です。

伊藤 圭佑

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