日本では長年にわたり不動産価格の上昇が続いています。本来、物件価格の高騰は利回りの低下を招き、やがて投資需要が冷え込むことで価格が調整されるのが市場のサイクルです。
しかし、現在の日本市場は、金融政策の転換期を迎えつつも、根強いインフレや円安などを背景に、高値圏での推移が続いています。物件価格の高い状態が続くと、これから物件を購入する人の利回りや、必要な自己資金にも影響します。
本記事では、国土交通省の不動産価格指数などの統計を基に、物件価格の高騰がアパート経営に及ぼす影響を整理します。そのうえで、今後の見通しと、物件価格が高い時期にアパート経営で確認しておきたい点を取り上げます。
1 不動産価格・物件価格の高騰の実態
国土交通省の不動産価格指数で、マンション・アパート(一棟)の価格の推移を見ます。
マンション・アパート(一棟)の不動産価格指数の推移(季節調整値)
※出典:国土交通省「不動産価格指数(商業用不動産)」を加工して作成。2009年第4四半期を100として編集部で指数化。
2009年第4四半期~2025年第1四半期(四半期データ)
価格は、リーマンショック後の2010年ごろから上がり始め、日本銀行が量的・質的金融緩和を始めた2013年ごろからは上昇が続きました。2016年にはマイナス金利政策が導入され、価格は2017年まで上がり続けました。その後、2018〜2019年には横ばいからやや下落する時期もありました。
2020年以降は、世界的なインフレ、資材価格の高騰、円安などを背景に、価格は再び上昇しました。2024年3月にマイナス金利政策が解除されたあとも、2025年第1四半期までのデータでは上昇が続いています。2009年第4四半期から2025年第1四半期までの約15年間で、三大都市圏のマンション・アパート(一棟)の価格指数(季節調整値)は約80%上昇しています。
2 物件価格の高騰で想定される影響
実際の動向を見る前に、物件価格の高騰によって起こりうる影響を整理します。物件価格が高騰すると、次のような影響が出る可能性があります。
- 利回りの低下
- 賃料の上昇
- 入居率の低下
- 投資に必要な自己資金の増大
- 不動産需要の低下・価格の頭打ち
2-1 利回りの低下
物件価格が上昇しても、賃料が同じペースで上昇するとは限りません。賃貸借契約は2年ごとの更新が多く、契約期間中の賃料をすぐに引き上げることは難しいためです。結果として「利回り(=年間賃料収入 ÷ 物件価格)」は低下し、投資の収益性は圧迫されます。
2-2 賃料の上昇
物件価格が高い時期に購入したオーナーは、利回りを確保するため、新規募集や契約更新の際に賃料の引き上げを検討することがあります。人口の流入が続く都心部や交通の便がよい地域では、賃料が上がりやすいと考えられます。
賃料が上がれば、物件価格が高くても、利回りの低下をある程度抑えられる可能性があります。賃料を引き上げられるかどうかは、交通の便や周辺の競合物件と比べて、入居者に選ばれ続ける物件かどうかに左右されます。
2-3 入居率の低下
賃料の上昇は、入居者の家計を圧迫します。家賃負担の限界を超えれば、入居者はより安価な郊外へ転出したり、住み替えを控えたりする可能性があります。これは空室の増加、つまり「入居率の低下」に繋がり、安定経営を脅かすリスクとなります。
2-4 投資に必要な自己資金の増大
不動産価格が高騰すると、投資を始めるときに必要な自己資金が増える場合があります。金融機関は、物件の担保評価や賃料収入を基に融資額を決めることが多く、物件価格が上がっても、融資額が同じように増えるとは限りません。賃料が物件価格の上昇に追いつかなければ、賃料収入を基にした評価は価格ほど上がらず、物件価格と融資額の差が広がります。その差を自己資金で埋めることになるため、より多くの自己資金が必要になる可能性があります。
2-5 不動産需要の低下・価格の頭打ち
利回り低下と自己資金の増大で投資のハードルが上がり、入居率の低下で運用リスクが高まれば、不動産投資の魅力は薄れます。買い手が減り、売り手が増えると、高騰した価格は調整されていくのが、一般的な市場の動きです。ただし、日本の市場には、価格の調整が起きにくい要因もあります。
3 これまでの市場の動きと今後の見通し
では、これまでに紹介した影響は、実際の市場でどのように現れているのでしょうか。
3-1 利回りは下がり、賃料は上がっている
健美家に登録された一棟アパートの表面利回りは、過去10年にわたって低下傾向にあります。
一棟アパートの表面利回りの推移
※出典:不動産投資と収益物件の情報サイト健美家(けんびや)「収益不動産市場動向 年間レポート(2024年)」を基に作成
全国平均では、2014年の10.2%から2024年の8.2%へ、約2ポイント低下しました。不動産価格の上昇を賃料収入の増加で吸収しきれず、投資家の収益性が下がっていると考えられます。賃料の推移は次のとおりです。
東京都・1部屋(1K・1DK・1LDK等)の平均賃料の推移(各年12月。2025年のみ6月)
※出典:全国賃貸管理ビジネス協会「全国家賃動向」を基に作成。同協会が家財保険の契約実績から集計した値
賃料は、不動産価格より遅れて上がり始めています。2016年ごろまでは低下傾向でしたが、その後は上昇に転じています。2020年12月から2022年12月まではほぼ横ばいでしたが、2022年12月から2024年12月の2年間では約7%上がりました。
賃料の動きは、不動産価格よりも物価の水準の影響を受けやすいという見方もできます。2020年を100とした消費者物価指数(総合)の推移は、次のとおりです。
消費者物価指数(総合、2020年=100)の推移
※出典:総務省統計局「2020年基準消費者物価指数」(政府統計の総合窓口(e-Stat))を加工して作成
消費者物価指数は、2014年4月の消費税率の引上げによる上昇を除くと、2016年ごろまでほぼ横ばいでした。2016年末ごろから緩やかに上がり始め、新型コロナウイルスが広がった時期に一度伸びが止まったあと、2022年に入ってから上昇のペースが速まりました。賃料も2016年ごろから上昇に転じており、物価とおおむね同じ時期に動き出しています。
利回りの低下と賃料の上昇は、どちらもデータで確かめられます。利回りの低下は、不動産価格の上昇率が賃料の上昇率を上回った結果といえます。利回りが下がると、借入れの返済や経費を賃料収入でまかなう余裕が小さくなります。
今後の賃料と利回りは、地域によって動きの差が広がる可能性があります。東京など大都市の中心部やその周辺は、交通の便がよく人が集まりやすいため、賃料が上がっても需要が落ちにくいと考えられます。
一方、人口が減っている地域では、賃料や不動産価格が下がるおそれがあります。国立社会保障・人口問題研究所の推計では、東京都を除く46道府県で人口が減り、その減少は時間とともに加速する見込みです。不動産価格や賃料は、地域の人口の動きの影響を受けます。
3-2 入居率は一時下がったあと持ち直している
日本賃貸住宅管理協会の「日管協短観」の数値を基に、地域別の入居率の推移をまとめました。
地域別の入居率の推移(委託管理・サブリースの全体)
※出典:公益財団法人日本賃貸住宅管理協会「日管協短観」を基に作成
関西圏では2020年度から2022年度にかけて、首都圏では2022年度に、入居率が下がりました。低下の理由は、この調査からは分かりません。同じ時期に、首都圏・関西圏以外の「その他」の地域では入居率がわずかに上がり、2022年度は92.9%でした。
一方で、2023年度には首都圏・関西圏とも入居率が持ち直しました。この時期は賃料の上昇が強まった時期にあたりますが、2023年度までのデータでは、賃料の上昇が入居率の低下につながる状況にはなっていません。
今の賃料の水準で高い入居率が続けば、オーナーの賃料収入は保たれるため、賃料や不動産価格の上昇は止まりにくいと考えられます。
3-3 融資の環境と海外からの需要は価格を支え続けるか
低い水準のローン金利と金融機関の融資、海外からの投資と外国人の賃貸住宅の需要は、不動産価格を支える要因になると考えられます。
まず融資の環境です。2016年にマイナス金利政策が導入されてから、金融機関が低い金利で不動産ローンを貸し出しやすい環境が続いていました。
日本銀行は2024年3月にマイナス金利政策を解除し、その後の利上げで、政策金利は2025年7月時点で0.5%程度となりましたが、依然として低い水準です。ただし、今後の金利は日本銀行の金融政策によって変わります。借入れの金利が上がれば、借入れを使う不動産投資の返済額が増え、金融機関の融資の条件が厳しくなる可能性もあります。こうした変化は、物件価格を押し下げる要因にもなり得ます。
次に、海外からの需要です。日本に住む外国人の数は、増加傾向にあります。
在留外国人数の推移(2012〜2023年は各年末、2024年は6月末)
※出典:出入国在留管理庁「令和6年6月末現在における在留外国人数について」ほかを基に作成
在留外国人の増加は、特に都市部で、賃貸住宅の需要が増える要因の一つになると考えられます。
また、海外の投資家が、投資の目的で日本の不動産を購入することも考えられます。2025年7月時点のドル円相場は1ドル140円台後半で、2010年代と比べると円安の水準にあります。
円安の局面では、外貨を持つ海外の投資家にとって、日本の不動産は外貨で見て割安になります。治安や政治の安定も、海外の投資家が日本の不動産を投資先に選ぶ理由の一つと考えられます。
このように、外国人の居住と海外からの投資の両方の需要も、不動産価格が短期的に下がりにくい要因の一つになっているとみられます。
4 物件価格が高い時期のアパート経営で確認しておきたいこと
物件価格の高騰は続き、利回りは低下傾向にあります。3章で見た要因から、価格は短期的には下がりにくいという見方がある一方、金利の上昇などで市場の状況が変わる可能性もあります。物件価格が高い時期に購入する場合は、利回りが低く、自己資金が多く必要になりやすいことを踏まえて、収支を確かめる必要があります。
こうした時期にアパート経営を考えるときに見ておきたい点は、次の4つです。1つ目は、エリアの選び方です。人口の推移や再開発の計画などのデータを基に、賃貸の需要が続きそうな地域かを見極めます。
2つ目は、資金計画です。借入れの金利が上がった場合の返済額を試算し、その場合でも賃料収入で返済と経費をまかなえるかを確かめておく必要があります。自己資金の割合を高めて借入額を抑えると、金利が上がったときの返済額の増加は小さくなります。ただし、その分だけ手元の資金は少なくなります。
3つ目は、物件の種類です。新築や築浅の物件のほか、中古の物件も選択肢になります。中古の物件は価格を抑えやすい一方、修繕の費用がかかりやすく、融資の期間も短くなりやすい傾向があります。中古の物件を選ぶときは、建物の状態を調べ、リノベーションの費用も含めて利回りを計算することになります。
4つ目は、売却の見通しです。購入の時点で、いつごろ、どのような買い手に、どの程度の価格で売却できそうかを考えておきます。市場の状況が悪くなって売却の価格が下がった場合の収支も試算しておくと、保有を続けるか売却するかを判断しやすくなります。
物件価格が高い時期は、利回りの低下と必要な自己資金の増加、金利の変化を踏まえて、物件ごとの収支を検討することが大切です。
5 将来を見据えたエリア選びを相談できる不動産会社
以下ではエリア選定と用地仕入れに強みがあるアパート経営会社2社をご紹介します。
5-1.シノケンプロデュース
シノケンプロデュースは、東京・福岡・大阪・名古屋・仙台の都市圏で投資用アパートの販売を中心に行っているシノケングループのグループ企業です。管理戸数53,000戸以上(2025年12月末時点)の実績があり、直近10年の入居率は98%超の実績があります。初回の入居が成約になるまで家賃を100%保証する「100%初回満室保証」や、入居者からの家賃の支払いが遅れた場合の家賃滞納保証などオーナーが安定した収益を生むための保証制度も充実しています。購入者の半数以上がリピーターとなっており、会社員・公務員からの評判も良い会社です。
さらに、シノケンは24時間365日・8カ国語対応の入居者向けコールセンターを設置し、外国人や高齢者など多様な入居者層に手厚いサポートを提供しています。このサービスにより、高齢者の安否確認や、外国籍の方との円滑なコミュニケーションが期待できます。オーナーにとっては、入居者層の拡大や将来の賃貸需要への対応といったメリットにつながります。
5-2.アイケンジャパン
アイケンジャパンは、「堅実なアパート経営」をコンセプトに掲げる不動産投資会社で、2006年の創立から1000棟以上の開発・引渡し実績があります。
アイケンジャパンのアパートは、対象エリアを主要駅10分圏内(首都圏は15分圏内)、入居者のターゲットは物件選びの目線が厳しい社会人女性に絞って、防音性・防犯性・デザイン性・コストパフォーマンスなどを追求し、入居率99.3%(2023年年間実績)を実現しています。事業計画の設定家賃に対しても、10年以上経っても98.7%(2024年6月末時点)の高い収益率を達成できており、オーナーからの紹介・リピート率も高い会社です。
さらに、オーナーに対する保証やサポートが手厚いのもアイケンジャパンの特徴です。家賃滞納保証や管理代行サポートなども利用できるため、初心者の方でもアパート経営に取り組むことができます。建物完成後は全部屋に入居者が決まるまで無期限で家賃保証が行われる「初回満室保証」があり、地盤の問題や構造上の欠陥についても、建物引渡日の翌日から20年以内に不同沈下が発生し、建物に被害が出た場合、建物と地盤の修復工事を行う「宅地地盤保証」という保証があります。
また、アイケンジャパンの入居者のターゲットとして想定しているのは「社会人女性」のため、①オートロック・カラーモニターフォン、②共用廊下・共用階段が屋内となるように設計、③バルコニー前をライトで照らすなど、④高さのあるベランダにする、⑤防犯シャッター、⑥防犯カメラの設置など、ターゲットから求められる高い防犯性を備えている点も特徴的です。
伊藤 圭佑
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