外国人入居者の受け入れが、アパート経営における新たな機会として注目を集めています。人口減少に伴い賃貸需要が縮小傾向にある中、日本人入居者のみに依存した募集では、空室期間が長期化するケースも散見されます。一方で、就労や留学を目的に来日する外国人は増加の一途を辿っており、賃貸住宅へのニーズは底堅く推移しています。
しかしながら、家賃滞納や文化的な摩擦、言語面の不安などから、受け入れに慎重な姿勢を崩さないオーナーが多いのも事実です。本記事では、外国人入居者を受け入れるメリットと留意点を整理したうえで、入居審査や契約、運営面で押さえておきたい実務上のポイント、そして多言語対応に強みを持つ管理会社の活用方法について解説します。
目次
- 外国人入居者の受け入れはアパート経営の新たな機会
1-1.外国人入居者の増加が期待できる理由
1-2.外国人入居者の受け入れで期待できる経営上のメリット
1-3.日本人入居者だけに依存することのリスク - 外国人入居者を受け入れる際にオーナーが懸念しやすいポイント
2-1.家賃滞納・無断退去リスクへの懸念
2-2.生活習慣・文化の違いによるトラブルへの懸念
2-3.言語の壁によるコミュニケーションへの不安
2-4.近隣住民との関係悪化リスク - 外国人入居者の入居審査で押さえておきたい実務上の要点
3-1.在留資格・在留期間の確認が重要な理由
3-2.収入証明・勤務先確認の考え方
3-3.保証会社の活用が前提になる理由 - 外国人入居者を受け入れるための契約・運営上の施策
4-1.重要事項説明・契約内容を正確に伝える工夫
4-2.生活ルール・禁止事項を多言語で明文化する重要性
4-3.入居後トラブルを未然に防ぐ運営体制の考え方
4-4.外国人が住む物件管理に強い管理会社の活用 - 多言語対応できるアパート経営会社・管理会社は?
- まとめ
1 外国人入居者の受け入れはアパート経営の新たな機会
外国人入居者の受け入れについては、「トラブルが多そう」「対応が煩雑そう」といった先入観から、選択肢から除外してしまうオーナーも少なくありません。
しかし近年の人口動態や賃貸市場の変化を踏まえると、外国人入居者はアパート経営におけるリスク要因というよりも、むしろ空室対策や収益安定化に寄与する「重要な需要層」として位置付けられます。
なぜ外国人入居者が増えているのか、そして受け入れることでどのような経営上のメリットが期待できるのかを整理します。
1-1 外国人入居者の増加が期待できる理由
日本の賃貸市場を取り巻く最大の構造変化は、少子高齢化と人口減少です。特に地方都市や郊外エリアでは、日本人単身世帯の減少により、従来型の賃貸需要だけでは空室を充足できないケースが増加傾向にあります。
一方で、労働力不足を背景に、外国人労働者や留学生の受け入れは年々拡大の一途を辿っています。
在留外国人の推移

出所:出入国在留管理庁「【令和7年6月末】公表資料」
これらの外国人は、日本国内で中長期的に生活する前提で来日しており、住居として賃貸住宅を必要とします。
製造業・物流業・介護分野などを中心に、大都市はもちろんのこと地方都市でも外国人雇用が進んでおり、それに伴って賃貸ニーズも底堅く推移しています。
1-2 外国人入居者の受け入れで期待できる経営上のメリット
外国人入居者を受け入れる最大のメリットは、入居対象を広げることで空室リスクを構造的に低減できる点に挙げられます。特に築年数が経過した物件や、駅距離・立地条件がやや弱いアパートでは、「日本人単身者のみ」を前提とした募集では競争力を維持しづらくなる懸念があります。
一方で、外国人入居者の中には、間取りや設備より「職場へのアクセス」「家賃水準」「入居の可否」を重視する層も少なくありません。日本国内での転勤が起こりにくいため、条件が合えば長期入居に寄与する可能性もあります。
外国人は国の制度上「住宅確保要配慮者」に位置付けられており、国土交通省が推進する住宅セーフティネット制度を通じて、外国人の入居を想定した賃貸住宅として登録・募集することも可能です。自治体や支援団体、管理会社と連携した入居支援が受けられる場合がある点も、空室リスクの低減につながるでしょう。
1-3 日本人入居者だけに依存することのリスク
日本人入居者のみに依存したアパート経営は、人口構造の変化とともにリスクを内包しつつあります。特に単身向け物件では、若年人口の減少がそのまま賃貸需要の減少に直結します。
このような環境下で日本人入居者に限定した募集を続けることは、自らアクセスできる市場を狭めている状態ともいえます。空室期間が長期化し、賃料の引き下げを通じて長期的にアパート経営が悪化するリスクも否めません。
400万人近くの外国人が住む日本において、入居審査や契約、管理体制を整えれば、日本人入居者と同様に安定した賃貸経営は十分に可能です。
2 外国人入居者を受け入れる際にオーナーが懸念しやすいポイント
外国人入居者の受け入れに関心はあるものの、特有のトラブルを懸念して二の足を踏むオーナーは少なくありません。
しかし、懸念の多くは漠然としたイメージに起因するケースが多く、実際には管理方法や制度設計によってコントロールが可能です。ここでは、オーナーが特に不安を感じやすい代表的なポイントを整理しました。
2-1 家賃滞納・無断退去リスクへの懸念
外国人入居者に対して最も多く挙げられる不安が、家賃滞納や突然の帰国による無断退去のリスクです。確かに、在留期限の満了や転職・帰国といった事情により、日本人より居住期間が流動的になるケースはあります。
ただし実務上は、外国人対応が可能な保証会社の利用を前提とすることで、リスクは一定程度コントロールされています。
現在では、外国人対応に特化した保証会社も増えており、万が一の滞納時の立替を行ってくれます。オプションやプラン選択で原状回復費用の補填などをカバーする商品もあります。 保証会社の活用により、オーナーが被る家賃滞納や無断退去のリスクは大幅に低減可能です。
2-2 生活習慣・文化の違いによるトラブルへの懸念
ゴミ出しルールや騒音、共用部の使い方など、日本独特の生活習慣に起因するトラブルを懸念する声も聞かれます。 このようなトラブルは、悪意よりも「知らなかった」「理解できていなかった」ことが原因で発生するケースが大半です。
入居時点で生活ルールを明文化し、母国語または平易な日本語・英語で説明するだけでも、トラブル発生率は大きく低下します。管理会社が間に入り、初期説明を丁寧に行う体制を整えることが現実的な解決策と言えます。
2-3 言語の壁によるコミュニケーションへの不安
「トラブルが起きたときに意思疎通ができないのではないか」という不安も、オーナーが外国人入居を敬遠する要因の一つです。
管理会社が窓口となることで、オーナーが直接対応する場面は限定されます。 管理会社に対応を委託すれば、オーナーが入居者と直接コミュニケーションを取るケースは多くありません。
近年は、多言語対応を標準サービスとしている管理会社も増えており、緊急時や設備トラブル時の連絡対応を含めて委託可能です。オーナー自身が語学対応を担う必要は必ずしも生じません。
2-4 近隣住民との関係悪化リスク
外国人入居者の受け入れによって、既存入居者や近隣住民との関係が悪化するのではないかと懸念する声もあります。こちらも日頃の物件管理を丁寧に行うことで、リスクの低減が図れます。
ここまで紹介した対策を通じて、入居ルールの徹底や、問題発生時の迅速な管理会社対応が機能していれば、外国人であること自体がトラブルの原因になるケースは限定的です。
むしろ、空室が長期化することによる建物の荒廃や治安低下の方が懸念されます。外国人の受け入れによる稼働率向上が、空室のデメリットを解消するという点で、地域にとって好影響をもたらす側面もあると言えるでしょう。
3 外国人入居者の入居審査で押さえておきたい実務上の要点
外国人入居者の受け入れにあたっては、「何を基準に審査すればよいのか分からない」という不安を持つオーナーも少なくありません。実務上は、家賃を安定して支払える能力があるか、意図せず不法滞在をほう助してしまわないかを確認することが肝要です。ここでは、外国人入居者の審査における要点を紹介します。
3-1 在留資格・在留期間の確認が重要な理由
外国人入居者の審査で最初に確認すべき事項が、在留資格と在留期間です。これは、入居者が日本に合法的かつ継続的に滞在できるかを判断するための基本情報になります。
在留カードを確認し、以下の点を押さえておくことが重要です。
- どのような在留資格を保有しているか
- 在留期限がいつまでか
- 賃貸借契約期間をカバーできるか
在留資格は、仕事・学業の内容と紐づいている必要があります。例えば留学目的なのに、会社員として就労している場合、不法滞在となる可能性が高いため、入居を認めないのが賢明です。
また、在留期限が賃貸契約期間より短い場合、手続きなく契約満了まで住み続けると不法滞在となる恐れがあるため、慎重な対応が求められます。ただし「在留期限が近い=即NG」と短絡的に判断する必要はありません。
更新予定が明確であったり、勤務先が安定していたりする場合は、管理会社や保証会社を通じて柔軟に判断するのが望ましいでしょう。
3-2 収入証明・勤務先確認の考え方
収入面の確認は、日本人・外国人を問わず入居審査の中核となる要素です。ただし外国人入居者の場合、日本の書式に沿った収入証明が即座に用意できないケースもあります。
そのため、実務では次のような書類を組み合わせて確認するのが一般的です。
- 雇用契約書か内定通知書
- 直近の給与明細
- 勤務先企業の概要(会社名・業種・所在地など)
家賃を支払える収入を契約期間にわたって安定的に維持できるかを確認しておく必要があります。日本企業に雇用されていて一定期間以上の就労実績がある場合は、安定性を高く評価するケースが一般的です。
3-3 保証会社の活用が前提になる理由
外国人入居者を受け入れるうえで、家賃保証会社の利用は実務上不可欠と言えます。 保証会社を活用することで、オーナーが直接抱えるリスクを大幅に軽減できます。
具体的には、以下のような役割を担ってくれます。
- 家賃滞納時の立替対応
- 未払い家賃の回収業務
- 契約・更新・退去時の事務負担の軽減
近年は外国人入居者の審査や対応に精通した保証会社も増えており、在留資格や就労状況を踏まえた独自の審査ノウハウを持っています。オーナー自身が判断に迷うケースでも、保証会社の審査結果を一つの判断材料として活用できる点は大きなメリットです。
外国人入居者を受け入れる場合は「保証会社を使うこと」を前提に審査・契約フローを設計することで、無理のないアパート経営が実現可能となります。
4 外国人入居者を受け入れるための契約・運営上の施策
外国人入居者の受け入れにおけるアパート経営上の工夫について詳述します。外国人に契約内容や生活ルールを正しく理解してもらい、入居後のトラブルを未然に防ぐ仕組みを整えることで、安定的な受け入れが可能となります。
日本人入居者向けの運用をそのまま適用するのではなく、言語や生活習慣の違いを前提にした施策を取り入れることがポイントです。
4-1 重要事項説明・契約内容を正確に伝える工夫
賃貸借契約に関するトラブルの多くは「聞いていなかった」「理解していなかった」という認識の齟齬から発生します。 外国人入居者の場合、日本語の契約書を十分に理解できていないまま契約が進んでしまうケースも少なくありません。
重要事項説明や契約内容については、少なくとも英文の書類を用意しましょう。中国語や韓国語など、在留者の多い国の言語の書類も用意して多言語対応しておくと、より望ましい対応と言えます。
言語自体ではなく、文化やライフスタイルの違いが理解の妨げとなる可能性もあります。可能な限り専門用語を避け、平易な表現で説明することが重要です。
管理会社や仲介会社を通じて、要点を口頭で補足説明することで、理解度は大きく高まります。解約時のルール、原状回復の考え方、更新条件、違約金の有無などは、入居前に確実に伝えておく必要があります。
「契約書に記載があるから大丈夫」と考えるのではなく、実質的に理解してもらう姿勢がトラブル防止に寄与します。
4-2 生活ルール・禁止事項を多言語で明文化する重要性
生活習慣の違いによるトラブルは、外国人入居者を受け入れる際に最も懸念されやすいポイントです。 しかし、多くの場合は悪意ではなく、「ルールを知らなかった」ことが原因となっています。
ゴミ出しのルール、騒音に関する注意事項、共用部分の使い方、ペットや喫煙の可否などは、口頭説明だけでなく書面で明示しておくことが重要です。日本語に加えて英語など複数言語で記載したハウスルールを用意しておくと有効です。
生活ルールを事前に明文化しておくことで、入居者自身も安心して生活できますし、問題が発生した場合の注意・指導も円滑になります。結果として、近隣住民とのトラブル防止にもつながります。
4-3 入居後トラブルを未然に防ぐ運営体制の考え方
外国人入居者を受け入れる場合、入居後のフォロー体制も重要な要素になります。 設備の使い方が分からない、緊急時の連絡先が分からないといった不安が、トラブルやクレームにつながることもあります。
入居時に、設備の基本的な使い方や緊急時の連絡方法を丁寧に案内するだけでも、トラブルの発生率は大きく低減します。また、問い合わせ先が明確であることは、入居者にとっても安心材料になります。
「問題が起きてから対応する」のではなく「問題が起きにくい環境」「万が一起きたときにすぐ対処できる環境」を整える視点で運営体制を構築することが、外国人入居者受け入れを成功させる要諦です。
4-4 外国人が住む物件管理に強い管理会社の活用
外国人入居者の受け入れに不安を感じる場合、管理会社選びが極めて重要になります。 外国人対応の経験が豊富な管理会社であれば、入居審査から契約、入居後対応までをスムーズに進めることが可能です。
多言語対応の窓口を備えている管理会社であれば、言語の壁によるストレスをオーナーが直接抱える必要もありません。トラブル発生時も、入居者とコミュニケーションを取って冷静に対応してくれることが期待できます。
管理委託費が多少高くなるケースもありますが、空室期間の短縮やトラブル対応の負担軽減を考慮すれば、十分に検討する余地があります。
5 多言語対応が可能なアパート経営会社・管理会社は?
本セクションでは、外国人入居者の受け入れ支援や多言語対応に実績のあるアパート経営会社・管理会社をご紹介します。
シノケンプロデュースは、全国に7,000棟以上の自社開発アパートを建築しているアパート経営・不動産投資のパイオニアです。中国やシンガポールなどの拠点を中心にグローバルな事業展開も行っており、外国人入居者のためのサポート体制も構築しています。
グループ全体で外国人の住まい探しをサポートする一方、外国人入居者を受け入れる物件オーナーのサポートも行っています。その一つが、管理業務を担うグループ会社のシノケンファシリティーズが展開する「多言語コールセンター」です。8カ国語に対応しており、外国人入居者の不安や不満などにも適切に応えられる体制を整えています。
6 まとめ
外国人入居者の受け入れは、人口減少が進む日本の賃貸市場において、空室リスクを抑える有効な経営戦略の選択肢の一つです。
家賃滞納や無断退去、生活習慣の違いといった不安を抱くオーナーも多いものの、在留資格や在留期間の確認、収入状況の把握、保証会社の活用など、基本的な審査と仕組みを整えることでリスクは十分にコントロール可能です。
さらに、生活ルールや禁止事項を多言語で明文化し、入居後のトラブルを未然に防ぐ運営体制を構築することも不可欠です。
近年は外国人対応に精通した管理会社も増えており、適切なパートナーを選べば、オーナー自身の負担は必ずしも増大しません。適切な体制を整えたうえで外国人入居者を受け入れることは、稼働率の向上と安定したアパート経営につながることが期待されます。
伊藤 圭佑
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