遺贈寄付の認知度は上昇も実行意向は低水準、「老老相続」問題も。日本承継寄付協調査

一般社団法人日本承継寄付協会は1月16日、2024年における遺贈寄付に関する調査の結果を発表した。遺贈寄付の認知度は上昇しているものの、実行に移す人は少ないことが明らかになった。また、「老老相続」についても「知らない」という回答が7割超に。2025年は団塊の世代が75才以上の後期高齢者となる「大相続時代」。問題の深刻化が懸念される結果となった。

同協会によると、日本国内では年間50兆円ものお金が相続されている。80〜90歳代の高齢者の遺産相続は、ほとんどが60〜70代の高齢者世帯へと相続され、60代以上が保有する金融資産の割合は年々上昇し続けている。金融庁によると、1999年に47.4%だった割合が2035年には70.6%に達する見込みで、このような状況は「老老相続」と呼ばれる。相続手続きが複雑化したり、相続財産が有効活用されないリスクが高まるなど、様々な問題を引き起こす可能性がある。

老後の不安から生じるこうした資産の偏りを、将来世代やそれを応援する団体への寄付を通して改善する取り組みとして「遺贈寄付」がある。同協会は、2019年の設立以来、普及のためさまざま取り組みを行っており、遺贈寄付に関する実態調査は今回で5回目。全国の20代~70代の男女を対象に2024年12月10日〜20日にかけウェブで実施した。サンプル数は1000。

遺贈寄付の認知度状況は全体的に上昇傾向にあり、特に70代では83.9%の人が認知していた。一方、遺贈寄付の意向度合いはまだまだ低く、70代でも79.8%が遺贈寄付について「家族や相続人と話し合ったことがない」と回答した。

老々相続については「今後、日本が直面すべき課題」として初めて調査を実施したが、結果、74.2%の人が「知らない」と回答、認知度の低さを示した。また、遺言書については、各年代それぞれが、「自分はまだ書く年齢ではない」と捉え、作成が進んでいない状況がわかった。

「金融資産が『老後の資産』として貯蓄に回され活用が停滞してしまう恐れがある。相続人の意思能力の欠如により、財産相続がスムーズに進まないケースも増加するかもしれない」と同協会は懸念する。

三浦美樹代表理事は「遺贈寄付を『誰でもできる寄付』と認識してもらうため、情報提供やサポート体制を強化し、より多くの人々が安心して遺贈寄付に取り組める社会作りを進めていきたい」とコメント。遺贈寄付に関するセミナー開催や、ウェブサイトでの情報発信を強化していく方針だ。

【関連サイト】一般社団法人 日本承継寄付協会

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