空き家相続で相続人がいない時の対処法は?5つのケースごとに解説

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何らかの事情で相続人がいない空き家がある場合、家庭裁判所に相続財産管理人の選任を申し立てる、国の財産にするなどの方法があります。

ただし「相続人がいない」という状況は、相続人全員が相続放棄を行った、被相続人(亡くなった方)と内縁関係であり民法上相続人とみなされないなど様々な要因があり、一概に「この方法が良い」と言い難いのが現状です。

本記事では、相続人がいないケース5つ、空き家相続で相続人がいない時の対処法、注意点を解説していきます。

目次

  1. 空き家相続で相続人がいないケースとは
    1-1.相続人全員が相続放棄をした
    1-2.相続人と連絡がつかない
    1-3.遺言書が無く、法定相続人がいない
    1-4.相続人が相続廃除・欠格になった
    1-5.遺言書は無いが、内縁関係といった特別縁故者がいる
  2. 空き家相続で相続人がいない時の対処法
    2-1.相続人全員が相続放棄をしたケース:放棄者に連絡
    2-2.相続財産管理人の選任申立を行う
    2-3.国庫に帰属させる
  3. 空き家相続に関する注意点
    3-1.特定空家に指定されることがある
    3-2.相続財産管理人を選任する際に「予納金」を支払うケースがある
  4. まとめ

1.空き家相続で相続人がいないケースとは

民法では被相続人が亡くなった場合、「指定相続人」又は「法定相続人」が財産を相続すると規定されています。基本的には指定相続(遺言による相続)が優先され、法定相続(民法で定められた相続)は遺言がいない時の補助的な基準です。

指定相続人とは遺言書がある場合に遺言で指定された相続人で、法定相続人とは被相続人の配偶者・子供や孫、父母や祖父母、兄弟姉妹・甥・姪などの親族を指します。

相続人がいない状況には様々なケースがあります。まず、相続人がいない状態に至るまでの背景や要因から、それぞれ分けて考えてみましょう。

  • 相続人全員が相続放棄をした
  • 相続人が行方不明
  • 遺言書が無く、法定相続人がいない
  • 相続人が相続廃除・欠格になった
  • 遺言書は無いが、内縁関係といった特別縁故者がいる

1-1.相続人全員が相続放棄をした

被相続人(亡くなった方)の相続財産に負債が多い、受け継ぎたくないといった理由で相続人全員が放棄をした場合、相続人がいない状態となります。

相続放棄を行っても民法940条の規定により相続財産の管理義務を負う事になりますので、このケースではまず放棄をした方に連絡を行う事になります。

【関連記事】相続放棄のメリット・デメリットは?不動産活用・売却の手順も

1-2.相続人と連絡がつかない

相続人と連絡が取れず行方不明である時には、相続人がいない状態です。失踪して7年以上経過している場合には、家庭裁判所に失踪宣告の申し立てを行うことで亡くなった者とみなされ相続人ではなくなります。

実際には、相続財産管理人を選任したり、他の相続人が財産を預かり相続人が戻ってきたときに代償金を支払う「帰来時弁済型」を行う事例があります。

【関連記事】他の相続人と連絡がつかない場合に不動産を相続する流れは?不在者財産管理人選任の申立てを解説

1-3.遺言書が無く、法定相続人がいない

被相続人が遺言書を残しておらず、法定相続人がいないという事例でも相続人がいないという状況になります。

被相続人に特別縁故者(被相続人が生前お世話になった方、生計を共にしている方など)、や債権者がいる場合には、申立人となり家庭裁判所に相続財産管理人の選任の手続きを行う事が可能です。該当する方がいない場合には、相続財産は国庫に帰属されます。

1-4.相続人が相続廃除・欠格になった

法定相続人がいるものの、被相続人の遺言書の変造・破棄などを行った、相続で他の相続人を死亡に至らせたなどの行為により「相続欠格」になる事例があります。

また、被相続人に虐待又は重大な侮辱を行った、著しい非行があった場合には被相続人が主に遺言によって「相続廃除」を行うことができます。結果的に相続人はいないものとされます。

1-5.遺言書は無いが、内縁関係といった特別縁故者がいる

日本では法律婚主義を採用しているため、「特別縁故者」と呼ばれる内縁関係の方は被相続人と長く一緒に住んでいても法定相続人に該当しません。

生前に被相続人の療養看護をした方、生計を共にしていた方、特別の縁故があった方なども特別縁故者です。

特別縁故者は遺言書により相続人に指定されている際には指定相続人として相続を行う事が可能ですが、遺言書が無い時には「相続人がいない」とみなされてしまいます。

ただし、相続財産管理人の選任申立を行い、一定のプロセスを踏む事で特別縁故者も相続が出来ることがあります。

2.空き家相続で相続人がいない時の対処法

上記のような状況で空き家を相続する人がいない時には、相続財産管理人の選任申し立てを行う、国の財産として帰属させるという2つの方法があります。相続人全員が相続放棄をしたケースでは、相続放棄者に連絡を行います。

  • 相続人全員が相続放棄をしたケース:放棄者に連絡
  • 相続財産管理人の選任申立を行う
  • 国庫に帰属させる

2-1.相続人全員が相続放棄をしたケース:放棄者に連絡

相続人全員が相続放棄を行った際には、上記の通り放棄をした場合でも管理義務があるためまずは放棄した方に連絡を取ります。

連絡が取れなかった時、連絡がついても話し合いにならないケースでは、被相続人の利害関係者や債権者、特別縁故者などが相続財産管理人の選任を申し立てる流れとなります。

2-2.相続財産管理人の選任申立を行う

被相続人の債権者、遺贈を受けた方、特別縁故者などが被相続人の最後の住所にある家庭裁判所に相続財産管理人の選任を申し立て、管理人となった方が相続財産の管理を行います。

相続財産管理人に資格は必要ありませんが、家庭裁判所が被相続人との関係・利害関係の有無などを考慮し、相続財産の管理人として最も適任と認められる人を選びます。

弁護士・司法書士などの専門職が選ばれることもあります。選任された後は、主に以下の流れで財産の処分を行います。

  1. 相続財産管理人の申し立て
  2. 相続財産管理人の選任
  3. 官報に公告
  4. 債権者・受遺者に対する請求申し出の公告(官報に掲載)
  5. 相続人捜索の公告
  6. 相続を主張する者がいない
  7. 相続人不存在の確定
  8. 特別縁故者の財産処分の申し立て
  9. 相続財産管理人は相続財産分与の審判により事情を考慮し財産の一部または全部を与える
  10. 相続財産が残った場合には国庫に帰属する

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2-3.国庫に帰属させる

民法第959条では「処分されなかった相続財産は、国庫に帰属する」と規定されています。(※2021年11月時点)

遺言書が無く相続人・特別縁故者がいない場合には全額が、特別縁故者に財産の一部を与えた際は余った財産が国庫に帰属する事になります。

基本的には、被相続人に債権者や特別縁故者などがいる場合には相続財産管理人を選任、いない場合には国庫に帰属という流れになるでしょう。

ただし債権者はいないものの、相続財産がマイナス又はほぼ無価値のケースでは、特別縁故者がいても国庫に帰属することとなる可能性があります。

3.空き家相続に関する注意点

上記のような対応を行った後に空き家を相続することとなった場合、いくつかの注意点があります。それぞれ確認しておきましょう。

3-1.特定空家に指定されることがある

少子高齢化の影響で空き家が増加、社会問題になったことから2014年国土交通省は「空家等対策の推進に関する特別措置法」を施行しました。

法律により保安上危険となる恐れある状態又は著しく衛生上有害となる可能性のある空き家を「特定空家」とし、自治体から助言・指導の後猶予期限を付けて、空き家を除却できる事になりました。

1999年に被相続人が亡くなった川口市の事例では、被相続人は不動産を所有していましたが、法定相続人がいない状態で空き家として放置されていました。結果、土地に定着した立木の枝が近隣の道路にはみ出し、地域住民の生活環境に影響を及ぼしている状態だったため、2016年埼玉県川口市に「特定空家」に認定されています。(※参照:川口市「所有者所在不明・相続人不存在の空家対応マニュアル 」)

川口市はさいたま家庭裁判所に相続財産管理人の選任の申し立てを行い、法的措置を取る事になりました。空き家を放置しておくことで「特定空家」に認定されると、行政指導や勧告を受けることとなる可能性があるため、注意が必要です。

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3-2.相続財産管理人を選任する際に「予納金」を支払うケースがある

相続財産管理人の選任の申し立てを行う際、収入印紙800円分と連絡用の郵便切手代、官報公告料4230円の他に「予納金」を支払う可能性があります。

予納金とは相続財産管理人が相続財産を管理するために必要な費用(相続財産管理人に対する報酬を含む)に不足が出る可能性がある場合に、申立人が支払う代金です。

基本的に相続財産管理人への報酬は相続財産で支払われますので、家や土地の価額が低いケースでは予納金を支払う可能性が高くなります。

まとめ

相続人がいない時の空き家相続は、相続財産管理人を選任する、国庫に帰属させるという2つの選択肢があります。

被相続人に特別縁故者や債権者などがいる場合には相続財産管理人を選任する流れとなり、いない際には国庫に帰属するケースもあります。不動産の価額や被相続人との関係、自身の経済状況などを考慮しながら、ケースバイケースで判断していきましょう。

この記事を参考に、相続人がいない空き家相続の流れを知り活かしていきましょう。

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田中 あさみ

経済学部在学中に2級FP技能士(AFP)の資格を取得。ライターとして不動産投資を含む投資や年金・保険・税金等の記事を執筆しています。医療系の勤務経験がありますので、医療×金融・投資も強みです。HEDGE GUIDEでは不動産投資を始め、投資分野等を分かりやすくお伝えできるよう日々努めてまいります。