他の相続人と連絡がつかない場合に不動産を相続する流れは?不在者財産管理人選任の申立てを解説

相続の場面では、「他の相続人が行方不明で連絡がつかない」というケースもあります。このような相続人が行方不明の時には、不在者財産管理人を選任することで遺産分割協議や相続が可能です。

不在者財産管理人を選任するためには、家庭裁判所に申し立てを行う必要がありますが、裁判所における手続きに馴染みのない方であれば、戸惑ってしまうことも多いのではないでしょうか。

そこで本記事では、相続人の行方が分からない時の対処法、不在者財産管理人選任の概要と失踪宣告との違い、手続き方法と注意点を解説していきます。

目次

  1. 相続人が行方不明の不動産相続はどうしたら良いか
    1-1.不在者財産管理人選任の申し立て
    1-2.「不在者財産管理人選任」と「失踪宣告の申し立て」の違い
    1-3.不在者が現れた時に代償金を支払う「帰来時弁済型」の遺産分割方法
  2. 不在者財産管理人選任申し立ての手順
    2-1.財産管理人を決める
    2-2.必要書類を集める
    2-3.不在者財産管理人選任を申し立てる
    2-4.遺産分割協議・相続
  3. 不在者財産管理人選任の注意点
  4. まとめ

1.相続人が行方不明の不動産相続はどうしたら良いか

相続人が行方不明である、または相続人のうち1人が行方不明である場合に不動産相続を行う際には「不在者財産管理人選任」により、行方不明者の財産管理者を選任する手続きを行う方法が検討できます。

その他、「失踪宣告」の申し立てや「帰来時弁済型」の遺産分割を行うケースもあります。

1-1.不在者財産管理人選任の申し立て

民法第25条では「従来の住所又は居所を去った者が財産の管理人を置かなかったときは、家庭裁判所は、利害関係人又は検察官の請求により、その財産の管理について必要な処分を命ずることができる。」と規定されています。(※2021年10月25日時点)

相続人であるものの、住民票に記載されている住所を去り戻る見込みのない者(不在者)に財産管理人がいない場合には家庭裁判所に「不在者財産管理人」の選任を申し立てる事が可能です。

不在者財産管理人を選任することにより、不在者に代わり遺産分割や不動産の売却などを行うことができます。

なお、財産管理人が財産を不正に利用した場合には、財産管理人を改任され、損害賠償請求・業務上横領などの罪で民事・刑事責任を問われることがあります。

1-2.「不在者財産管理人選任」と「失踪宣告の申し立て」の違い

失踪宣告とは生死が明らかではない方に対して、法律上死亡したものとみなす効果を生じさせる制度です。

不在者の配偶者や相続人、受遺者(民法上相続人には該当しないが、遺産を受け取る人)など法律上で利害関係がある方が家庭裁判所に申し立てることが可能です。

生死が7年間明らかでないとき、又は戦争・船舶の沈没・震災など事故や危機に遭い、生死が1年間明らかでない場合に失踪宣告を行います。

不在者財産管理人選任は不在者の代わりに財産管理人が選ばれ相続を行うことができますが、失踪宣告では不在者が「亡くなった者」としてみなされ、行方不明者以外の相続人が相続を行う流れとなります。

不在者と連絡がつかなくなってから7年間経過している事も相違点となりますが、必ずしも7年経過するのを待つ必要はなく、7年経過した後に必ず失踪宣告をしなくてはならないということでもありません。

「不在者財産管理人選任」の申し立てを行う事で不在者に代わって財産を管理する人を選び、遺産分割を進める事は可能です。

1-3.不在者が現れた時に代償金を支払う「帰来時弁済型」の遺産分割方法

遺産分割協議の際に、不在者が本来取得すべき相続財産を預かり「帰来時弁済」(帰来した時に弁済する)として代償金を支払う方法が採用されることがあります。

帰来時弁済とは、不在者には法定相続分を下回る財産を相続させ、他の相続人が「法定相続分から実際に相続させた価額を差し引いた金額」を預かり、不在者が戻ってきたときに代償金として支払う遺産分割の方法です。

帰来時弁済は、一定の要件を満たした場合に裁判所から認可されることで利用できます。例えば相続財産を預かる相続人に代償金を支払う資金力がある場合や、相続財産が高額ではないケースなどが挙げられます。

帰来時弁済型の遺産分割が認められると自動的に不在者財産管理人の業務が終了するため、財産管理人の負担が大きい場合や財産管理人を選任する事が難しい時には有効な手段となります。

2.不在者財産管理人選任申し立ての手順

相続を行うために、不在者財産管理人選任の手続きを行う流れは以下の通りになります。

  • 財産管理人を決める
  • 必要書類を集める
  • 不在者財産管理人選任を申し立てる
  • 遺産分割協議・相続

2-1.財産管理人を決める

まずは不在者に代わり財産を管理する人を決めます。財産管理人は、不在者のために以下の業務を行います。

  • 不在者の財産調査・管理
  • 財産目録・管理報告書の作成
  • 家庭裁判所への財産状況の定期報告

管理人を裁判所に申し立てた後は、不在者との関係や利害関係の有無などを考慮して適性が判断されます。

例えば、被相続人(亡くなった方)に生前お世話になった方が名乗り出た時や不在者と縁があった知人など、不在者と利害関係が無く財産管理が長期でできる方がいる場合には財産管理人として選任の申し立てができます。

ただし、財産管理が長期に渡ってしまうことで管理者の負担となってしまう可能性もあります。このような場合は、弁護士・司法書士などの専門職を選任する事も検討できるでしょう。

専門家に依頼する際には費用がかかりますが、家庭裁判所の判断で、不在者の財産から支払われることになります。他の相続人の意向や相続の状況などケースバイケースで、相続人・受遺者と話し合いながら財産管理人を決定していきましょう。

2-2.必要書類を集める

申し立てに必要となる書類を集めます。主には以下の書類です。

  • 申立書
  • 不在者の戸籍謄本(全部事項証明書)
  • 不在者の戸籍附票
  • 財産管理人候補者の住民票又は戸籍附票(住民票は必ず個人番号(マイナンバー)の記載のないものを提出)
  • 不在であることを証明する資料
  • 不在者の財産に関する資料(不動産登記事項証明書、預貯金及び有価証券の残高が分かる書類(通帳の写しや残高証明書等)など)
  • 申立人(利害関係人)との利害関係が分かる資料(戸籍謄本(全部事項証明書)、賃貸借契約書写し、金銭消費貸借契約書写し等)

申し立てができる利害関係人には、不在者の配偶者や相続人に加え、不在者に債務がある場合の債権者も含まれます。

不在者の配偶者や相続人が申し立てをする際には戸籍謄本(全部事項証明書)、債権者が申し立てを行う場合には賃貸借契約書・金銭消費貸借契約書の写しを提出する事になります。

2-3.不在者財産管理人選任を申し立てる

不在者の住民票に記載されている住所を管轄する家庭裁判所に「家事事件」として、不在者財産管理人選任を申し立てます。申し立てる際には以下の費用が必要となります。

  • 収入印紙800円分
  • 連絡用の郵便切手

郵便切手の料金は、家庭裁判所に電話又は「各地の裁判所一覧」の該当する裁判所のホームページに記載されていることがあります。

なお、不在者の財産の内容を基に、家庭裁判所が「不在者の財産を管理するために必要な費用に不足が生じる可能性がある」と判断した際には、申立人が予納金を納付するケースが存在します。

申し立ては裁判所によって対応が異なりますが、郵送又は裁判所の家事事件受付窓口に行く事で手続きが可能です。

家庭裁判所の受付時間は、多くの場合平日の8:30~17時となりますが、裁判所によっては特定の曜日に時間を延長して受付を行っている所もあります。あらかじめ該当する裁判所のホームページで確認しておきましょう。

2-4.遺産分割協議・相続

財産管理人が選任されることで、遺産分割協議・相続を行う事が出来るようになります。

財産管理人が不在者に代わり遺産分割協議を行う時、不在者の財産を処分する際には「権限外行為許可」となり家庭裁判所に別途手続きが必要となりますので注意しましょう。不在者が不動産相続を行う場合には、財産管理人が法務局で所有権移転登記の手続きを行います。

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3.不在者財産管理人選任の注意点

不在者財産管理人の業務が終了するのは、不在者について失踪宣告がされた、不在者の死亡が確認された、不在者の財産がなくなった時です。

よって遺産の分配・相続が終わった後も、不在者の財産管理や家庭裁判所への定期報告など財産管理人の業務は続くことになります。

場合によっては数十年に渡り財産管理人として職務を果たさなければいけなくなりますので、選任の際には管理人の負担も考慮しながら慎重に検討しましょう。

まとめ

相続人が行方不明である時には家庭裁判所に「不在者財産管理人」の選任を申し立てるケースの他、場合によっては「失踪宣告」の手続き、「帰来時弁済型」の遺産分割を行うこともあります。

不在者財産管理人選任は、他の相続人・受遺者が話し合い財産管理人を決定し不在者の本来の住所にある裁判所に申し立てを行います。管理人が選任されることで遺産分割協議・相続が可能となります。

この記事を参考に、相続人の行方が分からない場合の相続の流れをおさえておきましょう。

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田中 あさみ

田中 あさみ

経済学部在学中に2級FP技能士(AFP)の資格を取得。ライターとして不動産投資を含む投資や年金・保険・税金等の記事を執筆しています。医療系の勤務経験がありますので、医療×金融・投資も強みです。HEDGE GUIDEでは不動産投資を始め、投資分野等を分かりやすくお伝えできるよう日々努めてまいります。