仕事で培ったスキル・技能を活かし無償で社会貢献を行う「プロボノ」は、1980年代にアメリカの弁護士・法律家を中心に活動が始まり、今では数十ヶ所の国や地域でマーケティング・IT・デザイン・経営戦略など多岐のジャンルに広がり活動が行われています。
本記事ではプロボノの概要とボランティアとの違い、メリットとデメリット、注意点を解説していきます。
目次
- プロボノとは?ボランティアとの違い
- プロボノを始めるメリット
2-1.自身のスキルのレベルを知る事が出来る
2-2.キャリアアップに繋がる可能性がある
2-3.女性が社会復帰できるプロジェクトもある
2-4.地域に貢献できる - プロボノを始めるデメリット
3-1.時間が拘束される
3-2.体力的な負荷がかかる - プロボノを始めるにあたっての注意点
- まとめ
1.プロボノとは?ボランティアとの違い
プロボノとはラテン語で「公共善のために」(Pro Bono Publico)という意味の言葉で、職業上のスキルや専門知識を持つ方が無償で公益のために行う社会貢献活動です。
ボランティア活動とプロボノは「無償で社会貢献活動を行う」という点では同じです。ただ、プロボノは今まで仕事で培ってきた専門知識やスキルを活かしたものであるのに対し、ボランティア活動はスキルや経験が問われない傾向にあるという点が異なります。
プロボノは1980年代にアメリカ法曹協会が、弁護士・法律家が報酬を支払う事が困難な方に対して無償の法律相談を行う活動を年間50時間以上推奨したこと等をきっかけに活動が始まりました。
2000年代に入り法律家だけではなくマーケティング・IT・デザイン・経営戦略・人事など様々な分野でのプロボノ活動を支援する団体が誕生し、活動の幅を広げています。
プロボノに参加するスタッフを「プロボノワーカー」と呼び、年代を問わず様々な知識・経験・スキルを持つ方が参加できます。
日本では弁護士が所属する団体である「第二東京弁護士会」において一定の期間内に10時間以上、プロボノを含む「一般的公益活動」を行う義務があります。このように、プロボノは個人で行うものだけではなく、チームとしてプロジェクトとして活動する事もあります。(※参照:第二東京弁護士会「公益活動の手引き」)
例えば、大阪府が「認定NPO法人 サービスグラント」に委託した事業「大阪ええまちプロジェクト」は、要介護認定率が全国一高い大阪府で認知症カフェ交流会や自治会の運営など介護予防や日常生活支援を行っています。
2.プロボノを始めるメリット
プロボノを始めるメリットは、主に以下の4つとなります。
- 自身のスキルのレベルを知る事が出来る
- キャリアアップに繋がる可能性がある
- 女性が社会復帰できるプロジェクトもある
- 地域に貢献できる
2-1.自身のスキルのレベルを知る事が出来る
企業で社員として働いている場合、日々の業務の積み重ねにより自身が今まで培ってきたスキルや技能の棚卸をする機会が少なく「どの位スキルがあるのが分からない」「他の会社でもやっていけるレベルなのだろうか?」と悩む方も少なくありません。
プロボノで社外に向けた活動を行い、自身のスキルを活かすことで、客観的にスキルのレベルを把握するに繋がります。同じプロジェクトに参加し、スキルを所有している同業者と情報交換を行うことで自身の社会人としての市場価値が分かる事もあります。
2-2.キャリアアップに繋がる可能性がある
プロボノ活動でプロジェクトを達成することでスキルが高まり、キャリアアップに繋がる可能性があります。
例えば、普段食品会社のマーケティング担当として勤務している方が、プロボノのプロジェクトで高齢者配食サービスのマーケティング調査を行い、高齢者をターゲットとした商品開発のヒントやアイデアを習得し本業に活かせたという事例があります。
ただし、前提としてプロボノの活動は自身のスキルアップや情報収集を行う場所ではなく、特定の技術や経験を他者へ無償で提供する目的で行われます。自身に還元されるメリットだけでなく、支援先に価値提供ができるかどうかという視点も大切です。
2-3.女性が社会復帰できるプロジェクトもある
プロボノは、「育休後、社会復帰できるか不安」という女性にとって、企業で働く前に社会と関わる事の出来る機会となることがあります。
例えば、認定NPO法人サービスグラントの事業「ママボノ」では、育休中や離職中である子育て中の女性が仕事復帰に向けた準備活動を行っています。NPO法人でプロボノ活動を行う事によって、自身の社会復帰の足がかりになると同時に社会貢献活動ができます。
2-4.地域に貢献できる
多くの地方自治体では、プロボノワーカーを募集しています。このような自治体が募集しているプロボノワーカーに応募することで、地域への貢献が可能です。
例えば、横浜市では地域の社会福祉協議会の活動・ボランティア活動の魅力を紹介するパンフレット作成、障害を持つ児童、引きこもりの子供達への支援を行う団体のホームページを作成などのプロボノ活動を「ハマボノ」と名付け、参加者を募っています。
自身が住んでいる・思い入れのある地域にスキルを通じて社会貢献を行える点はメリットと言えるでしょう。
3.プロボノを始めるデメリット
プロボノを始める事で時間が拘束される、体力的な負荷がかかるというデメリットが生じることがあります。これらのデメリットについてもみて行きましょう。
- 時間が拘束される
- 体力的な負荷
3-1.時間が拘束される
自由なタイミングで行える寄付や単発の募集が多いボランティアと違い、プロボノは一定労働時間を必要としたり、成果物の納期があらかじめ決まっているケースが少なくありません。
例えば1人でパンフレット作成を行うプロボノ活動では空いた時間に作業を行う事ができますが、チームで事業計画の立案を行うプロジェクトでは複数人で会議を行う必要がありますので時間が拘束されてしまいます。
横浜市のプロボノ活動「ハマボノ」では過去に「ハマボノ1DAYチャレンジ」というプロジェクトがあり、準備も含めて1ヶ月程度の短期活動でした。仕事が忙しく時間が取れない方は短期のプロジェクトに参加する、時間を拘束されるのが苦手な方は一人でできるリモートのプロジェクトを探すという選択肢があります。
3-2.体力的な負荷がかかる
普段の仕事・家事に加えて、プロボノ活動を行う事によって体力的に負担となってしまう恐れがあります。プロボノ活動を仕事の合間に行う方もいますが、「知らずのうちにオーバーワークになってしまった」という事例があります。
プロボノを検討する際は、自身が活動に割ける時間を決めて参加するよう心がけましょう。
4.プロボノを始めるにあたっての注意点
プロボノを始める際には、地方自治体のプロジェクトにワーカーとして登録する、マッチングサイトを利用する、NPO法人にコンタクトを取るという3つの方法があります。
特にマッチングサイトではNPO団体だけでなく個人が募集しているケースもあるため、支援先の活動内容について詳しく確かめるなどの注意が必要になります。
活動する団体を選ぶ際には、ホームページやパンフレットで活動の理念や活動内容をよく調べてから応募するようにしましょう。また「自身の持つスキルを活動に活かせるか」という点も重要となります。
プロジェクトに参加してから「体力的に無理があった」「今のスキルではできない」と分かる前にリサーチしておくことは、ワーカー側だけではなく団体にとっても必要なプロセスです。
なお「仕事とは関係の無い社会貢献活動をしたい」という方は、プロボノではなくボランティア活動を検討してみるのも良いでしょう。
まとめ
プロボノは職業上のスキル・技能を活かして無償で行う社会貢献活動を指し、自身のスキルのレベルが分かる、人脈・ネットワークが広がる可能性があるなどのメリットがあります。
一方で体力的な負荷がかかる、時間を拘束されるなどのデメリットも存在します。ただし活動に割ける時間を決め、リモートワークを選ぶなどの方法で負担を軽減する事も可能です。
この記事を参考にプロボノのメリットとデメリットを知り、活動を検討していきましょう。
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田中 あさみ
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