米中関係悪化が日本市場に与える影響は?株価上昇・下落予想の銘柄も

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米中関係は、株式市場にとって重要なテーマです。世界経済に大きな影響を与えるからです。特に両国に挟まれ、双方と関係の深い日本においては特に注視が必要な要素です。

この記事では、米中関係悪化の経緯と、日本の株式市場に与える影響について解説します。

※この記事は2021年9月21日時点の情報に基づき執筆しています。最新情報はご自身にてご確認頂きますようお願い致します。

目次

  1. 米中貿易摩擦の経緯
  2. 米中関係は貿易だけが問題ではない
  3. バイデン政権の中国政府への対応
  4. 米中関係悪化が日本に与える影響
  5. 米中関係悪化の日本株への影響
  6. まとめ

1.米中貿易摩擦の経緯

米中関係が悪化し、「米中貿易摩擦」という言葉がよく聞かれるようになったのは、2018年春ごろからです。2016年11月に米国の大統領に選出されたトランプ氏は、「貿易の不均衡の解消」「対中貿易赤字の解消」を公約にしました(参照:NHK「トランプ氏受諾演説(日本語訳全文)」。

トランプ氏が最初に問題視したのは、中国で作っている鉄鋼製品でした。 そして、2018年3月に中国の鉄鋼製品などへの関税引き上げを宣言したのです。トランプ大統領は、「不動産王」と呼ばれていたビジネスパーソン時代から、米国の貿易赤字は悪であるという考えを持っていました。

ですから、他の国の製品に関税をかけて値段を上げることで自国製品を安くし、米国国内の雇用を守ろうとしたのです。そして、トランプ氏は2018年7月以降、半導体やロボットなどの中国製品1,000品目以上に、次々と関税をかけ始めました。

しかし、中国は米国の圧力に屈せず、「一方的に関税をかけるなら我々も我慢できない」と対抗策をだしてきたのです。 2018年の終わりには米国が中国製品の約半分に関税をかけましたが、中国も米国製品の約7割に関税をかけるという泥沼合戦に陥りました(参照:内閣府「世界経済の潮流 2019年 I」。

2.米中関係は貿易だけが問題ではない

トランプ大統領は貿易赤字をどうにかしたいと考えていましたが、問題はそれだけではありません。米国では中国が米国企業から秘密を盗み出したり、AI(人工知能)や電子部品などの重要な技術を、お金を使って手に入れたりしていると問題視している人も少なくないのです。

つまり、このまま中国に自由にやらせていると、世界中の技術を吸収し、米国に追いついてしまうのではないかという懸念がそれらの人々の中にはあるのです。

3.バイデン政権の中国政府への対応

2021年1月に米国大統領に就任したバイデン氏は、トランプ氏よりも中国に対して融和的ではないかという見方があります。 しかし民主党は共和党よりも人権を重視する傾向があるので、中国の香港やウイグルに対する強硬的な姿勢を問題視しています。ですから、今後コロナ禍が落ち着けば、中国に対して厳しい態度をとる可能性があるのです。

実際、2021年7月に米国政府は、中国の新疆ウイグル自治区での人権侵害や強制労働の深刻さを踏まえ、同自治区に関連するサプライチェーンや投資から撤退しない個人や企業は、国内法に違反するリスクがあると警告しています(参照:ロイター)。

バイデン氏は、オバマ政権下で副大統領として外交政策をおこなってきました。 政権内を見ても外交に通じたスタッフが多く、同盟国をうまく利用して中国を封じ込める方針を取ってくる可能性が高いと考えられます。

そこで重要になってくるのが台湾です。 電気自動車(EV)や デジタルトランスフォーメーション(DX)の普及により、半導体製造拠点としての台湾の存在感が高まっているからです。

米国としては、半導体加工のためにも台湾との関係をより深めていくことが考えられます。 しかし、中国にとって米国が台湾へ接近することは許せません。台湾は中国の一部であるとし、「一つの中国」を掲げているからです。そして、中国が台湾への軍事圧力を高める可能性もあります。

4.米中関係悪化が日本に与える影響

米中関係の悪化は、日本にとっても大きな問題です。中国は尖閣諸島において強硬姿勢を強めてくる可能性があるからです。台湾に関する軍事行動は戦争に発展する恐れがあるので、尖閣諸島への関与を強めてくる恐れがあります。

そうした場合、米国からの中国への圧力も高まると予想されます。そして、日本政府が米国寄りの姿勢を強めると、中国における日本製品の不買運動が広がる恐れもあるのです。ですから、米中関係の悪化により、中国経済への依存度が高い日本企業の株価は軟調になる可能性があります。

5.米中関係悪化の日本株への影響

中国での売上が大きい業界としては、鉄鋼メーカーや建材、ベビー用品などがあります。鉄鋼メーカーでは日本製鉄や神戸製鋼、建材では小松製作所や日立建機、ベビー用品ではユニ・チャームなどが主な企業です。これらの中国関連株は、米中関係が悪化すると売られやすくなるので、注意が必要です。

ただし、日本株への影響は中国への依存度が高い企業だけではありません。円高・ドル安による日本株安につながる可能性もあるからです。日本円は低リスク資産とみられているので、米中関係の悪化が進むと円は買われる傾向にあります。

とくに日本からの輸出が多い企業にとっては、円高は株価の下落要因になるので警戒が必要です。

まとめ

米中関係の悪化は、日本株にマイナスの要因となります。さらに、2021年9月に発生した中国不動産大手の中国恒大集団の巨大債務問題などで、中国経済への警戒感が高まっています。中国はゲームや教育、テック企業への規制強化の流れもあり、中国事業での事業比率が高い日本企業は上値の重い展開がしばらく続きそうです。

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山下耕太郎

一橋大学経済学部卒業後、証券会社でマーケットアナリスト・先物ディーラーを経て個人投資家・金融ライターに転身。投資歴20年以上。現在は金融ライターをしながら、現物株・先物・FX・CFDなど幅広い商品で運用を行う。ツイッター@yanta2011