今までにないビジネスモデルや革新的なプロダクトを開発し、短期間で大きな成長を重ねていく「スタートアップ企業」。これまでは、機関投資家や富裕層など限られたプレーヤーにしか投資機会がありませんでしたが、フィンテックが進んだことにより、クラウドファンディングという形で個人でもスタートアップ企業に投資できるようになってきています。
最近ではクラウドファンディングで投資できるサービスや案件なども増え、より手軽に投資することができる環境が整ってきました。そこでこの記事では、初めてスタートアップ企業に投資する方に向けて、スタートアップ企業に投資するメリット・デメリット、スタートアップ企業に投資できるサービス、利用時の注意点などについて詳しく解説します。興味のある方は参考にしてみてください。
目次
- スタートアップ企業に投資するメリットは?
1-1.将来的に大きな利益が期待できる
1-2.税制上の優遇措置を受けられる
1-3 企業の成長を間近で見ることができる
1-4 経営に参画するチャンスがある場合も - スタートアップ企業に投資するデメリット・リスク
2-1.元本割れのリスクや倒産リスクが大きい
2-2.IR情報などが少ない
2-3.上場企業の株と比べて換金性や流動性に劣る
2-4 収益実現に時間がかかるケースが多い
2-5 個別交渉での投資ではトラブルが起こるリスクも - 個人がスタートアップ企業に投資する方法
3-1 ベンチャーキャピタルに投資する
3-2 エンジェル投資家として出資する
3-3 株式投資型クラウドファンディングに投資する - スタートアップ企業に投資できるサービス
4-1 日本初の株式投資型クラウドファンディングサービス「ファンディーノ」
4-2 募集後9ヶ月でイグジットした実績も「イークラウド」 - 株式投資型クラウドファンディングを利用する際の注意点
5-1 株式投資型クラウドファンディングは投資金額に制限がある
5-2 スタートアップ企業の投資案件は厳しい目線で選ぶ
5-3 スタートアップ企業には余裕資金で投資する - スタートアップ投資でエンジェル税制を利用する方法
6-1 エンジェル税制の優遇を受けるタイミングと優遇措置A・Bの違い
6-2 エンジェル税制の対象企業 - 日本国内におけるスタートアップ投資の成功事例
7-1.Mercari(メルカリ)
7-2.SmartHR(スマートHR)
7-3.Preferred Networks(プリファードネットワークス)
7-4.freee(フリー)
7-5.Raksul(ラクスル) - まとめ
1 スタートアップ企業に投資するメリットは?
成長性の高いスタートアップ企業に投資するメリットは次のように様々あります。
1-1 将来的に大きな利益が期待できる
スタートアップ企業は、新しいビジネスモデルを開発するだけでなく、技術革新などを通じて社会や産業界に新しい価値を創造することにより、これまでになかったビジネスモデルの育成を追求します。
そのため、スタートアップ企業の設立当初は、「経営が安定しない」「事業収益が上がらない」といったリスクを伴いますが、経営・事業が軌道に乗れば大きな収益を獲得できる可能性も秘めています。さらに事業が順調に拡大すれば株式上場も期待でき、企業の知名度や社会的信用も向上するでしょう。また大手企業に買収・合併されれば、株式の価値も大きく上昇することがあります。
このようにスタートアップ企業は将来的な成長力を秘めており、投資家はそれらの企業に早い段階から投資することで、後々大きなリターンを得るチャンスを期待できるのが魅力です。
1-2 税制上の優遇措置を受けられる
スタートアップ企業に投資を行うと、「ベンチャー投資促進税制(エンジェル税制)」という税制上の優遇措置を受けられる場合があります。投資を行った年に、次の優遇措置のどちらかを選択できます。
- その年の総所得金額から、対象企業への投資額-2,000円を控除(上限あり)
- その年の他の株式譲渡益から、対象企業への投資額全額を控除(上限なし)
また、スタートアップ企業の株式売却で生じた損失は、その年の他の株式譲渡益と損益通算でき、相殺しきれなかった損失は翌年以降3年にわたって繰り越しができます(なお、投資先の企業がエンジェル税制の対象企業である場合に、税制上の優遇措置が受けられるものであり、必ずしもすべての場合に優遇対象となるものではありません)。
1-3 企業の成長を間近で見ることができる
スタートアップ企業の株主になることによって、スタートアップ企業の成長を企業の一員として間近で見ることができます。
また、スタートアップ企業では、およそすべてのリソースが不足しているため、自分の持っている人脈やネットワーク、専門性などを提供することでスタートアップの成長を支援することも可能です。
画期的なサービスやプロダクトの開発に取り組んでいる企業を直接・間接的に応援しながら、長期的に大きなリターンを狙うこともできるという点がスタートアップ企業投資の醍醐味の一つです。
1-4 経営に参画するチャンスがある場合も
エンジェル投資家としてスタートアップ企業に出資した場合、経営に参画するチャンスがあります。自分で事業を立ち上げなくても、実質的に企業経営に携わることが可能です。
投資の多くは、資金を拠出した後は他者の成功や市場価格の上昇を願うしかありません。対してエンジェル投資では、投資先の資産価値を向上させるために能動的に働きかけることができます。
一方で、株式は有限責任で投資額以上の損失を負うことがないため、ある意味自分が経営者になるよりもリスクは低いと考えることもできます。エンジェル投資を通じて企業経営のノウハウを積み、将来のキャリアに役立てる投資家も少なくありません。
2 スタートアップ企業に投資するデメリット・リスク
スタートアップ企業への投資は大きなリターンが期待できる一方、次のようなデメリット・リスクにも注意することが大切です。
2-1 元本割れのリスクや倒産リスクが大きい
スタートアップ企業は会社の規模も大きくなく、まだ経営基盤が十分に確立されていないことなどから、経済・景気動向の変化による経営悪化や倒産などのリスクを伴います。その場合には、株式の価値が低下または0になり元本割れを起こす可能性があります。
2-2 IR情報などが少ない
スタートアップ企業は、IR(Invetment Relations)情報発信の体制が整っていないケースが多く、上場企業などと比べると決算数値や事業に関する情報が少なく、投資判断に必要な情報が揃わないケースや、不十分になってしまうリスクもあります。
スタートアップ企業が発信する情報だけでなく、新聞やメディア、セミナー、SNSなども情報源としてウォッチしていくことや、スタートアップ企業内の役員・社員に直接話を聞いてみるといったアクションも重要です。
2-3 上場企業の株と比べて換金性や流動性に劣る
スタートアップ企業への投資によって保有する株式は、ほとんどのケースが非上場株式です。非上場株式の欠点には、上場株式と比べて換金性や流動性で劣ることが挙げられます。
上場株式は、株式市場の価格で随時その価値が判断され、いつでも売買をすることが可能です。一方、非上場株式の場合は市場の相場価格がないため、売却しようとしてもスムーズに売れる保証はありません。
また、非上場株式には譲渡制限が付けられている場合があり、そのケースでは売却する際に株主総会や取締役会の承認を得る必要があるのも手間となります。スタートアップ企業への投資は、当面使用する予定のない余裕資金で始めることが大切です。
2-4 収益実現に時間がかかるケースが多い
ここまで紹介した流動性の低さや売却手段の少なさを背景に、収益実現に時間がかかるケースがほとんどです。株式や投資信託なら、市況が良ければ1か月もすれば利益が出る場合も少なくありません。
一方で、スタートアップ企業への投資は少なくとも数年、長ければ5年以上の期間を見据えて投資する必要があります。基本的なイグジット方法であるM&AやIPOは、少し事業が軌道に乗った程度で実行できるものではありません。
他のファンドへの譲渡や自社株買いなどでイグジットできるチャンスもそう多いものではないでしょう。長期間まとまった資金を投じなければならない点は、機関投資家と比べて資金量が限られる個人投資家にとってはデメリットの一つといえます。
2-5 個別交渉での投資ではトラブルが起こるリスクも
自分で経営者にアプローチして投資するエンジェル投資の場合、トラブルが発生しないよう契約内容や投資条件を慎重に精査して実行しなければなりません。利益分配や権利関係のルールをしっかり取り決めて、契約書に明文化する必要があります。
また、経営に対する参画方針についても投資前に明確にしておきましょう。投資家に経営へ口出しされるのを嫌がる経営者が多い一方で、不慣れなのでビジネスパートナーのつもりで支援してほしいと考える方もいます。投資期間中の事業経営への携わり方についても、事前に調整しておきましょう。
3 個人がスタートアップ企業に投資する方法
個人がスタートアップ企業に投資する方法は、大きく分けて3つあります。
- ベンチャーキャピタルに投資する
- エンジェル投資家として出資する
- 株式投資型クラウドファンディングで投資する
3-1 ベンチャーキャピタルに投資する
ベンチャーキャピタルへのLP投資により、スタートアップ企業へ投資が可能です。ベンチャーキャピタルとは、自己資金と投資家から集めた資金を元手にスタートアップ企業へ投資するファンド形態です。
M&AやIPOを通じて投資先企業のイグジットに成功すれば、ファンド事業者や投資家は大きな収益を獲得できます。ここでいう「LP」とは「Limited Partnership(リミテッド・パートナーシップ)」の略称です。
LP投資は株と同じ「有限責任」になるので、出資額以上の損失を被る心配がありません。なお、ファンド事業者自身は「GP(General Partner:ゼネラル・パートナー)」となり、こちらは無限責任を負います。
ベンチャーキャピタルへの出資は個人投資家でも可能な場合がありますが、投資金額が高額に設定されているケースが多いため、検討できるのは資金が潤沢にある専業投資家や富裕層などごく一部に限られます。また、公募の投資信託やファンドのように広く募集活動が行われないため、ほとんどの場合はベンチャーキャピタルに個別に問い合わせて相談をしなければなりません。
3-2 エンジェル投資家として出資する
エンジェル投資家として、直接自分が将来性を見出したスタートアップ企業に投資する方法があります。経営者や起業家の知人がいるのであれば、人脈を通じて投資先を紹介してもらうとよいでしょう。
具体的には、投資先の企業の株を一定割合保有します。企業価値が向上してイグジットが実現すれば、大きな収益を期待することができます。また、別の投資家が現れた時に譲渡する方法もあります。
なお、エンジェル投資家は、ほとんどの場合投資先の株式を保有します。すなわち、出資比率に応じて経営に参加する権利が発生することを意味します。出資比率が高いと投資家というよりビジネスパートナーの位置づけが強くなります。
投資した企業の経営に参加できるのはエンジェル投資の本来のメリットではありますが、あくまで投資家として行動したい場合は、出資比率を高くしすぎないようにするなど工夫しましょう。
3-3 株式投資型クラウドファンディングに投資する
株式投資型クラウドファンディングを利用すると、少額からスタートアップ投資にチャレンジできます。株式投資型クラウドファンディングは、未上場のスタートアップ企業の株式を小口化して少額から投資できる形態のサービスです。
企業(個人)の構想や事業計画についてインターネットを通して広く発信し、その内容に賛同する、あるいはその活動を支援したい人から資金を募るシステムです。1口10万円程度から投資できるファンドも少なくないため、他の手段と比べて手軽にスタートアップ企業へ投資できます。
政府もスタートアップ支援を前面に打ち出しており、「株式投資型クラウドファンディング」や「エンジェル投資」の利用促進が、各種経済対策に盛り込まれています。
また、これまでVCからの調達などと通算して1年間で1億円未満に抑える必要がありましたが、2022年1月に制度改正があり、株式投資型クラウドファンディング「単体」で1年間に1億円未満の資金調達を実行可能になりました。(※法令:クラウドファンディング規則2条)
加えて、1社につき50万円以内という投資金額枠が設けられていましたが、個人の年間投資額の上限が年収などに応じて100万円以上に引き上げられ、投資しやすくなることが見込まれています。従来は株式投資型クラウドファンディングで一律の投資上限を設けているのは諸外国の中で日本のみとなっており、投資家保護と利便性の向上という二つの観点から、改善が期待されていたポイントです。
4 スタートアップ企業に投資できるサービス
続いては、個人投資家が利用しやすいスタートアップ企業の投資サービスを3つ紹介します。
4-1 日本初の株式投資型クラウドファンディングサービス「ファンディーノ」
ファンディーノは、株式会社FUNDINNOが提供する日本初の株式投資型クラウドファンディングサービスで、様々なスタートアップ企業の株に10万円程度から投資をすることができます。
ファンディーノで募集されるスタートアップ企業に対しては、投資家保護の観点から厳正な事前審査が行われます。審査では、会社の将来性・安定性・独自性・革新性などの項目について、決算書や事業計画書に基づいて判断するとともに、経営者との面接も実施されます。これらの審査は社内の公認会計士などを中心に行われ、採用の是非を決める審査会議では、多数決ではなく全員一致で審査通過となります。
ファンディーノには、このような厳しい事前審査を通過した企業が提案する案件のみが掲載されています。投資家の方は、その中から投資したい案件を選んで申し込みを行うことができます。
なお各企業は、プロジェクト達成のための「目標募集金額」をそれぞれ設定しています。目標募集額に到達した状態で申込期間が終了した場合、もしくは上限応募額に到達した場合に、その後のキャンセル期間中に目標募集額を下回らないときに成約する仕組みとなっています。なお、投資家登録にかかる手数料や株式購入にかかる手数料は無料です。
また、投資家登録をすると、商号・住所・資本金・代表者・資金使途など投資先企業に関する詳しい情報を確認でき、案件について不明な点があればサイト内から質問することもできます。
実際にイグジットに成功したスタートアップも
2019年7月には漢方生薬研究所という発行企業において、事業会社による買付によりイグジットが実現しました。2017年12月のファンディーノでの株式募集から1年5ヶ月で株価は1.5倍になりました。これは年間の利回りで換算すれば、実に『35.3%』というきわめて高いパフォーマンスとなります。
もちろんこれほど短期間でイグジットできるケースはまれで5年・10年という時間がかかる案件もある点には注意が必要ですが、一部の案件では発行企業のサービスや製品の割引・特典が付く形により株主還元が行われているものもありますので、長期的な視点で投資できそうな案件をピックアップしてみると良いでしょう。
2021年3月にはIPO(新規株式公開)のイグジット案件も
また、2021年3月には、ファンディーノで資金調達を行ったスタートアップの琉球アスティーダスポーツクラブ株式会社が株式会社東京証券取引所「TOKYO PRO Market」へ上場が承認されました。株式投資型クラウドファンディングで資金調達を行った企業で初めての新規株式公開事例となりました。
IPO以外の投資回収実績も複数
ファンディーノでは、IPO・M&Aによる典型的なイグジットにこだわらず、投資回収の機会を探っています。ここまで紹介した案件以外でも、次のような形で投資回収に成功してきた実績があります。
- 株式会社nommoc:投資期間1年9ヶ月、事業会社による一部買付、リターン1.5倍
- 社名非公開:投資期間1年3ヶ月、ファンドからの買付、リターン1.2倍
- 社名非公開:投資期間2年11ヶ月、ファンドからの買付、リターン1.3倍
- 社名非公開:投資期間4年7ヶ月、自社による買取、リターン1.57倍
- 社名非公開:投資期間2年4ヶ月、自社による買取、リターン1.07倍
- Innovation Farm株式会社:投資期間2年11ヶ月、M&A、リターン1.1 ~ 4.4倍
未上場株をオンラインで売買できる「ファンディーノマーケット」を提供
ファンディーノでは、2021年12月から未上場株をオンラインで売買できる「ファンディーノマーケット」のサービスを提供しています。
スタートアップの未上場株はこれまで何かしらのイグジットをしないと株を手放すことができないという流動性の低さが大きな課題でしたが、ファンディーノでは日本証券業協会が提供する「株主コミュニティ」という制度を活用して、未上場株式を売買できるようになりました。株式投資型クラウドファンディングにおいて、上場やM&Aなど以外の出口ができたことは非常に大きな意義があります。
2022年1月末にサービス開始後初となるマッチング期間が終了し、取引事例の中には10.4倍の値上がりが見られた銘柄もあります。(2022年12月中旬時点での2022年内の取引は銘柄数9、参加投資家7,935、約定金額総額1.8億円、値上がり幅1.1倍~10.4倍)今後も月に1回マッチングが行われるとともに、取引可能な企業も増えていく予定です。
ファンディーノに関するニュース
4-2 募集後9ヶ月でイグジットした実績も「イークラウド」
2020年に新たに登場した株式投資型クラウドファンディングが、イークラウドです。イークラウドの運営元であるイークラウド株式会社は、大和証券の100%出資子会社である、Fintertech株式会社から出資を受けています。大和証券という大手証券会社のバックボーンがあることを活かし、取扱い企業の反社チェックを厳格に行った上で案件の募集を行っています。
イークラウドは、株主間契約を結んでいることも大きな特徴です。イークラウドを通じて株を購入した投資家と、スタートアップ企業の経営者との株主間契約を結ぶことが、イークラウドでの投資には必要です。株主間契約を結べば、イークラウドを利用した投資家は、スタートアップ企業経営者の「株式を譲渡したい」という意思に応える必要が出てきます。
投資家として不利に感じる方もいるかも知れませんが、実際には株式の円滑な譲渡を可能にして、株式をスムーズに現金化する意味合いがあります。
募集後9ヶ月でM&A成立、2.69倍のリターン発生事例も
2022年5月18日に、イークラウドを利用して資金調達を行ったスタートアップ企業で初の買収(M&A)が成立したという発表がありました。企業名は非公表ですが、このM&Aで、個人投資家に2.69倍のリターンが発生しています。このイグジット事例では、募集からM&A成立まで9カ月で、1年未満でのリターン発生は国内の株式投資型CFで最速(同社調べ)とのことす。
なお、今回の買収では、業界で初めて開発・導入した株主間契約スキームにより、プラットフォームを通じて投資を行う過程で電子契約を締結し株主間の合意を担保することで、スムーズに手続きを行うことができたとしています。
イークラウドに関するニュース
- 2023/12/28株式投資型CF「イークラウド」30号案件1/10募集開始。日本の飲食店とインバウンド観光客をデジタルで繋ぐスタートアップが資金調達
- 2023/11/21サボテンやキノコ、廃材がファッションアイテムに。サステナブルブランドの運営企業が「イークラウド」でCF。11/27募集開始
- 2023/10/25エスカレーターの安全性向上と収益化を目指す「UDエスカレーター」、株式投資型CFのイークラウドで10/26募集開始
- 2023/7/31株式投資型CFの「イークラウド」23号案件「ADDress」の申込金額が最高額の9990万円に到達
- 2023/7/18成長中のシェアリングエコノミーサービス「ADDress」がイークラウドで資金調達。7/24募集開始
5 株式投資型クラウドファンディングを利用する際の注意点
はじめて株式投資型クラウドファンディングを利用する場合は、以下のポイントに注意しましょう。
5-1 株式投資型クラウドファンディングは投資金額に制限がある
現在、株式投資型クラウドファンディングは、支援したい企業を見つけても一度にまとまった資金を投資できない制度となっています。具体的には、投資家が年間に投資できる上限額は「1社あたり50万円まで」と設定されています。
魅力的なスタートアップはたくさんありますし、スタートアップ企業への投資はハイリスクとなりますので、1社だけに投資を集中させず、複数の会社や他の投資手法にも分散をすることが大切です。また、多額の投資が可能な場合、エンジェル投資家として特定の企業へ投資するのも一案です。エンジェル投資であれば、投資上限は適用されません。
5-2 スタートアップ企業の投資案件は厳しい目線で選ぶ
クラウドファンディングにおけるスタートアップ企業への投資では、その企業の成長性・将来性を判断することがポイントになりますが、それは決して簡単ではありません。
上場企業の場合には企業が作成している事業や財務に関する帳票・資料などからある程度は経営体質や事業計画などを判断できますが、クラウドファンディングの対象となるスタートアップ企業は未上場企業であるため、参考になる決算書類やその他資料の種類がどうしても少なくなります。
この点についてファンディーノでは上場企業に見劣りしないデータや資料を揃え、現場などからのヒアリングも交えて、実現可能性を重視した事業計画の作成を支援しています。
プロジェクトの詳細や発行者情報、企業のリスク等は各ページから確認することができます。気になる案件があれば、発行者をフォローすることで発行者に関するお知らせを定期的に受け取ることができます(投資家登録していなくてもメールアドレスを登録するだけで利用可)。
案件について不明な点があれば「質問BOX」から直接問い合わせてみても良いでしょう。このように成長が期待できる企業かどうかを納得の行くまで調べることが重要です。
5-3 スタートアップ企業には余裕資金で投資する
スタートアップ企業の業績は、ある程度長い目で見守る必要があります。いくら革新的なサービス・プロダクトであっても、開発を行いながら経営基盤を整え、業績を伸ばし、経営規模を拡大していくにはある程度の時間が必要です。また、株式の新規上場や大手企業の買収・合併といったイベントも、いつまでに実現できるという保証はありません。
そのため、クラウドファンディングによるスタートアップ企業への投資は、余裕資金で行うことも必要です。大切な生活費の一部を充てたり、借金をしたりしないように心がけましょう。
なお、ファンディーノでは、投資家登録の段階で、投資に使う資金が生活費・借入金・使途確定金ではないことなどが条件となっています。投資家登録する際は、この条件をよく確認するようにしましょう。
6 スタートアップ投資でエンジェル税制を利用する方法
エンジェル税制は、一定の要件を満たすベンチャー企業に投資を行った場合に、税制上の優遇措置を受けることができる制度です。
※出典:経済産業省「エンジェル税制」
6-1 エンジェル税制の優遇を受けるタイミングと優遇措置A・Bの違い
下記2つの時点で税制優遇を受けることが可能です
- ベンチャー企業に投資を行った時点
- ベンチャー企業の株式を売却した時点
「ベンチャー企業に投資を行った時点」で受けられる優遇措置では、投資先の設立年数に応じて「優遇措置A」「優遇措置B」のどちらかを選択することになります。
一方、「ベンチャー企業の株式を売却した時点」で受けられる優遇措置では、ベンチャー企業の株式売却で生じた損失を、その年の他の株式譲渡益と損益通算でき、相殺しきれなかった損失は翌年以降3年にわたって繰り越しができることになっています。
優遇措置A
設立後3年未満で一定の要件を満たすベンチャー企業に対して投資を行った場合、その年の総所得金額から、「対象企業への投資額-2,000円」を控除することができます。なお、控除対象となる投資額の上限は、総所得金額の40%と800万円のどちらか低い額となります。
優遇措置B
設立後10年未満で一定の要件を満たすベンチャー企業に対して投資を行った場合、その年の他の株式譲渡益から、対象企業への投資額全額を控除することができます。なお、控除対象となる投資額の上限はありません。
6-2 エンジェル税制の対象企業
投資をしながらエンジェル税制の優遇措置を受けたい場合、投資先がエンジェル税制の対象企業になっている必要があります。例えば、先ほど取り上げたファンディーノであれば、エンジェル税制に対応している企業が明示されているため、企業情報を確認しながら投資先を選定することが可能です。
なお、ファンディーノに掲載されている企業の全てがエンジェル税制対象企業というわけではないことに注意が必要です。企業によっては目標募集金額に達成した場合、「エンジェル税制:優遇措置A適用申請予定」「優遇措置B適用申請予定」と記載されているものもあります。
7.日本国内におけるスタートアップ投資の成功事例
過去に日本国内でスタートアップ投資に成功したITベンチャー企業の事例を見ていきましょう。
7-1.Mercari(メルカリ)
- 主な事業内容: フリマアプリ
- 設立年: 2013年
- 上場:2018年
Mercari(メルカリ)は、使わなくなった品物を手軽に売買できるプラットフォームを提供するITサービスの会社です。2018年に東京証券取引所マザーズ(現在はグロース市場)に上場、2022年6月7日にはプライム市場に上場市場区分を変更しています。
2013年の設立から、EastVenturesやUnitedなどのベンチャーキャピタルから資金調達を行い、テレビCMなどの広告宣伝を積極的に行うことでユーザーの拡大に成功しています。また、2014年にはグローバルブレイン、グロービス、伊藤忠、GMOベンチャーズなどなどから14.5億円を調達し、急速な事業拡大に繋げました。
7-2.SmartHR(スマートHR)
- 主な事業内容: クラウド型労務管理ソフトウェア
- 設立年: 2013年
- 上場:2024年時点で未上場
SmartHR(スマートHR)は、雇用保険、社会保険の手続きをオンラインで簡単に処理できるクラウド型労務管理ソフトウェアを提供する会社です。2021年には約156億円のシリーズD資金調達資を実施したことで累計調達額は約238億円となっており、中小企業から大企業まで幅広い顧客を獲得しています。
2020年に起きた新型コロナウイルスの感染対策で急速に広まったテレワークの普及とともに労務管理ソフトの市場も拡大し、2020年11月には「SmartHR」への登録企業数は30,000社超えとなっています。
7-3.Preferred Networks(プリファードネットワークス)
- 主な事業内容: AIおよび機械学習の開発
- 設立年: 2014年
- 上場:2024年時点で未上場
Preferred Networks(プリファードネットワークス)は、ディープラーニング技術を駆使し、多様な産業にAIソリューションを提供する企業です。2014年の設立から同年NTTとの資本業務提携により2億円の資金調達をおこなっています。また、2019年にはJXTGホールディングス株式会社から10億円の資金調達をおこない、石油精製プラントの最適化・自動化において共同研究を開始しています。
AI・ディープラーニング技術との親和性が期待される様々な業界と資本業務提携を行いながら、連携を強化している点がPreferred Networksの特徴となっています。
7-4.freee(フリー)
- 主な事業内容: クラウド会計ソフト
- 設立年: 2012年
- 上場:2019年
freee(フリー)は会計、給与計算、税務申告などが手軽に行えるクラウド会計ソフトを提供する会社です。会計SaaSの先駆者として多くの中小企業に支持されており、2019年には東京証券取引所マザーズ(現在はグロース市場)に上場しています。
なお、設立から数億円単位の資金調達を継続しており、上場前の2019年6月期の最終損益は主力の会計ソフトの開発投資がかさんだことで27億円の赤字、2023年6月期決算短信の時点でも赤字が解消されていません。一方で上場以降もユーザー数・売上高は継続して伸びており、今後も成長が期待されている企業の一つとなっています。
7-5.Raksul(ラクスル)
- 主な事業内容: 印刷・物流のプラットフォーム
- 設立年: 2009年
- 上場:2018年
Raksul(ラクスル)は、印刷・物流のプラットフォームを提供する会社です。印刷から物流、さらには広告と、多様なサービスを展開しており、2018年に東京証券取引所マザーズ(現在はグロース市場)に上場しています。
Raksul は、2014年にWiLをリードインベスターとして、グローバル・ブレイン、伊藤忠テクノロジーベンチャーズ、プラス、GMOベンチャーパートナーズ、ミクシィを引受先とする合計6社より総額約14.5億円の第三者割当増資を実施しています。また、上場後も新規事業の資金調達を積極的に行っているのが特徴的です。
まとめ
新しいビジネスモデルの開発を目指し、短期間で大きな成長を目指すスタートアップ企業に投資する方法として、クラウドファンディングの活用は今後さらに普及するでしょう。
サービスによっては少額から投資できる上、取引コストはかからず、厳選された募集企業を中心に興味のある案件を選ぶことができます。ただし、未上場企業への投資ということを念頭に置き、事前にメリットやデメリットについて十分に認識しておくことが重要です。
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