今までにないビジネスモデルや革新的なプロダクトを開発し、短期間で大きな成長を重ねていく「スタートアップ企業」。これまでは、機関投資家や富裕層など限られたプレーヤーにしか投資機会がありませんでしたが、フィンテックが進んだことにより、クラウドファンディングという形で個人でもスタートアップ企業に投資できるようになってきています。
最近ではクラウドファンディングで投資できるサービスや案件なども増え、より手軽に投資することができる環境が整ってきました。そこでこの記事では、初めてスタートアップ企業に投資する方に向けて、スタートアップ企業に投資するメリット・デメリット、スタートアップ企業に投資できるサービス、利用時の注意点などについて詳しく解説します。興味のある方は参考にしてみてください。
目次
- スタートアップ企業に投資するメリットは?
1-1.将来的に大きな利益が期待できる
1-2.税制上の優遇措置を受けられる
1-3.社会貢献につながる - スタートアップ企業に投資するデメリット・リスク
2-1.元本割れのリスクや倒産リスクが大きい
2-2.IR情報などが少ない
2-3.上場企業の株と比べて換金性や流動性に劣る - スタートアップ企業に投資する方法
3-1.少額からスタートアップに投資できる株式投資型クラウドファンディング
3-2.日本初の株式投資型クラウドファンディングサービス「ファンディーノ」
3-3.AI・IoT案件を中心に提供、株主優待も充実「ユニコーン」 - 株式投資型クラウドファンディングを利用する際の注意点
4-1.株式投資型クラウドファンディングは投資金額に制限がある
4-2.スタートアップ企業の投資案件は厳しい目線で選ぶ
4-3.スタートアップ企業には余裕資金で投資する - まとめ
1 スタートアップ企業に投資するメリットは?
成長性の高いスタートアップ企業に投資するメリットは次のように様々あります。
1-1 将来的に大きな利益が期待できる
スタートアップ企業は、新しいビジネスモデルを開発するだけでなく、技術革新などを通じて社会や産業界に新しい価値を創造することにより、これまでになかったビジネスモデルの育成を追求します。
そのため、スタートアップ企業の設立当初は、「経営が安定しない」「事業収益が上がらない」といったリスクを伴いますが、経営・事業が軌道に乗れば大きな収益を獲得できる可能性も秘めています。さらに事業が順調に拡大すれば株式上場も期待でき、企業の知名度や社会的信用も向上するでしょう。また大手企業に買収・合併されれば、株式の価値も大きく上昇することがあります。
このようにスタートアップ企業は将来的な成長力を秘めており、投資家はそれらの企業に早い段階から投資することで、後々大きなリターンを得るチャンスを期待できるのが魅力です。
1-2 税制上の優遇措置を受けられる
スタートアップ企業に投資を行うと、「ベンチャー投資促進税制(エンジェル税制)」という税制上の優遇措置を受けられる場合があります。投資を行った年に、次の優遇措置のどちらかを選択できます。
- その年の総所得金額から、対象企業への投資額-2,000円を控除(上限あり)
- その年の他の株式譲渡益から、対象企業への投資額全額を控除(上限なし)
また、スタートアップ企業の株式売却で生じた損失は、その年の他の株式譲渡益と損益通算でき、相殺しきれなかった損失は翌年以降3年にわたって繰り越しができます(なお、投資先の企業がエンジェル税制の対象企業である場合に、税制上の優遇措置が受けられるものであり、必ずしもすべての場合に優遇対象となるものではありません)。
1-3 企業の成長を間近で見ることができる
スタートアップ企業の株主になることによって、スタートアップ企業の成長を企業の一員として間近で見ることができます。
また、スタートアップ企業では、およそすべてのリソースが不足しているため、自分の持っている人脈やネットワーク、専門性などを提供することでスタートアップの成長を支援することも可能です。
画期的なサービスやプロダクトの開発に取り組んでいる企業を直接・間接的に応援しながら、長期的に大きなリターンを狙うこともできるという点がスタートアップ企業投資の醍醐味の一つです。
2 スタートアップ企業に投資するデメリット・リスク
スタートアップ企業への投資は大きなリターンが期待できる一方、次のようなデメリット・リスクにも注意することが大切です。
2-1 元本割れのリスクや倒産リスクが大きい
スタートアップ企業は会社の規模も大きくなく、まだ経営基盤が十分に確立されていないことなどから、経済・景気動向の変化による経営悪化や倒産などのリスクを伴います。その場合には、株式の価値が低下または0になり元本割れを起こす可能性があります。
2-2 IR情報などが少ない
スタートアップ企業は、IR(Invetment Relations)情報発信の体制が整っていないケースが多く、上場企業などと比べると決算数値や事業に関する情報が少なく、投資判断に必要な情報が揃わないケースや、不十分になってしまうリスクもあります。
スタートアップ企業が発信する情報だけでなく、新聞やメディア、セミナー、SNSなども情報源としてウォッチしていくことや、スタートアップ企業内の役員・社員に直接話を聞いてみるといったアクションも重要です。
2-3 上場企業の株と比べて換金性や流動性に劣る
スタートアップ企業への投資によって保有する株式は、ほとんどのケースが非上場株式です。非上場株式の欠点には、上場株式と比べて換金性や流動性で劣ることが挙げられます。
上場株式は、株式市場の価格で随時その価値が判断され、いつでも売買をすることが可能です。一方、非上場株式の場合は市場の相場価格がないため、売却しようとしてもスムーズに売れる保証はありません。
また、非上場株式には譲渡制限が付けられている場合があり、そのケースでは売却する際に株主総会や取締役会の承認を得る必要があるのも手間となります。スタートアップ企業への投資は、当面使用する予定のない余裕資金で始めることが大切です。
3 スタートアップ企業に投資する方法
スタートアップ企業に投資する方法は様々ありますが、以下ではクラウドファンディングを通じて個人でも少額から投資できる方法をご紹介します。
3-1 少額からスタートアップに投資できる株式投資型クラウドファンディング
上場企業は、株式市場を通じて広く一般の投資家から資金を集めることができます。しかし、株式を公開していないスタートアップ企業は、その運営資金を集める方法が限られています。
そのような場合に、企業(個人)の構想や事業計画についてインターネットを通して広く発信し、その内容に賛同する、あるいはその活動を支援したい人から資金を募れるシステムがクラウドファンディングです。
その中でも株式投資型クラウドファンディングは、銀行からの融資やベンチャーキャピタルからの出資をまだ受けることが難しいスタートアップ段階の企業に資金調達の道を開く仕組みとなっています。
政府もスタートアップ支援を前面に打ち出しており、「株式投資型クラウドファンディング」「エンジェル投資」の利用促進が、各種経済対策に盛り込まれています。これまでVCからの調達などと通算して1年間で1億円未満に抑える必要がありましたが、2022年1月には株式投資型クラウドファンディングに関する制度改正があり、改正法の施行で株式投資型クラウドファンディング単体で1年間に1億円未満の資金調達を行うことが可能になりました。また、投資家サイドでも、1社につき50万円以内という投資金額枠が一部緩和され、より利用がしやすくなってきています。
以下では、スタートアップの株式投資型クラウドファンディングに参加できる主なサービスを紹介していきます。
3-2 日本初の株式投資型クラウドファンディングサービス「ファンディーノ」
ファンディーノは、株式会社FUNDINNOが提供する日本初の株式投資型クラウドファンディングサービスで、様々なスタートアップ企業の株に10万円程度から投資をすることができます。
ファンディーノで募集されるスタートアップ企業に対しては、投資家保護の観点から厳正な事前審査が行われます。審査では、会社の将来性・安定性・独自性・革新性などの項目について、決算書や事業計画書に基づいて判断するとともに、経営者との面接も実施されます。これらの審査は社内の公認会計士などを中心に行われ、採用の是非を決める審査会議では、多数決ではなく全員一致で審査通過となります。
ファンディーノには、このような厳しい事前審査を通過した企業が提案する案件のみが掲載されています。投資家の方は、その中から投資したい案件を選んで申し込みを行うことができます。
なお各企業は、プロジェクト達成のための「目標募集金額」をそれぞれ設定しています。目標募集額に到達した状態で申込期間が終了した場合、もしくは上限応募額に到達した場合に、その後のキャンセル期間中に目標募集額を下回らないときに成約する仕組みとなっています。なお、投資家登録にかかる手数料や株式購入にかかる手数料は無料です。
また、投資家登録をすると、商号・住所・資本金・代表者・資金使途など投資先企業に関する詳しい情報を確認でき、案件について不明な点があればサイト内から質問することもできます。
実際にエグジットに成功したスタートアップも
2019年7月には漢方生薬研究所という発行企業において実際にエグジットが成功し、2017年12月のファンディーノでの株式募集から1年5ヶ月で株価1.5倍となった事例も出ています。これは年間の利回りで換算すれば、実に『35.3%』というきわめて高いパフォーマンスとなります。

もちろんこれほど短期間でエグジットできるケースはまれで5年・10年という時間がかかる案件もある点には注意が必要ですが、一部の案件では発行企業のサービスや製品の割引・特典が付く形により株主還元が行われているものもありますので、長期的な視点で投資できそうな案件をピックアップしてみると良いでしょう。
2021年3月にはIPO(新規株式公開)のイグジット案件も
また、2021年3月には、ファンディーノで資金調達を行ったスタートアップの琉球アスティーダスポーツクラブ株式会社が株式会社東京証券取引所「TOKYO PRO Market」へ上場が承認されました。株式投資型クラウドファンディングで資金調達を行った企業で初めての新規株式公開事例となりました。
未上場株をオンラインで売買できる「ファンディーノマーケット」を提供
ファンディーノでは、2021年12月から未上場株をオンラインで売買できる「ファンディーノマーケット」のサービスを提供しています。
スタートアップの未上場株はこれまで何かしらのイグジットをしないと株を手放すことができないという流動性の低さが大きな課題でしたが、ファンディーノでは日本証券業協会が提供する「株主コミュニティ」という制度を活用して、未上場株式を売買できるようになりました。株式投資型クラウドファンディングにおいて、上場やM&Aなど以外の出口ができたことは非常に大きな意義があります。
2022年1月末にはサービス開始後初となるマッチング期間が終了し、取引事例の中には7.8倍の値上がりが見られた銘柄もあります。(2022年1月末時点での取引は銘柄数4、約定取引数37、約定金額612万5千円、値上がり幅1倍~7.8倍)今後も月に1回マッチングが行われるとともに、取引可能な企業も増えていく予定です。
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3-3 募集後9ヶ月でイグジットした実績も「イークラウド」
2020年に新たに登場した株式投資型クラウドファンディングが、イークラウドです。イークラウドの運営元であるイークラウド株式会社は、大和証券の100%出資子会社である、Fintertech株式会社から出資を受けています。大和証券という著名証券会社のバックボーンがあることを活かし、取扱い企業の反社チェックを厳格に行った上で案件の募集を行っています。
イークラウドは、株主間契約を結んでいることも大きな特徴です。イークラウドを通じて株を購入した投資家と、スタートアップ企業の経営者との株主間契約を結ぶことが、イークラウドでの投資には必要です。株主間契約を結べば、イークラウドを利用した投資家は、スタートアップ企業経営者の「株式を譲渡したい」という意思に応える必要が出てきます。
投資家として不利に感じる方もいるかも知れませんが、実際には株式の円滑な譲渡を可能にして、株式をスムーズに現金化する意味合いがあります。
募集後9ヶ月でM&A成立、2.69倍のリターン発生事例も
2022年5月18日に、イークラウドを利用して資金調達を行ったスタートアップ企業で初の買収(M&A)が成立したという発表がありました。企業名は非公表ですが、このM&Aで、個人投資家に2.69倍のリターンが発生しています。このイグジット事例では、募集からM&A成立まで9カ月で、1年未満でのリターン発生は国内の株式投資型CFで最速(同社調べ)とのことす。
なお、今回の買収では、業界で初めて開発・導入した株主間契約スキームにより、プラットフォームを通じて投資を行う過程で電子契約を締結し株主間の合意を担保することで、スムーズに手続きを行うことができたとしています。
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4 株式投資型クラウドファンディングを利用する際の注意点
はじめて株式投資型クラウドファンディングを利用する場合は、以下のポイントに注意しましょう。
4-1 株式投資型クラウドファンディングは投資金額に制限がある
現在、株式投資型クラウドファンディングは、支援したい企業を見つけても一度にまとまった資金を投資できない制度となっています。具体的には、投資家が年間に投資できる上限額は「1社あたり50万円まで」と設定されています。
魅力的なスタートアップはたくさんありますし、スタートアップ企業への投資はハイリスクとなりますので、1社だけに投資を集中させず、複数の会社や他の投資手法にも分散をすることが大切です。
4-2 スタートアップ企業の投資案件は厳しい目線で選ぶ
クラウドファンディングにおけるスタートアップ企業への投資では、その企業の成長性・将来性を判断することがポイントになりますが、それは決して簡単ではありません。
上場企業の場合には企業が作成している事業や財務に関する帳票・資料などからある程度は経営体質や事業計画などを判断できますが、クラウドファンディングの対象となるスタートアップ企業は未上場企業であるため、参考になる決算書類やその他資料の種類がどうしても少なくなります。
この点についてファンディーノでは上場企業に見劣りしないデータや資料を揃え、現場などからのヒアリングも交えて、実現可能性を重視した事業計画の作成を支援しています。
プロジェクトの詳細や発行者情報、企業のリスク等は各ページから確認することができます。気になる案件があれば、発行者をフォローすることで発行者に関するお知らせを定期的に受け取ることができます(投資家登録していなくてもメールアドレスを登録するだけで利用可)。
案件について不明な点があれば「質問BOX」から直接問い合わせてみても良いでしょう。このように成長が期待できる企業かどうかを納得の行くまで調べることが重要です。
4-3 スタートアップ企業には余裕資金で投資する
スタートアップ企業の業績は、ある程度長い目で見守る必要があります。いくら革新的なサービス・プロダクトであっても、開発を行いながら経営基盤を整え、業績を伸ばし、経営規模を拡大していくにはある程度の時間が必要です。また、株式の新規上場や大手企業の買収・合併といったイベントも、いつまでに実現できるという保証はありません。
そのため、クラウドファンディングによるスタートアップ企業への投資は、余裕資金で行うことも必要です。大切な生活費の一部を充てたり、借金をしたりしないように心がけましょう。
なお、ファンディーノでは、投資家登録の段階で、投資に使う資金が生活費・借入金・使途確定金ではないことなどが条件となっています。投資家登録する際は、この条件をよく確認するようにしましょう。
5 まとめ
新しいビジネスモデルの開発を目指し、短期間で大きな成長を目指すスタートアップ企業に投資する方法として、クラウドファンディングの活用は今後さらに普及するでしょう。
サービスによっては少額から投資できる上、取引コストはかからず、厳選された募集企業を中心に興味のある案件を選ぶことができます。ただし、未上場企業への投資ということを念頭に置き、事前にメリットやデメリットについて十分に認識しておくことが重要です。
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HEDGE GUIDE 編集部 株式投資チーム

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