株式投資、銘柄の財務分析のやり方は?生産性・財務安全性・成長性の測り方を解説

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財務諸表を用いた企業分析は、収益性・生産性・安全性・成長性の4つの観点から行います。以前の記事では、これらのうち収益性分析について説明しました。今回は残り3つの分析方法について解説します。

目次

  1. 生産性分析
    1-1.付加価値
    1-2.労働生産性
    1-3.労働分配率
  2. 安全性分析
    2-1.流動比率
    2-2.当座比率
    2-3.自己資本比率
    2-4.財務レバレッジ
  3. 成長性分析
    3-1.売上成長率
    3-2.営業利益成長率
    3-3.経常利益成長率
    3-4.純利益成長率
  4. まとめ

1.生産性分析

生産性分析とは、経営資源(人・物・金)を使い、効率的に価値が生み出されているか(付加価値)を分析する方法です。付加価値を求め、労働生産性や労働分配率などを算出することで、競争力や労働環境などを把握することができます。

前回、例に挙げた衣料品メーカーA社の損益計算書を利用し、生産性、安全性、成長性の順に分析してみましょう。

A社の基本的なデータです。

  • 1年間の売上高:5,000万円
  • 原材料費:2,000万円
  • 人件費や賃貸料、交通費、機械の減価償却費の合計金額(販売費及び一般管理費):1,500万円
  • 人件費:1,300万円
  • 銀行への返済利息:300万円
  • 法人税率は30%
  • 従業員:5名
A社の損益計算書 (万円)
売上高 5,000
売上原価 2,000
 売上総利益 3,000
販売費及び一般管理費 1,500
 営業利益 1,500
営業外収益 0
受取利息 0
営業外費用 0
支払い利息 300
 経常利益 1,200
特別利益 0
特別損失 0
 税引前当期純利益 1,200
法人税及び淳民税 360
 当期純利益 840

1-1.付加価値

付加価値の計算方法には、日銀方式(加算法)と中小企業庁方式(控除法)の2つがあります。いずれも損益計算書から求めることができます。どちらの算式も同じ結果となります。

  • 日銀方式:経常利益+人件費+賃貸料+減価償却費+金融費用+租税公課
  • 中小企業庁方式:売上高-外部購入価値(材料費、外注加工賃、買入部品費など)

日銀方式を用いて、上記A社の損益計算書から付加価値を求めてみましょう。

A社の付加価値=1,200万円(経常利益)+1,500万円(人件費、賃貸料、減価償却費など)+300万円(金融費用=銀行利息)+360万円(租税公課=法人税)=3,360万円

1-2.労働生産性

労働者1人あたりの付加価値額を労働生産性と言います。付加価値が3,360万円、従業員数5名なので、労働生産性は672万円となります。

この金額が大きいほど効率的な人材活用ができているということができ、同業他社と比較することで企業の効率性を知ることができます。なお、付加価値に占める人件費の割合のことを労働分配率といいます。

1-3.労働分配率

それではA社の労働分配率を求めてみましょう。

労働分配率=(1,300万円÷3,360万円)×100=38.69%

企業の利益が大きくても、人件費が低く抑えられていることで利益が出ている可能性があります。人件費が同業他社と比べ低く抑えられている場合、労働者意欲が下がり企業競争力の低下につながる可能性があります。

2.安全性分析

安全性分析は、企業の支払い能力や、借入金額が身の丈にあっているかどうかなどを分析する方法です。貸借対照表を用いて、①流動比率、②当座比率、③自己資本比率、④財務レバレッジなどを算出します。

①②は、手元資金(現金等)と1年以内に返済期を迎える金額を比較し、手元資金で賄うことができるかをみます。③④は、借入金と自己資本を比較し、借入額が返済できなくなってしまうリスクをみます。

ここでは、以下のC社の貸借対照表を例にとって、一つずつみていきましょう。

1 流動資産 1 流動負債
現金・預金 3,000 支払手形 1,500
受取手形 500 買掛金 2,000
売掛金 2,500 短期借入金 500
棚卸資産 2,000 2 固定負債
2 固定資産 長期買入金 3,000
機械 2,500 純資産
建物 5,000 1 株主資本
資本金 5,500
資本剰余金 3,000
資産 15,500 負債・純資産 15,500

2-1.流動比率

流動資産÷流動負債で流動比率が求められます。流動資産とは、現金・預金+受取手形+売掛金+棚卸資産の合計額です。
また流動負債とは、支払手形+買掛金+短期借入金の合計額です。

例:8,000円÷4,000円=2倍=200%

この数字が高ければ高いほど財務的な安全性が高い企業と言えます。一般的に200%超が望ましいとされています。

2-2.当座比率

流動資産から現金化しづらい棚卸資産を引いた値(現金・預金+受取手形+売掛金)6,000円と流動負債4,000円で割って求めます。

例:6,000円÷4,000円=1.5倍=150%

一般的に100%以上あれば良いとされています。

2-3.自己資本比率

純資産÷(負債+純資産)で求めます。負債と純資産の合計を使用総資本といいます。自己資本比率とは、使用総資本に占める純資産の割合のことです。

例:使用総資本=7,000円+8,500円=15,500円
自己資本比率=8,500円÷15,500円=54.83%

自己資本比率が高ければ高いほど使用総資本に占める借入金が少ないため、安全性があるとされます。業種にもよりますが、一般的には30%以上が好ましいとされています。

2-4.財務レバレッジ

自己資本比率の逆数のことで、使用総資産を純資産で割って求めます。

例:15,500円÷8,500円=1.82倍

数値が大きいほど借入依存度が高いことを示しています。

3.成長性分析

成長性分析は前期と今期の売上や収益、貸借対照表の数値を比較し、伸び率を求める分析方法です。

衣料品メーカーA社の売上高は、6,000万円(前期:5,000万円)、原材料費が2,500万円(前期:2,000万円)、販売管理費及び一般管理費が1,800万円(前期:1,500万円)、銀行への返済利息が300万円(前期:同額)、法人税率30%でした。

それぞれの成長性を求めてみましょう。

3-1.売上高成長率

今期の売上高が前期と比較し、どれくらい成長したのかをみます。

(6,000万円-5,000万円)÷5,000万円=20%

売上高は前期比20%増加しました。

3-2.営業利益成長率

営業利益の成長率を算出することで、売上成長の質を調べることができます。在庫整理で安売りしたためなのか、それとも純粋に製品の良さにより売上が伸びたのか等によって、今後の企業成長がどう続いていくのかが予想できます。

営業利益=6,000万-2,500万円-1,800万円=1,700万円
営業利益成長率=(1,700万円-前期営業利益1,500万円)÷1,500万円 = 13.33%

3-3.経常利益成長率

経常利益成長率には営業外収益や費用の増減が反映されます。

経常利益=1,700万円-300万円(銀行への返済利息)=1,400万円
経常利益成長率=(1,400万円-前期経常利益1,200万円)÷1,200万円=16.67%

3-4.純利益成長率

純利益成長率は税引き後の利益の成長率です。利益が増えると配当原資が増えるため増配が期待できます。

当期純利益=1,400万円×(1-0.3(法人税率))=980万円
純利益成長率=(980万円-前期当期純利益840万円)÷980万円=14.28%

まとめ

株式投資の銘柄選択をするうえで、財務分析により企業の強みや弱みを理解することは有効です。また、業種平均を確認しておくと、その業種内における企業の位置づけも知ることができます。財務分析をするにあたっては、過去のトレンドを見ることも大切です。

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藤井 理

大学3年から株式投資を始め、投資歴は35年以上。スタンスは割安銘柄の長期投資。目先の利益は追わず企業成長ともに株価の上昇を楽しむ投資スタイル。保有株には30倍に成長した銘柄も。
大学を卒業後、証券会社のトレーディング部門に配属。転換社債は国内、国外の国債や社債、仕組み債の組成等を経験。その後、クレジット関連のストラテジストとして債券、クレジットを中心に機関投資家向けにレポートを配信。証券アナリスト協会検定会員、国際公認投資アナリスト、AFP、内部管理責任者。