高校生が金融教育で学ぶ「貯める・増やす」資産形成の内容は?NISAの仕組みも

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2022年4月から高校で金融教育が導入されました。2024年からは新NISAがスタートし、資産運用がより身近なものとして、あらためて資産形成の基礎知識を学ぶ必要性が高まっています。

この記事では高校生が金融教育で学ぶ「貯める・増やす」の資産形成についての内容と、高校生が知っておくべきNISAの仕組みなどを解説します。

目次

  1. 高校生の金融教育「貯める・増やす」で学ぶ内容
    1-1.単利と複利
    1-2.金融商品の3つの基準
    1-3.主な金融商品の特徴
    1-4.リスクとリターン
    1-5.リスク軽減の方法
  2. 高校生が知っておきたいNISAの基本
    2-1.NISA(少額投資非課税制度)とは?
    2-2.NISAの仕組み
    2-3.NNISAはいつから始めたらよいか
  3. 高校生が口座開設できる証券会社3選
    3-1.SBI証券
    3-2.楽天証券
    3-3.大和コネクト証券
  4. まとめ

1.高校生の金融教育「貯める・増やす」で学ぶ内容

2022年4月から導入された高校の金融経済教育で学ぶ単元は、以下のとおりです。

  • 家計管理とライフプランニング
  • 使う(キャッシュレス決済などについて)
  • 備える(社会保険と民間の保険)
  • 貯める・増やす(資産形成)
  • 借りる(ローン・クレジット)
  • 金融トラブル

このうち「貯める・増やす」では、資産形成の基礎と実践につながる応用を学びます。高校生が学校で学ぶ金融教育の「貯める・増やす」の内容は、金融教育を受けてこなかった保護者にも役立ちます。ここでは、金融庁の公表した「高校向け 金融経済教育指導教材」の内容に沿って、高校生が学ぶ資産形成の内容を解説します。

1-1.単利と複利

利息の計算方法には、単利と複利の2種類があります。

  • 単利:元本にのみ一定の割合で利息が発生する方式
  • 複利:利息を元本に加えながら利息を計算する方式

単利とは、元本にのみ一定の割合で利息が発生する方式です。たとえば、10万円を年利5%で預けた場合、1年後には5,000円(10万円×5%)の利息がつき、2年後にも5,000円の利息がつきます。

これに対し、複利とは利息を元本に加えながら、利息を計算する方式です。複利では10万円を年利5%で預けた場合、1年後つく利息は単利と同じ5,000円です。しかし、2年目の元本は10万5,000円となり、利息も5,250円に増えます。

単利と複利の差は、運用期間が長いほど大きくなります。たとえば、10万円を年利5%で40年間預けた場合、単利で得られる利息は20万円ですが、複利では約60万円の利息を得られます。

1-2.金融商品の3つの基準

資産形成のためには、預貯金や債券や株式のようなさまざまな金融商品を使う必要があります。これらの金融商品を選ぶときには、以下の3つの基準を考える必要があります。

  • 安全性:元本が減らないかどうか
  • 収益性:どれだけお金が増えるか
  • 流動性:いつでもお金を引き出せるか

1つの基準を高めると他の基準を低くすることになります。たとえば、1,000万円の元本保証のある銀行預金は安全性が高く流動性が高い特徴がありますが、収益性が低くなります。収益性が高い株式のような金融商品は安全性が低い傾向にあるのです。自分の目的やリスク許容度に合わせて、適切な金融商品を選ぶ必要があります。

1-3.主な金融商品の特徴

高校生がこれから活用していく可能性の高い、主な金融商品の特徴を解説します。

預貯金

預貯金とは銀行や郵便局などにお金を預けることです。預貯金は安全性が非常に高く、預け入れ・引き出しも自由にできるため流動性も高いといえます。

しかし、その分収益性は低く、利息はほとんどつきません。また、物価が上昇するインフレの場合は実質的な価値が下がってしまうおそれがあります。預貯金は生活費や緊急時の備えを預けておくのに有効です。

預貯金の3つの基準は、以下のとおりです。

  • 安全性:高い。預金保険制度によって、一定額までの預金は保護される。
  • 収益性:低い。金利はほとんどつかない。
  • 流動性:高い。いつでもお金を引き出せる。

債券

債券とは国や地方自治体、企業などが投資家から資金を借り入れた際に発行する有価証券です。債券を購入するとは、発行体にお金を貸すことを意味します。投資家は一定期間ごとに利子を受け取り、期限(満期)が来たら元本を返してもらえます(償還)。

債券は預貯金よりも収益性が高く、安全性も高い金融商品です。しかし、債券を市場で売買する場合は、価格変動によって損をする可能性もあります。

債券の3つの基準は、以下のとおりです。

  • 安全性:高め。ただし、発行体の信用力が低下したりすると、元本や利息が払われないリスクがある。
  • 収益性:低め。利子が定期的に支払われる。
  • 流動性:中程度。債券市場で売買できる。

株式

株式とは、株式会社が資金を出資してくれた投資家に発行する有価証券です。株式を購入するとは、その会社に出資するという意味です。投資家は会社の利益に応じて配当を受け取ったり、株価の上昇によって売却益を得たりできます。

株式は債券や預貯金よりも収益性が高い金融商品ですが、その分安全性は低く、会社の業績や経済情勢によって株価が大きく変動します。そのため、損失を被るリスクも高めです。

株式の3つの基準は、以下のとおりです。

  • 安全性:低い。企業の業績や経営環境によって、株価が大きく変動するリスクがある。また、倒産した場合には元本が戻らない可能性もある。
  • 収益性:高い。株価が上昇した場合には売却益(キャピタルゲイン)が得られる。また、配当も受け取れる場合がある。
  • 流動性:高い。株式市場で自由に売買できる。

投資信託

投資信託とは、投資家から集めたお金をプロの運用者が株式や債券に分散投資する運用商品です。投資家は運用成果に応じて分配金や基準価額の上昇による売却益を得られます。

投資信託は株式や債券などの金融商品を組み合わせて運用できるため、収益性と安全性のバランスが取れた金融商品です。また、自分で運用する時間や知識のない人や、分散投資をしたい人に向いています。

投資信託の3つの基準は、以下のとおりです。

  • 安全性:低い~中程度。商品の運用方針による。
  • 収益性:低い~高い。商品の運用方針による。
  • 流動性:高い。ただし、一定期間換金できない商品もある。

1-4.リスクとリターン

運用の結果、得られる利益や損失を「リターン」といい、リターンの不確実さや振れ幅の大きさを「リスク」といいます。

リスクとリターンの関係

リスクとリターンはトレードオフの関係にあります。一般的にリスクの小さな資産は得られるリターンも小さく、リスクの大きな資産は得られるリターンが大きい傾向にあります。たとえば、預貯金のリスクは低い分、高いリターンを期待できません。

また、株式は高いリターンを狙えますが、リスクが高いために損をする可能性も高めです。

1-5.リスク軽減の方法

投資のリスクを完全になくすことはできません。しかし、以下のような方法でリスクを軽減して、堅実にリターンを狙えます。

長期投資

投資を長期間続けるとリスクのある金融商品の値動きの振れ幅が平均化されて、安定した成果を期待できます。また、期間が長いほど複利効果も働くため、効率的な資産形成が可能です。長期投資では短期的な値動きに一喜一憂せず、投資を継続していくことが大切です。

積立投資

積立投資とは毎月や毎年など一定の間隔で一定の金額を投資することで、「ドルコスト平均法」ともいわれます。ドルコスト平均法とは定期的に一定の金額の買い付けることで、購入金額を平均化する手法です。

価格が安いときは多く、価格が高いときは少なく買うことになり、長期的な資産形成に有効な投資方法です。

分散投資

分散投資とは、1つの商品や1つの市場に偏らず、複数の商品や複数の市場に分散して投資することです。値動きの異なる複数の資産に分散投資すると、価格変動の振れ幅(リスク)を小さくする効果があります。

2.高校生が知っておきたいNISAの基本

高校の金融教育の「貯める・増やす」でも、NISA(少額投資非課税制度)を学びます。高校生はNISAを活用できませんが、将来の資産形成のために基礎知識を身につけておきましょう。

2-1.NISA(少額投資非課税制度)とは?

NISA(少額投資非課税制度)とは、投資によって得られた利益が非課税になる制度です。通常、株式や投資信託の売却益や配当金・分配金には20.315%の税金がかかりますが、NISA口座から発生した利益にはかかりません。

2024年からNISAは国民の資産形成の支援のため、大幅に拡充されました。

2-2.NISAの仕組み

2023年までのNISAは期限の決まった制度でしたが、制度そのものが恒久化され、非課税の期間も無期限になりました。2023年までは一般NISAとつみたてNISAの選択制でしたが、それぞれ成長投資枠とつみたて投資枠となり、併用ができるようになりました。

つみたて投資枠 成長投資枠
年間投資枠 120万円 240万円
非課税保有期間 無期限 無期限
投資対象商品 金融庁が定める一定の株式投資信託 株式投資信託と上場株式等(除外される銘柄もあり)
投資方法 積み立て 一括・積み立て

金融庁「新しいNISA」より筆者作成

非課税期間が撤廃された代わりに1,800万円の非課税保有限度額が新設され、そのうち成長投資枠は1,200万円までとなります。NISAで保有する資産の売却は自由にでき、売却によって空いた非課税枠は再利用可能です。よって、実際には1,800万円以上の非課税投資ができます。

2-3.NISAはいつから始めたらよいか

NISAは18歳以上を対象としているため、高校生のうちからNISAを始めるのであれば18歳になったタイミングから始められます。NISAを活用して100円から投資信託が買えるネット証券もあります。そのため、まとまったお金がない学生でも無理のない範囲で、NISAでの非課税投資に取り組めるのです。

また、早く始めると長期投資によるリスク軽減効果や、複利効果を享受しやすくなります。

未成年口座で買い付けた商品はNISAへ移管できない

18歳未満の未成年が口座開設して、本人が主体となって投資できる証券会社もあります。そのため、NISAを始める前に、学校の金融教育で学んだ内容の実践も可能です。

ただし、NISA口座でないため、運用益には課税されます。また、将来NISA口座を開設した場合にも未成年口座で保有していた運用商品をNISAに移管することはできません。

3.高校生が口座開設できる証券会社3選

高校生が金融教育での学びを実践するために、実際に投資に取り組むのは有意義といえます。高校生が株式や投資信託の取引をするには、証券会社に未成年口座を開設する必要があります。

未成年口座を開設できるのは一部の証券会社であり、通常、保護者がその証券会社に口座を持っていなければなりません。また、取引主体は保護者である必要があります。ここでは、未成年者でも取引主体となれる証券会社を紹介します。

3-1.SBI証券

SBI証券

SBI証券は、日本最大級のネット証券会社です。未成年が口座開設をするには、親権者がSBI証券のインターネット取引口座を開設していなければなりません。未成年者が15歳以上の場合は、未成年者本人を取引主体にできます。

SBI証券の未成年口座で取引できる主な運用商品は、以下のとおりです。

  • 国内株式現物
  • 単元未満株(S株)
  • 外国株式
  • 投資信託
  • 債券

3-2.楽天証券

楽天証券

楽天証券は、楽天グループのネット証券会社です。親権者が楽天証券の口座を開設していれば未成年者でも口座開設が可能で、オンラインで手続きができます。楽天証券も未成年者が15歳以上の場合は、未成年者本人を取引主体にできます。

楽天証券の未成年口座で取引できる主な運用商品は、以下のとおりです。

  • 国内株式現物
  • 外国株式
  • 投資信託
  • 債券
  • 金・プラチナ

3-3.大和コネクト証券

大和コネクト証券

大和コネクト証券は、大和証券グループのスマホ証券です。大和コネクト証券には「ティーン口座」という中学生以上対象の未成年口座があり、保護者の口座開設がなくても口座を作れます。また、取引主体も未成年者本人です。

大和コネクト証券には単元未満株の「ひな株」や、100円から毎日投資信託の積み立てができる「まいにち投信」という未成年にも適したサービスがあります。大和コネクト証券のティーン口座で取引できる主な運用商品やサービスは、以下のとおりです。

  • 国内株式現物
  • ひな株(単元未満株)
  • まいにち投信
  • ひな株USA(米国株)
  • ポイント投資(dポイント・Pontaポイント)

まとめ

高校生が金融教育で学ぶ「貯める・増やす」では、資産形成の基礎と実践につながる応用を学ぶことができます。単利や複利の違いや金融商品の特徴などは、金融教育を受けてこなかった保護者にも役立つ内容となっています。

高校生のうちに投資の基本を学びながら、18歳以上であれば早い段階からNISAによる資産形成の実践を始めることも検討できます。18歳未満の高校生でも未成年口座で投資を始めることができるので、まずは少額資金から実践経験を積んでおくことも金融リテラシー向上のため役立ちます。

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松田 聡子

明治大学法学部卒。金融系ソフトウェア開発、国内生保を経て2007年に独立系FPとして開業。企業型確定拠出年金の講師、個人向け相談全般に従事。現在はFP業務に加え、金融ライターとしても活動中。 保有資格:日本FP協会認定CFP・DCアドバイザー・証券外務員2種 運営サイト : 経営体質改善のヒント