日本を元気にするカギはスタートアップ投資にあり ファンドマネージャーが解説する日本のIPO市場の未来

※本記事はfundnote株式会社 取締役CIO 川合直也氏による寄稿記事です。

日本ではスタートアップ企業の設立が増えている一方、資金調達の手段が限られているという課題があります。その解決策として期待されているのがクロスオーバー投資です。

本稿では、日本経済の成長とイノベーションの創出を支えたいと感じながらも、何から始めたらいいのか分からない方に向けて、日本株のアクティブファンドを運用するfundnoteのファンドマネージャーが、スタートアップ投資について解説します。

※本記事は2024年11月21日時点の情報です。最新の情報についてはご自身でもよくお調べください。
※本記事は投資家への情報提供を目的としており、特定商品・ファンドへの投資を勧誘するものではございません。投資に関する決定は、利用者ご自身のご判断において行われますようお願い致します。

目次

  1. 日本を元気にするカギはスタートアップ投資にあり
  2. なぜ日本では成功するスタートアップ企業が少ないのか
    2-1.米国のスタートアップ投資額は日本の約26.4倍
    2-2.上場後に待ち受る「死の谷」
  3. クロスオーバー投資による日本のIPO市況の活性化
  4. グロース銘柄に眠る収益機会
    4-1.成長株投資には追い風が吹いている
    4-2.宇宙から人材獲得まで 日本や世界をもっと元気にする企業
  5. fundnoteが描く日本の資本市場の未来
    5-1.クロスオーバー投資を通じて日本のイノベーションの創出に貢献したい
    5-2.日本企業の成長に繋がる投資を身近に

1.日本を元気にするカギはスタートアップ投資にあり

長く続いたデフレも脱却の兆しが見え、日本の経済は転換点を迎えつつあります。今後、賃上げが継続し経済が成長していくなかで、スタートアップ企業は社会に大きなイノベーションを与えつつ、経済成長をけん引する重要な存在です。

例えば、2024年7月に上場したタイミーは、「隙間バイト」という新しい働き方のイノベーションを実現しました。こういったスタートアップ企業への投資は、日本社会のイノベーションに貢献しつつ、企業価値向上によるリターンを狙うことができる投資対象であると感じています。

2.なぜ日本では成功するスタートアップ企業が少ないのか

2-1.米国のスタートアップ投資額は日本の約26.4倍

日本では評価額10億ドル以上に成長する、いわゆるユニコーン企業が少ないと言われています。20―30代の若者を中心に起業家精神を持ってスタートアップ企業を立ち上げるケースは増えてきた一方で、ユニコーンを育てるためのスタートアップの資金調達の手段が限られていることがあげられます。

2023年、米国のスタートアップ投資額は約1,700億ドル(約23.8兆円)に達した一方で、日本は約9,000億円と、その差は約26.4倍にもなります。日本ではシード投資やアーリーステージ投資を行うベンチャーキャピタルは増えてきていた一方、ある程度成長の道筋が見えているレイターステージのスタートアップ企業に対する投資については、資金の出し手が不足している状況です。

2-2.上場後に待ち受る「死の谷」

さらに、IPO(新規株式公開)は日本においてスタートアップの資金調達手段として一つのメルクマールとなっていますが、上場後に「死の谷」と呼ばれる現象が待ち受けています。「死の谷」とは、IPO直後に株価が大きく下落しその後数年間にわたって低迷、追加の成長投資のための増資が難しくなり、業績も伸び悩んでしまう現象です。ベンチャーキャピタルが上場直後に株を売却する一方、上場直後で評価の定まらない中小型企業に投資する上場株投資家が少ないことが背景にあります。

こうして、ポテンシャルのある企業の成長が阻害されてしまうのは非常に惜しいことです。また、この現状を見て上場を避ける起業家も出てきており、日本の資本市場に対する危機感を感じています。

「死の谷」問題の解決は容易ではありません。ベンチャーキャピタルはIRRを最大化するために早期に株式を売却するインセンティブがあり、逆に上場株の機関投資家もリスクを避けるために慎重にならなければなりません。この難しい問題の打開策となりえるのが、クロスオーバー投資です。

3.クロスオーバー投資による日本のIPO市況の活性化

クロスオーバー投資は、未上場企業と上場企業の両方に投資する手法です。ベンチャーキャピタルとは異なり必ずしも上場直後の売却をゴールとせず、上場後も継続的な成長が見込まれる場合には長期的に保有し企業価値向上によるリターンを狙います。また、上場株への投資も行い、多様な選択肢の中から収益機会を探ります。

クロスオーバー投資がベンチャー投資に非常に効果的なのは、未上場株と上場株の両方を同一の投資家が評価するからです。未上場の段階ではベンチャーキャピタルから高い評価が得られなかった企業が、上場してマーケットが変わった途端に評価を上げることはよく見られる現象です。もちろんその逆のケースも多く存在します。クロスオーバー投資とは、上場前から上場後に至るまで同一の投資家が一貫して企業を評価することで、そのような認識ギャップを収益機会にする手法です。

クロスオーバー投資への関心は高まりつつあり、2024年に投資信託協会の規則改正が行われると、9月には大手の資産運用会社である野村アセットマネジメントとレオス・キャピタルワークスが新たに未上場株を組み入れた投資信託の運用を開始しました。今後クロスオーバー投資家がさらに増えていくことで、スタートアップ企業の適正な評価と持続的な成長、IPO市場の活性化が実現されていくと考えています。

4.グロース銘柄に眠る収益機会

4-1. 成長株投資には追い風が吹いている

2024年は、成長株(グロース銘柄)投資にとって重要な変化の年となると考えています。世界で2-3年に渡って続いてきた金融引き締め、利上げという金融政策が転換点を迎え、各国中央銀行が利下げに向かっていくトレンドのなかで、これまで低迷していたグロース株に再び注目が集まると予想しています。

ファイナンス理論において、金利が下がると将来その会社が生み出す利益に対する現在の価値が高まります。特にグロース企業は足元の積極的な投資により将来の利益成長を高めようとしている会社であることから、企業価値の増加がバリュー株に比べて大きくなります。

4-2. 宇宙から人材獲得まで 日本や世界をもっと元気にする企業

fundnoteでは、将来的に企業価値が向上する企業はもちろんのこと、その中でも社会に対してインパクトの大きいイノベーションをもたらす企業に注目しています。

アストロスケール

特に注目している分野の一つが宇宙関連です。アストロスケール(証券コード:186A)は2024年のIPO銘柄で、『宇宙デブリ』の除去にいち早く着目し研究開発を行ってきた企業です。世界トップレベルの宇宙デブリ除去技術を有し、主要国政府機関からの開発案件を受注することに成功しています。

近年、宇宙に取り残されたロケットの残骸などのゴミである宇宙デブリと人工衛星やロケットの衝突が懸念され、世界的な社会問題となっています。サステナブルな宇宙開発を続けて行くうえで宇宙デブリの除去は必ず解決しなければならない社会問題であり、そのなかで同社がリーダー的な役割を担っていくことに期待しています。

ポート

また、日本に目を向けると、少子高齢化が社会問題となっており、将来的な労働者の不足が危惧されています。特に中小企業において、人材獲得競争に勝つための採用活動や、社外のリソースを活用した営業活動の重要性が高まっていくと考えています。ポート(証券コード:7047)は、求職者向けのプラットフォームの提供や、中小企業の採用支援、顧客獲得支援の事業等を行っている企業で、営業力に強みを持っています。労働者不足が進行するにつれて、人材事業や営業支援事業を提供する同社の企業価値が向上していくことに期待しています。

5.fundnoteが描く日本の資本市場の未来

5-1.クロスオーバー投資を通じて日本のイノベーションの創出に貢献したい

fundnoteは、クロスオーバー投資を通じて日本のスタートアップ企業をサポートし、さまざまなイノベーションの創出に貢献したいと考えています。既存の制約にとらわれず、新しい挑戦的な事業を展開していくことができるのは、スタートアップ企業ならでは強みです。スタートアップ企業が増え、日本の資本市場の活性化と社会のイノベーションが進むことを願っています。

5-2.日本企業の成長に繋がる投資を身近に

また、fundnote自身もスタートアップ企業として、投信業界にイノベーションをもたらしたいと思っています。fundnoteは「投資を通じて日本を豊かに 人生をもっと豊かに」をミッションとしています。日本株のアクティブファンドに特化した直販投信の会社として、「投資し甲斐のある日本企業を見極め個性あふれるファンドを、匠とともに」という想いをもとにサービスを提供していきます。

低コストの外国株インデックスファンド一辺倒で資産が国外に流出してしまい日本企業の成長に繋がらないと考えます。またファンドマネージャーの顔の見える運用、残高だけを追求せずエッジのあるアクティブファンドの提供、セールスによる直接営業ということを会社の強みに、日本や投資家の皆様の人生を豊かにすることを目指します。

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川合直也

京都大学総合人間学部を卒業後、日系投資運用会社、香港籍ロングショートヘッジファンドで日本の上場株アナリスト、ファンドマネージャー業務に従事。2021年にKxShare(現・fundnote)を共同創業し、取締役CIOに就任。IPOクロスオーバー戦略ファンドを運用。Twitter : @samma_ipo