欧州委員会は7月8日、使い捨てプラスチック飲料ボトルのリサイクル含有量を計算・検証・報告する新ルールについて公開諮問を開始した。今回の新ルールは、ケミカルリサイクル含有量も対象に含む初の規則で、EUの循環経済推進と化学産業の競争力強化を目指す。諮問期間は8月19日までとなっている。
新ルールは、使い捨てプラスチック指令(SUPD)で定められた野心的なリサイクル含有量目標の達成を支援する。同指令は、ポリエチレンテレフタレート(PET)製の使い捨て飲料ボトルについて2025年までに25%、全使い捨て飲料ボトルについて2030年までに30%のリサイクル含有量を義務付けている。欧州委員会は段階的アプローチを採用し、第一段階では既にPETのメカニカルリサイクルに焦点を当てた手法を導入済みで、今回の第二段階でケミカルリサイクルを含む全リサイクル技術に対応する。
新ルールの特徴は透明性と企業負担のバランスを重視した設計にある。計算手法は「燃料使用除外」配分ルールに基づき、燃料生産やエネルギー回収に使用された廃棄物はリサイクル含有量としてカウントしない。検証については、最も複雑な化学リサイクル段階では年次の第三者検証を義務付ける一方、中小企業には3年ごとの検証で負担を軽減する。また、企業は取引先の自己申告をチェックし、各国当局がリスクベースの管理を実施する仕組みとなっている。
EUは増大するプラスチック廃棄物への対応として、メカニカルリサイクルを基本としつつ、食品包装など高品質基準が必要な分野でケミカルリサイクルを代替手段として活用する方針だ。今回のルール制定により、投資の安定性と技術中立性を確保し、化学産業とプラスチック利用製造業の競争力向上を図る。さらに、この計算手法は将来的に包装材、自動車、繊維分野での類似ルールのモデルとしても機能する予定で、EUの持続可能なイノベーション分野での世界的リーダーシップ確立につながると期待される。
【参照記事】Plastic waste: Commission consults on new rules for chemically-recycled content in plastic bottles

HEDGE GUIDE編集部 ESG・インパクト投資チーム

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