欧州266団体、サステナビリティ規制の維持を求める共同声明を発表

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7月4日、投資家・金融機関91社、企業32社、サービスプロバイダー86社、支援団体57団体を含む266の署名団体が、EUのサステナブルファイナンス枠組みの中核要素を維持することの重要性を強調する共同声明を発表した。声明では、サステナビリティ報告、移行計画、気候目標、企業デューデリジェンスに関する規則が、EUの経済目標と持続可能性目標の達成に不可欠な基盤であると主張している。

声明の背景には、EU委員会が進める「オムニバスI簡素化イニシアチブ」がある。これは、企業の規制負担を軽減することを目的とした取り組みだが、署名団体は、企業サステナビリティ報告指令(CSRD)と欧州サステナビリティ報告基準(ESRS)、企業サステナビリティ・デューデリジェンス指令(CSDDD)の中核要素を損なうことなく、規制の簡素化は可能だと訴えている。

署名団体は、これらの規則が透明性と責任あるビジネス行動を促進することで、競争力と成長、長期的な価値創造につながると指摘。EU域内でサステナビリティ規則を実施する企業は、より強靭で、持続可能性に関連する課題と機会により適切に準備でき、これらの要素を投資家や他の金融ステークホルダーに伝える能力が高まるとしている。

声明では、具体的な提言として以下の5点を挙げている。第一に、ESRSの簡素化においても、CSRDのダブルマテリアリティアプローチを維持し、環境・社会・ガバナンス(ESG)のトピックをカバーすること。第二に、CSRDの適用範囲を従業員500人以上の企業とし、段階的な導入期間を設けること。第三に、バリューチェーンキャップが投資家と企業間の建設的な情報交換を可能にすること。第四に、CSDDDの中核要素を保護し、国連ビジネスと人権に関する指導原則およびOECDガイドラインに沿ったリスクベースの企業デューデリジェンスを維持すること。第五に、CSDDDの下で、企業が科学的根拠に基づく目標を含む気候移行計画を採用する要件を維持することである。

日本企業にとっても、この動向は重要な意味を持つ。EUは世界第3位の経済圏であり、日本企業の多くがEU市場でビジネスを展開している。特に、CSRDは2024年度から段階的に適用が開始されており、一定規模以上の在EU日本企業も報告義務の対象となる。また、CSDDDは2027年から適用開始予定で、サプライチェーン全体での人権・環境デューデリジェンスが求められることになる。

声明を主導した団体には、欧州サステナブル投資フォーラム(Eurosif)、気候変動に関する機関投資家グループ(IIGCC)、責任投資原則(PRI)などが含まれる。また、アリアンツ、ノルデア、イケアグループ、ノキア、バッテンフォールなど、欧州を代表する大手企業も署名に参加している。

EUのサステナビリティ規制は、グリーンウォッシングを防ぎ、真に持続可能なビジネスモデルへの転換を促進する重要な枠組みとして機能している。今回の共同声明は、規制の簡素化圧力が高まる中でも、その本質的な価値を守ろうとする市場関係者の強い意志を示すものといえるだろう。

【参照記事】Omnibus initiative: Sustainability rules are essential for European competitiveness

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HEDGE GUIDE編集部 ESG・インパクト投資チーム

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