サントリーオセアニアは7月8日、オーストラリア・クイーンズランド州スワンバンクに総投資額4億豪ドルをかけた最新鋭の飲料製造工場を開設した。同施設は太陽光発電やバイオマス、廃熱回収システムを活用し、稼働初日からカーボンニュートラル認証を取得。年間2000万ケースの生産能力を持ち、将来的には5000万ケースまで拡張可能な設計となっている。
新工場は17ヘクタールの敷地に建設され、サントリーの40以上のブランドポートフォリオの製造・包装を一貫して行う。プレミアムスピリッツからRTD(Ready to Drink)アルコール飲料、ソフトドリンク、ジュース、コーヒー、水、エナジードリンクまで幅広い製品群に対応。「サントリー-196」「ジムビーム」「メーカーズマーク」「カナディアンクラブ」「Vエナジー」など主力ブランドを1つの施設で生産する体制を整えた。
生産能力の面では、ドイツKrones社製の高速缶詰ラインとマルチフォーマットガラスボトリングライン、KHS社製のケグラインを導入。缶の充填能力は1時間当たり9万缶に達し、ガラスラインは5種類のボトル形状に対応。デパレタイズ(パレットに積まれた荷物を下ろす作業)から出荷まで全工程をわずか25分で完了させる高効率を実現した。最大60種類のSKU(在庫管理単位)に対応可能で、消費者の嗜好の多様化に迅速に対応できる柔軟性を備えている。
環境面では、14キロメートルに及ぶ7000枚の屋上ソーラーパネル、地元製材所の端材を活用したバイオマスボイラー、有機ランキンサイクル(ORC)技術を使用した廃熱回収システムなどを導入。さらにクイーンズランド州のCleanCo社と電力購入契約を締結し、100%再生可能エネルギーでの稼働を実現した。同社のイアン・ロバーツ最高サプライチェーン責任者は「サステナビリティは施設建設のあらゆる側面に組み込まれている」と強調する。
サントリーオセアニアは、フルーコーサントリーとビームサントリーを統合して設立された30億豪ドル規模のマルチ飲料事業体。今回の工場開設により、オーストラリア・ニュージーランド地域での生産体制を大幅に強化し、2026年初頭にはニュージーランドでのマルチ飲料事業を本格展開する予定だ。オーストラリアの包装・加工機械業界にとっても、過去10年間で最大規模の投資案件の一つとなり、地域製造業の新たなベンチマークとなることが期待されている。
【参照記事】Suntory Oceania opens smart, sustainable beverage hub

HEDGE GUIDE編集部 ESG・インパクト投資チーム

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