EU、自然保護投資を民間資金で促進する「ネイチャークレジット」制度構築へ

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欧州委員会は7月7日、民間投資による自然保護活動の促進と、実施者への報酬提供を目的とした「ネイチャークレジット・ロードマップ」を発表した。企業や金融機関、公的機関、個人による自然保護投資を促し、生物多様性の回復と新たな収益機会の創出を同時に実現する市場メカニズムの構築を目指す。

ネイチャークレジットは、湿地復元や森林拡大といった自然に有益な活動への投資を表す仕組みで、投資者は生態系の改善、リスク軽減、評判向上といった恩恵を受ける。独立機関による価値評価と認証により、投資家に対する信頼性を確保する。フォン・デア・ライエン委員長は「自然を貸借対照表に計上する必要がある。それがネイチャークレジットの役割だ」と述べ、市場原理による効率的な投資促進を強調した。

ユーロ圏のビジネスの4分の3が自然に依存する中、気候リスクは既に保険料上昇やサプライチェーン損害を引き起こしており、適応策を講じない企業は今後10年間で年間利益の最大7%を失う可能性があるとされる。EUは2026-2027年に予算の10%を生物多様性に配分し、対外支出を70億ユーロに倍増させる計画だが、年間650億ユーロの投資需要を満たすには官民協調が不可欠な状況だ。

今回のロードマップは、明確な基準と信頼性のある認証制度確立を通じて、グリーンウォッシングを回避しながら効果的な自然保護投資市場の形成を図る。9月30日まで一般からの意見公募を実施し、関係者の参画による制度設計を進める方針で、持続可能な経済成長と自然保護の両立を目指す新たな金融手法として注目される。

【参照記事】Nature Credits Roadmap to reward nature-positive action and boost private finance

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HEDGE GUIDE編集部 ESG・インパクト投資チーム

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