投資信託を購入する際に、悩むポイントの一つが外貨建てでの購入です。外貨建てで購入した場合、為替レートが大きく変動した場合に元本割れとなってしまうことも少なくありません。
そこで、本記事では、米ドル建ての投資信託の購入を検討している方に向けて、投資信託を米ドル建てで購入する際のメリットとデメリットについて解説します。
(記事監修者:藤井 理)
目次
- 米ドル建て投資信託とは
1-1.外貨建て投資信託と外国籍投資信託の違い
1-2.米ドル建て投資信託の種類 - 米ドル建て投資信託、2つのメリット
2-1.為替差益が狙える
2-2.リスクを分散できる - 米ドル建て投資信託、2つのデメリット
3-1.円高による為替差損のリスクがある
3-2.アメリカの政情変動により損失を被るリスクがある - 米ドル建て投資信託のリスクを軽減させる「為替ヘッジ」
4-1.為替差損を回避できる為替ヘッジとは
4-2.為替ヘッジのメリット、デメリット - まとめ
1.米ドル建て投資信託とは?
ここでは、米ドル建て投資信託の概要を確認していきます。米ドル建て投資信託の場合、円建て投資信託とは扱う銘柄が異なる点にも注意が必要です。
1-1.外貨建て投資信託と外国籍投資信託の違い
米ドル建て投資信託は、米ドルで購入し、損益や分配金などが米ドルで表示される投資信託のことです。米ドル建てだけでなく、ポンドやユーロ建てなど、様々な国の外貨建て投資信託が販売されています。
一方、外国籍投資信託は海外で組成されて運用されている投資信託を表す言葉です。似た言葉ですが、外貨建て投資信託とは異なりますので注意が必要です。
米ドル建て投資信託は、日本円でも購入できるものの、日本円をドルに両替してから購入する形となります。なお米ドルを保有していれば、そのまま米ドル建て投資信託を購入可能です。
1-2.米ドル建て投資信託の種類
代表的な米ドル建て投資信託の種類は以下の通りです。
- 株式ファンド
- 債券ファンド
- バランスファンド
- REIT
米ドル建て投資信託も国内の投資信託と同様に、ハイリスクハイリターンなものから、比較的リスクが低いタイプのものまで様々といえます。そのため、自分の投資目的に適した商品選びをすることが大切なポイントです。例えば、株式と債券を組み合わせるなどの投資方法も任意で選択できます。
2.米ドル建て投資信託のメリット
米ドル建ての投資信託の主なメリットは為替差益を狙える点です。為替差益とは、円から米ドルに両替したときと、米ドルから円に戻したときのレートの違いで得られる利益のことです。
2-1.為替差益が狙える
例えば、1ドル90円のときに、1万ドルぶん購入すると、90万円が必要となります。その後、1ドル120円になってから1万ドルを日本円に戻したら、120万円が手元に残るという計算です。投資信託での運用益の他に、為替差益が生じれば利益はさらに大きくなる可能性があります。
2-2.リスクを分散できる
また、普段の生活の中では意識する機会が少ないですが、円安時には円建て資産の価値が相対的に目減りしていることになります。資産の一部をドル建てで保有しておくことにより、この円安による資産の目減りリスクを軽減することが可能となります。
3.米ドル建て投資信託のデメリット
米ドル建て投資信託にはメリットだけでなく、デメリットもあります。為替やカントリーリスクなども検討材料として注意が必要です。
3-1.円高による為替差損のリスクがある
米ドル建て投資信託は、円安ドル高が進めば、為替差益が見込めるため大きなリターンも期待できます。しかし、逆に円高ドル安が進行すると為替差損が発生し、元本を割り込むリスクが高まる点には注意が必要です。
例えば、1ドル100円のときに100万円で1万ドルを入手して、1ドル80円で1万ドルを日本円に戻したとします。その場合は、手元に残るのは80万円となり、20万円の損失になります。為替は日々状況が変わるため、売却のタイミングなどもよく検討しなければなりません。
3-2.アメリカの政情変動により損失を被るリスクがある
アメリカは経済においても世界の中心的な存在です。しかし、中心的な存在であるからこそ、様々な内政・外政のリスクをはらんでいます。例えば、中国との衝突や国内の不安定な政情、大統領選挙など、多くの市場変動要因があるためです。
アメリカ自体は経済成長を続けているため、日本よりも将来性が期待されます。ただし、状況によっては市場が暴落してしまうリスクは無視できません。
4.米ドル建て投資信託のリスクを軽減させる「為替ヘッジ」
ここでは、為替ヘッジの仕組みについて詳しく見ていきます。為替ヘッジは、米ドル建て投資信託の為替差損による資産の目減りを避け、アメリカの投資信託商品を購入したいという場合に有効な手段です。
4-1.為替差損を回避できる為替ヘッジとは
為替ヘッジとは、為替レートの影響による資産額の変動を回避するための方法です。具体的には、ドルから日本円に両替する際のレートをあらかじめ契約しておく、という形で為替変動リスクを回避します。
例として、1ドル100円で米ドル建て投資信託を購入した場合は、「1年後レートにかかわらず1ドル100円で交換する」と契約をしておくことで、為替差損が生じなくなります。
4-2.為替ヘッジのメリット、デメリット
為替ヘッジありの投資信託を選べば、為替差損を気にすることなく海外の投資信託を運用可能です。しかし、逆にいえば為替差益を得られなくなってしまう点はデメリットです。
1ドル100円で購入して、1年後に120円になっていても、為替ヘッジありだった場合には20円分の利益はなかったことになります。また、為替ヘッジのためのコストも必要です。ヘッジコストは相手国との金利差分発生し、信託財産から差し引かれるため、金利差が大きい国の通貨建て投資信託では基準価額に及ぶマイナスの影響も大きくなります。
為替ヘッジは、為替リスクを軽減できる有効な方法です。しかし万能ではなく、コストがかかる分、運用益が少なくなります。リスクとリターンを検討したうえで為替ヘッジありの投資信託の運用を検討する必要があります。
まとめ
米ドル建て債券ファンドは為替レートや金利差による利益が期待でき、米ドル株式ファンドは為替レートと株価上昇に伴う利益が期待できるメリットがあります。一方で、米ドル建て投資信託は、為替差損が生じる可能性や、米国内の政情に運用成績が左右されるなどのデメリットも無視できません。
投資信託は、元本割れのリスクがある金融商品です。そして、外貨建て投資信託は国内の投資信託よりもリスク要因が多くなっているため、注意が必要です。為替ヘッジで為替リスクは軽減できるものの、完全にリスクを無くすことはできません。そのため、購入する際は慎重に検討しましょう。
藤井 理
大学を卒業後、証券会社のトレーディング部門に配属。転換社債は国内、国外の国債や社債、仕組み債の組成等を経験。その後、クレジット関連のストラテジストとして債券、クレジットを中心に機関投資家向けにレポートを配信。証券アナリスト協会検定会員、国際公認投資アナリスト、AFP、内部管理責任者。
鈴原 千景
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