2024年の税制改正で、子育て世帯はどのような影響を受けるのでしょうか。結論からいうと住宅ローン減税の据え置きや子育てリフォームの減税対象化、定額減税など子育て世帯に手厚い支援策が盛り込まれています。
今回の記事では2024年の税制改正で子育て世帯に影響のある内容について詳しく解説します。2024年の税制改正で子育て世帯がどのようなメリットを受けられるのか知りたい方、家計の見直しや将来設計について考えていきたい方はご参考ください。
※記事内の税制内容は2024年5月時点の情報となります。最新の情報については、国税庁などのサイトをご確認のうえ、税理士などの専門家へのご相談もご検討ください。
※参考:総務省「令和6年度税制改正の大綱の概要」
目次
- 住宅ローン控除改正のポイント
1-1.住宅ローン控除とは?
1-2.特定の世帯の住宅ローン借入限度額が据え置きに
1-3.住宅ローン控除の床面積要件が緩和 - 子育てリフォームを減税対象に
2-1.減税の内容 - 住宅取得資金に係る贈与税の非課税措置
3-1.非課税贈与限度額
3-2.家計への影響 - 扶養控除の縮小
4-1.扶養控除の縮小案の内容 - 子育て世帯もメリットのある定額減税
5-1.所得税の定額減税
5-2.住民税の定額減税
5-3.定額減税の効果 - まとめ
1.住宅ローン控除改正のポイント
住宅ローン控除は2024年から借入限度額の引き下げ行われています。ただし、2024年度税制改正大綱では2024年入居の子育て世帯・若者夫婦世帯にかぎり、引き下げが見送られています。
1-1.住宅ローン控除とは?
住宅ローン控除とは、住宅ローンを利用して住宅を取得した場合に受けられる税制優遇措置です。この制度を利用すると一定期間、住宅ローンの年末残高に応じた金額を所得税や一部住民税から控除できます。
住宅ローン控除の内容
住宅ローン控除の控除期間と控除率は、以下のとおりです。
- 控除期間: 13年間(既存住宅は10年)
- 控除率:年末残高の0.7%
※参照:国土交通省「住宅ローン減税制度について」
住宅ローン控除の主な要件
住宅ローン控除の適用を受けるための条件は取得する物件の種別や取得時期によって多岐に渡ります。以下では、主な要件についてご紹介します。
- 引き渡しまたは工事完了から6ヶ月以内に入居
- 住宅の床面積が50㎡以上
- 住宅の環境性能等が要件を満たす
- 住宅ローンが10年以上の借入期間
※参照:同上
住宅ローン控除のポイント
住宅ローン控除は住宅ローンの残債の0.7%が所得税(控除しきれない場合は住民税からも)から控除される、「税額控除」の減税制度です。納めた所得税や住民税から一定の控除額が戻ってくる、メリットの大きい税制優遇措置です。
ただし、納めた税金以上にお金が戻ることはありません。また、適用を受けられるのは、一定の環境性能等の基準を満たす住宅に限定される点にも注意が必要です。
1-2.特定の世帯の住宅ローン借入限度額が据え置きに
2024年度の税制改正により、子育て世帯と若者夫婦世帯に対する住宅ローン減税の借入限度額が据え置かれることになりました。住宅価格の上昇を踏まえ、これらの世帯への支援を手厚くするための措置です。
具体的には、以下の世帯が2024年に新築住宅等に入居する場合、住宅ローン減税の借入限度額が2022年・2023年入居の場合と同水準に維持されます。
- 19歳未満の子どものいる世帯(子育て世帯)
- 夫婦のいずれかが40歳未満の世帯(若者夫婦世帯)
借入限度額の据え置き内容
2024年入居の場合の借入限度額は、以下のとおりです。
通常の借入限度額 | 据え置きの借入限度額(子育て世帯・若者夫婦世帯) | |
---|---|---|
認定長期優良住宅、低炭素建築物 | 4,500万円 | 5,000万円 |
ZEH水準省エネ住宅 | 3,500万円 | 4,500万円 |
省エネ基準適合住宅 | 3,000万円 | 4,000万円 |
出典:国土交通省「令和6年度住宅税制改正概要」より
政府は少子化対策の一環として、子育て世帯や若者夫婦世帯の住環境の改善を推進しています。今回の税制改正は、これらの世帯が良質な住宅を取得しやすくなるための支援策の1つといえるでしょう。
1-3.住宅ローン控除の床面積要件が緩和
2024年度の税制改正により、住宅ローン控除の適用を受けるための床面積要件が一部緩和されます。この改正は、特に都心部で増加傾向にある狭小住宅の取得を支援するための措置といえます。
床面積要件の緩和措置の主な内容は、以下のとおりです。
- 合計所得金額が1,000万円以下の人にかぎり、新築住宅の床面積要件が緩和される
- 緩和される床面積要件:40㎡以上
- 適用期限:2024年12月31日までに建築確認を受けた新築住宅
従来、住宅ローン控除の適用を受けるためには、新築住宅の床面積が50㎡以上である必要がありました。しかし、都心部を中心に職住近接のニーズや土地の有効活用の観点から、50㎡未満の狭小住宅の建設が増えています。
今回の改正は、こうした状況を踏まえ、一定の所得要件を満たす場合にかぎり、床面積要件を緩和するものです。床面積要件の緩和は、ライフスタイルや居住地のニーズに合わせた住宅選択の幅を広げる効果を期待できるでしょう。
ただし、狭小住宅の取得に際しては、長期的な住宅ニーズや資産価値の維持などにも注意が必要です。
2.子育てリフォームを減税対象に
2024年度の税制改正により、子育て世帯等が行う一定のリフォーム工事が、住宅へのリフォームに係る所得税の特例措置の対象に追加されます。この改正は、少子化対策の一環として、子育て世帯の住環境を改善するための支援策といえます。
2-1.減税の内容
子育て対応リフォーム減税の内容は、以下のとおりです。
対象 | 19歳未満の子どものいる世帯または夫婦のいずれかが40歳未満の世帯 |
減税内容 | 子育てに対応した一定のリフォーム工事が、標準的な工事費用相当額の10%等を所得税から控除する |
対象工事の限度額 | 250万円 |
最大控除額 | 25万円 |
適用期限 | 2024年12月31日 |
出典:国土交通省「令和6年度住宅税制改正概要」より
子育てに対応したリフォーム工事の例
子育てに対応したリフォーム工事とは、以下のようなものです。
- 住宅内の子どもの事故を防止するための工事
- 対面式キッチンへの交換工事
- 開口部の防犯性を高める工事
- 収納設備を増設する工事
- 開口部・界壁・床の防音性を高める工事
- 間取り変更工事(一定のものにかぎる)
3.住宅取得資金に係る贈与税の非課税措置
「住宅取得資金に係る贈与税の非課税措置」は、子育て世帯や若年層の住宅取得を支援するための制度です。親や祖父母から住宅取得資金の贈与を受けた場合、一定の要件を満たせば贈与税が非課税となります。
この特例措置は2023年12月31日に終了する予定でしたが3年間延長し、2026年12月31日までの適用となります。
3-1.非課税贈与限度額
この非課税贈与の上限金額は、以下のとおりです。
- 一般住宅:500万円
- 質の高い住宅:1,000万円
質の高い住宅の要件は、以下のとおりです。
新築住宅
- 断熱等性能等級5以上かつ一次エネルギー消費量等級6以上
- 耐震等級2以上または免震建築物
- 高齢者等配慮対策等級3以上
既存住宅・増改築
- 断熱等性能等級4または一次エネルギー消費量等級4以上
- 耐震等級2以上または免震建築物
- 高齢者等配慮対策等級3以上
対象となる住宅には、以下のような床面積の要件もあります。
- 50㎡以上
- 合計所得金額が1,000万円以下の受贈者にかぎり、40㎡以上50㎡未満の住宅も適用可
3-2.家計への影響
親や祖父母から住宅取得資金の贈与を受けられると、資金計画の大きな助けとなります。ただし、贈与を受けた人は贈与税を負担しなければなりません。2026年までの期間限定ではありますが、この非課税措置を利用できれば、税負担なく親や祖父母からの援助を受けられます。
住宅取得を考えていて親や祖父母からの贈与を受けられる人は、2026年までに住宅を取得できるように計画を進めるとよいでしょう。
4.扶養控除の縮小
2024年度の税制改正大綱において児童手当の見直しに合わせて、扶養控除についても一部縮小が検討されています。この改正は、児童手当の拡充による子育て世帯への支援と、所得階層間の公平性を図ることを目的としています。
4-1.扶養控除の縮小案の内容
16歳から18歳までの扶養控除の縮小案は、以下のとおりです。
- 所得税:年間38万円 → 年間25万円
- 住民税:年間33万円 → 年間12万円
所得税は2026年分から、住民税は2027年度分から適用する予定です。
この年代の子どもについては、児童手当の支給期間が延長されることになっています。政府は控除の縮小に伴う税負担の増加が年間12万円受け取れる児童手当を下回り、実質的に手取りが増えるとの考えです。
扶養控除の縮小の影響は高所得の世帯ほど大きいと考えられ、児童手当による教育費支援の効果が薄れる可能性もあります。
5.子育て世帯もメリットのある定額減税
2024年度の税制改正では、子育て世帯を含む多くの家庭にメリットのある定額減税が実施されます。この措置は、物価高騰の影響を受けている世帯の負担を軽減することを目的としており、所得税と住民税の両方で減税が実施されます。
※参照:国税庁「定額減税について」
5-1.所得税の定額減税
所得税の定額減税の対象者は2024年分の所得税の納税者で、合計所得金額が1,805万円以下の居住者です(給与収入のみの場合は2,000万円以下)。
所得税の減税額は、以下のとおりです。
- 本人:30,000円
- 同一生計配偶者または扶養親族(いずれも居住者に限る):1人につき30,000円
ただし、合計額が所得税額を超える場合は、所得税額が上限となります。
所得税の減税の実施方法は、以下のとおりです。
- 給与所得者:2024年6月以降の給与から源泉徴収額が減額
- 事業所得者等:2024年分の確定申告時に所得税額から控除
なお、居住者とは日本国内に住所がある、または1年以上継続して居住する個人を指します。
5-2.住民税の定額減税
住民税の定額減税の対象者は、2023年の合計所得金額が1,805万円以下の個人住民税所得割の納税義務者(国内に住所のある人)です。
住民税の減税額は、以下のとおりです。
- 本人、同一生計配偶者および扶養親族1人につき10,000円
住民税の減税の実施方法は、以下のとおりです。
- 給与所得者:2024年6月分は徴収されず、7月分から2025年5月分までの11ヶ月で均等に徴収
- 事業所得者等:2024年6月分の税額から控除、控除しきれない場合は8月分以降順次控除
※参照:総務省「個人住民税の定額減税について」
5-3.定額減税の効果
所得税と住民税を合わせると、4人家族の場合、最大で160,000円の減税となります。この金額は、子育てにかかる費用の一部をカバーできるでしょう。
まとめ
2024年の税制改正では、子育て世帯の住宅取得を支援する内容が多くなっています。2020年頃から住宅価格が高騰し、子育て世帯の住宅取得が難しくなっているためと考えられます。
子どもの学費を準備しながら住宅ローンを無理なく支払っていくには、全体的な資金計画が非常に大切です。2024年の税制改正を上手に活用し、子育てに伴う経済的負担を軽減していきましょう。
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松田 聡子
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