近年、日本では物価上昇が継続しています。こうした経済環境の変化を受け、これまで預貯金を中心に資産を形成されてきた方々の間でも、資産価値の実質的な目減りを懸念し、資産運用への関心が高まっています。多様な運用手法が存在する中で、アパート経営は有効な選択肢の一つとして注目されています。
これは、不動産に代表される実物資産が、インフレーション(以下、インフレ)の局面において価格が上昇する傾向にあり、資産防衛、すなわちインフレヘッジとしての機能が期待されるためです。本稿では、物価上昇下で資産価値が目減りするメカニズムと、その防衛策としてのアパート経営の有効性について解説します。
目次
- 日本のインフレの動向
- インフレ下で資産価値が目減りするメカニズム
- インフレに対する資産防衛策としてのアパート経営
3-1.インフレヘッジとして有効な資産の特性
3-2.実物資産としてのアパート・不動産
3-2.賃料収入(インカムゲイン)がもたらす優位性 - アパート経営が資産防衛において優位性を持つ理由
4-1.土地所有がもたらす長期的価値
4-2.安定したキャッシュフローの創出 - 長期的に資産価値を維持・向上できるアパート経営会社
- まとめ
1. 日本のインフレの動向
まず、日本のインフレの現状について概観します。インフレの動向を示す主要な指標である消費者物価指数(総合)の前年同月比は、以下の通り推移しています。
消費者物価指数(総合・前年同月比)の推移

出所:e-Stat「消費者物価指数」のデータを基に筆者作成
近年、コロナ禍からの経済活動の正常化や、資源価格の高騰を背景とした輸入物価の上昇などが重なり、物価上昇が顕在化しました。
日本銀行は長らく「2%の物価安定の目標」を掲げ金融緩和政策を推進してきましたが、近年はこの目標水準を上回る状況が継続しています。緩やかなインフレは、持続的な経済成長の過程で生じうる現象です。
しかし、日本は長らくデフレ環境にあったため、インフレを前提とした資産形成への備えが十分でないケースも少なくありません。例えば、資産の大部分を預貯金で保有している場合、預金金利がインフレ率を上回らない限り、資産の実質的な価値は低下します。
世界的な金融政策の動向や、国内における賃金上昇の動きなどを踏まえると、物価上昇圧力が短期的に解消されるとは考えにくい状況です。
2. インフレ下で資産価値が目減りするメカニズム
インフレ下における資産価値の目減りとは、物価が上昇する一方で、保有する金融資産の額面金額(名目価値)が変わらない場合に生じます。資産の「金額」自体は変動しないものの、その資産の購買力が低下する、すなわち「実質価値」が損なわれる現象です。
インフレ局面では、社会全体の財やサービスの価格が平均的に上昇します。これにより、同額の現金で購入できるモノやサービスの量は減少します。
例えば、現在100万円の現金を保有していると仮定します。ある商品の価格が1個1万円であった場合、5年間で10%のインフレが進行すると、商品の価格は上昇しますが、現金の額面は100万円のままです。
その結果、現在と5年後で購入可能な商品の数量には以下の差が生じます。
このように、資産の額面金額に変化がなくとも、購入できる財やサービスの量が減少するため、実質的な資産価値は目減りしたと評価されます。インフレが進行する中で資産を現金や預貯金のみで保有することは、こうした実質価値の低下リスクを内包しているのです。
3. インフレに対する資産防衛策としてのアパート経営
インフレから資産を防衛するためには、インフレ率に連動、あるいはそれを上回るリターンが期待できる資産へ資金を配分することが有効な戦略となります。その中で、アパート経営は有力な選択肢の一つと考えられます。
アパートをはじめとする不動産は、インフレに伴い資産価値の上昇が期待できる実物資産の代表例です。また、毎月得られる賃料収入は、インフレ局面におけるキャッシュフローの安定化に寄与します。
3-1. インフレヘッジとして有効な資産の特性
インフレヘッジとして機能する資産とは、一般的に物価上昇に伴いその価値も上昇する傾向を持つものを指します。主な資産のインフレ環境下における特性は、以下の通りです。
上表から、実物資産はインフレ環境下において価値を維持・向上させやすい特性を持つことが示唆されます。
3-2. 実物資産としてのアパート・不動産
アパートをはじめとする不動産は、実物資産の代表的な一例です。実物資産とは、物理的な実体を持ち、それ自体に価値が内在する資産を指します。金やプラチナといった貴金属、美術品などがこれに該当し、土地・建物という物理的な存在である不動産も実物資産に分類されます。
実物資産は、インフレとともに資産価値が上昇しやすいという特徴があります。不動産の場合、これは建築コストや土地価格が物価上昇の影響を受けること、また、経済活動の活発化が不動産需要を押し上げることなどに起因します。
3-3. 賃料収入(インカムゲイン)がもたらす優位性
不動産投資は、継続的な賃料収入(インカムゲイン)を得られる点において、他の多くの実物資産とは異なる優位性を持ちます。インフレが進行すると、資産価値の目減りだけでなく、支出の増加により家計が圧迫される可能性があります。
不動産経営が安定的に行われていれば、毎月得られるキャッシュフローがインフレによる支出増を補い、家計の安定に貢献することが期待できます。
貴金属や美術品など、多くの実物資産は保有しているだけではインカムゲインを生み出しません。その価値の実現は、売却によるキャピタルゲイン(売却益)に依存します。投資期間中、継続的にキャッシュフローを生み出す点は、実物資産の中でも不動産投資が持つ大きな特徴です。
4. アパート経営が資産防衛において優位性を持つ理由
不動産投資の中でも、特にアパート経営は資産防衛の手段として有効な選択肢と見なされています。ここでは、インフレ局面におけるアパート経営の優位性について解説します。
4-1. 土地所有がもたらす長期的価値
数十年単位の長期的な資産保全を考えた場合、土地を一体として所有できる点はアパート経営の大きな利点です。一部の貴金属を除き、多くの実物資産は経年劣化の影響を受けることが課題となります。
不動産を構成する建物も、物理的な劣化や機能的な陳腐化により、時間とともにその価値は減価していくのが一般的です。一方、土地には物理的な経年劣化という概念が存在せず、時の経過自体が直接的な価値の減少要因とはなりません。
アパート経営では、土地と建物を一体として取得します。長期にわたる経営の過程で建物の価値は徐々に低下しますが、土地の価値は経年とは無関係に維持される傾向があります。したがって、土地部分は長期にわたり資産価値を保全しやすいという特性を持つのです。建物が老朽化した際には、解体して建て替える、あるいは駐車場など他の用途に転用するといった、柔軟な活用も検討できます。
比較として、区分所有マンションにおいても敷地権として土地の権利を所有しますが、これは一筆の土地を全所有者で共有する形態です。そのため、個々の所有者が持つ土地の持分は相対的に小さく、また土地の利用方法に関する意思決定を単独で行うことはできません。一筆の土地全体に対する所有権を単独で有することは、資産保全の観点からアパート経営の大きな優位性と言えるでしょう。
4-2. 安定したキャッシュフローの創出
比較的まとまった規模の賃料収入が期待できる点も、アパート経営が資産防衛に有効とされる理由の一つです。インフレ局面では、安定したキャッシュフローの確保が家計の安定や資産全体の保全において重要となります。
アパートは一棟に複数の賃貸区画を有するため、区分所有マンション投資などと比較して、より大きな賃料収入を得やすい傾向にあります。適切な物件選定と資金計画に基づけば、融資を活用した場合でも、安定したキャッシュフローの創出が期待できます。
一方、区分所有マンション投資では、単一の住戸からの賃料収入となるため、収入規模は相対的に小さくなります。特に都心部の高額物件などでは、融資返済や経費を差し引いた後のキャッシュフローが限定的、あるいはマイナスとなるケースも想定されます。
預貯金や有価証券投資などを含む世帯の資産ポートフォリオ全体を守る上で、不動産からの安定したキャッシュフローは重要な役割を果たすと考えられます。
5 長期的に資産価値を維持・向上できるアパート経営会社
ここでは、長期的な資産価値の維持・向上を重視したアパートを企画・販売する不動産投資会社を紹介します。各社の強みを比較し、ご自身の投資戦略に合ったパートナー選びの参考にしてください。
5-1.シノケンプロデュース
- 駅徒歩10分以内の土地にこだわり、入居率98.75% (2024年年間平均/自社企画開発物件)
- 管理戸数50,000戸以上(2024年12月末時点)の豊富な管理実績
- 初回の入居が成約になるまで家賃を100%保証する「100%初回満室保証」
シノケンプロデュースは、東京・福岡・大阪・名古屋・仙台の都市圏で投資用アパートの販売を中心に行っているシノケングループのグループ企業です。管理戸数50,000戸以上(2024年12月末時点)の実績があり、入居率98.75% (2024年年間平均/自社企画開発物件)を実現しています。初回の入居が成約になるまで家賃を100%保証する「100%初回満室保証」や、入居者からの家賃の支払いが遅れた場合の家賃滞納保証などオーナーが安定した収益を生むための保証制度も充実しています。購入者の半数以上がリピーターとなっており、会社員・公務員からの評判も良い会社です。
さらに、シノケンは24時間365日・8カ国語対応の入居者向けコールセンターを設置し、外国人や高齢者など多様な入居者層に手厚いサポートを提供しています。このサービスにより、高齢者の安否確認や、外国籍の方との円滑なコミュニケーションが期待できます。オーナーにとっては、入居者層の拡大や将来の賃貸需要への対応といったメリットにつながります。
【関連記事】シノケンのアパート経営の評判は?営業、融資、物件、入居率の評判・口コミ
5-2.アイケンジャパン

- 入居者のターゲットを社会人女性に絞り、入居率99.3% (2024年年間平均/自社企画開発物件)
- 入居者が決まるまで無期限で家賃保証が行われる「初回満室保証」
- 女性入居者に合わせた高い防犯性を備えている点も特徴的
アイケンジャパンは、「堅実なアパート経営」をコンセプトに掲げる不動産投資会社で、2006年の創立から1000棟以上の開発・引渡し実績があります。
アイケンジャパンのアパートは、対象エリアを主要駅10分圏内(首都圏は15分圏内)、入居者のターゲットは物件選びの目線が厳しい社会人女性に絞って、防音性・防犯性・デザイン性・コストパフォーマンスなどを追求し、入居率99.3%(2024年年間平均/自社企画開発物件)を実現しています。事業計画の設定家賃に対しても、10年以上経っても98.7%(2024年6月末時点)の高い収益率を達成できており、オーナーからの紹介・リピート率も高い会社です。
さらに、オーナーに対する保証やサポートが手厚いのもアイケンジャパンの特徴です。家賃滞納保証や管理代行サポートなども利用できるため、初心者の方でもアパート経営に取り組むことができます。建物完成後は全部屋に入居者が決まるまで無期限で家賃保証が行われる「初回満室保証」があり、地盤の問題や構造上の欠陥についても、建物引渡日の翌日から20年以内に不同沈下が発生し、建物に被害が出た場合、建物と地盤の修復工事を行う「宅地地盤保証」という保証があります。
また、ターゲットである社会人女性のニーズに応えるため、防犯設備を充実させている点も特徴です。オートロックや防犯カメラはもちろん、共用廊下・階段の屋内設計、防犯シャッターの設置など、細部にまで配慮が行き届いています。
【関連記事】アイケンジャパンのアパート経営、メリットやリスクは?オーナーの口コミ・評判を分析
6. まとめ
近年のインフレにより、資産を預貯金のみで保有している場合、その実質的な価値が目減りする懸念が高まっています。これは、資産の「名目価値」は維持されても、購買力が低下する「実質価値」が損なわれるという課題が生じるためです。
その対策として有効な選択肢の一つが、本稿で解説したアパート経営です。不動産は実物資産であり、インフレに応じて価値が上昇しやすい特性を持ちます。
特に、毎月の賃料という安定したインカムゲインを得られる点は、他の実物資産と比較した際の大きな利点であり、家計や資産全体を支える効果が期待できます。不動産投資の中でも、土地を一体として所有でき、比較的まとまったキャッシュフローを確保しやすいアパート経営は、長期的な資産防衛の手段として有効な選択肢の一つと言えます。
インフレへの備えとして資産運用を検討されている方にとって、本稿がアパート経営という選択肢を考察する一助となれば幸いです。

伊藤 圭佑

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