イラクのHiwa Rauf for Investment & Development(HRID)社と世界銀行グループの国際金融公社(IFC)は9月13日、イラク初の認証取得予定のサステナブル複合不動産開発「ダウンタウン・スレイマニ」への融資パートナーシップ契約を締結した。IFCは同プロジェクトに6,500万ドルの融資を計画しており、イラクにおける持続可能な都市開発の新たなベンチマークとなることが期待される。
今回の契約は、モハメド・シーア・スダニ首相の後援のもとバグダッドで開催された「IFCパートナーシップデー・イン・イラク」において正式に発表された。IFCはこれまでにも市場評価や事業の実現可能性調査、コーポレートガバナンス、財務管理、運営効率化に関する助言を通じてHRIDを支援してきたが、今回の融資契約により、プロジェクトの資金調達とサステナビリティの実現において重要な一歩を踏み出すこととなった。
ダウンタウン・スレイマニは、クルディスタン地域のスレイマニ市に建設される複合開発プロジェクトで、住宅、商業モール、エンターテインメントセンター、5つ星ホテル、オフィスタワー、パフォーマンスセンター、レジャー施設を一体的に整備する計画だ。環境・社会・ガバナンス(ESG)原則に基づいて設計され、持続可能性、包括性、長期的な地域社会への貢献を開発の中核に据えている。小売店舗、オフィス、緑豊かな公共スペース、文化施設を組み合わせることで、人々が国際基準に基づいた近代的な環境で生活、仕事、交流できる活気あるコミュニティの創出を目指している。
IFCの地域プレ投資・アドバイザリー担当マネージャーのシェリサ・サムギー氏は「この重要なイニシアチブは、持続可能な都市インフラの促進、供給ギャップの解消、民間投資の誘致、建設・サービス分野での雇用創出に貢献することが期待される」と述べた。中東地域では近年、サステナビリティを重視した都市開発が加速しており、サウジアラビアのNEOMプロジェクトやUAEのマスダールシティなど、環境配慮型の大規模開発が進んでいる。イラクにおいても、戦後復興から持続可能な成長への転換期を迎える中、国際基準に準拠した都市開発への需要が高まっている。
今回のパートナーシップは、イラクの民間セクターの持続可能な成長を促進するIFCの継続的な取り組みを反映すると同時に、地域の都市開発において新たな基準を設定する先駆者としてのHRIDの役割を強化するものだ。イラクの経済変革における重要なマイルストーンとして、国際機関と地元のビジョナリーが協力して長期的なインパクト、レジリエンス、包括的な成長を実現する事例となることが期待される。

HEDGE GUIDE編集部 ESG・インパクト投資チーム

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