トランジション・ファイナンスの国際基準、1月末まで意見募集。資本提供者向けガイドライン公開

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英ロンドンのトランジション・ファイナンス・カウンシルは11月3日、脱炭素社会への移行を目指す企業への資金供給を支援する「トランジション・ファイナンス・ガイドライン」の改訂版を公表し、国際コンサルテーションを開始した。コンサルテーション期間は2026年1月30日までの約12週間で、2026年春に最終版を公表する予定となっている。同ガイドラインは、銀行や投資家などの資本提供者が、信頼性の高いトランジション・ファイナンスの機会を特定することを目的としている。

トランジション・ファイナンスとは、パリ協定に整合するネットゼロ経済の実現に必要な資金の流れ、金融商品、金融サービスのことを指す。低炭素技術への投資に加えて、既存企業がより持続可能なビジネスモデルへ転換するために必要な投資も含まれる。低炭素経済の実現には多額の投資が必要だが、すでに成熟したグリーン分野への資金流入がある一方、既存セクターがグレーからグリーンへ移行するための資本が不足している。投資家は、信頼性の高いトランジション企業を見極めることに困難を抱えており、同ガイドラインはこうした課題に対応するツールとして機能する。

同ガイドラインは企業レベルでの一般目的の資金調達および投資を対象とし、異なるセクターや管轄区域の企業に適用可能な一貫した最低限の期待事項を設定することを目指している。具体的には「原則(Principles)」と「ファクター(Factors)」で構成されており、原則は信頼性を示す横断的な側面を、ファクターは原則が真実であることを示す証拠を表している。原則には「信頼できる野心」「行動への洞察と進捗」「透明な説明責任」「依存関係への対処」などが含まれ、ユニバーサル・ファクターとコンテクスチュアル・ファクターの2層構造で評価を行う。日本では国際サステナビリティ基準審議会(ISSB)によるサステナビリティ開示基準が2023年に最終化され、日本版の基準も2025年3月末に確定予定となっており、企業の脱炭素移行に関する情報開示がますます重視される流れにある。

同ガイドラインは金融機関、ファンド、保険会社とその実体経済のカウンターパートにまたがる金融市場全体で相互運用可能であり、与信機関、資産所有者・運用会社、実体経済の企業、規制当局、公的金融機関、多国間開発銀行、政府など幅広い関係者にとって有用となる。市場の発展を反映した定期的な更新を行うことで、資本配分の意思決定の参考となり、スチュワードシップ活動を支援し、各機関が独自のトランジション・ファイナンス・フレームワークを構築する際のインプットを提供することが期待されている。パリ協定の1.5度目標達成には2035年までに世界全体で温室効果ガス排出量を60%削減する必要があるとされる中、民間資金を適切に脱炭素移行企業へ誘導する仕組みの整備が急務となっている。

【参照記事】Consultation on entity-level Transition Finance Guidelines

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HEDGE GUIDE編集部 ESG・インパクト投資チーム

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