欧州議会は10月22日、企業のサステナビリティ報告とデューデリジェンス(事業影響評価)義務を簡素化する新規則について、11月13日にブリュッセルで開催される本会議で修正案の採決を行うと発表した。同日の採決では、法務委員会が10月13日に採択した交渉委任案が賛成309票、反対318票、棄権34票の僅差で否決されたことを受けた措置となる。
今回の簡素化規則は、2025年2月26日に欧州委員会が提案したオムニバスⅠ簡素化パッケージの一部として位置づけられる。すでにEU理事会は6月23日に交渉ポジションを採択済みで、欧州議会の立場が決定され次第、2025年末までの法制化完了を目指して三者協議が開始される予定だ。
議会規則第72条3項に基づき、11月の本会議では議員から提出された修正案について個別に審議・採決が行われる。この手続きにより、議会としての交渉ポジションが確定し、EU理事会との機関間交渉が可能となる。
近年、EUではサステナビリティ情報開示を巡る規制強化が加速している。2024年1月から適用が開始された企業サステナビリティ報告指令(CSRD)では、EU域外企業も含めて開示が義務化され、企業の報告するESGデータに対する第三者保証の義務付けなど、高度な品質が要求されている。CSRDは初めてサーキュラーエコノミーを報告カテゴリーに含めており、欧州持続可能性報告基準(ESRS)との整合性も図られている。
一方で、中小企業を中心に報告負担の重さが指摘されており、今回の簡素化規則は、サステナビリティ報告の重要性を維持しながらも、企業の事務負担軽減を図る狙いがある。特に、報告義務の段階的適用や、中小企業向けの簡易版報告基準の導入などが検討されているとみられる。
グローバルでサステナビリティ開示基準の統一化が進む中、EUが実務面での負担軽減にどう対応するかは、今後の国際的な開示ルール形成にも影響を与える可能性がある。
【参照記事】MEPs to vote on simplified sustainability and due diligence rules in November
HEDGE GUIDE編集部 ESG・インパクト投資チーム
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