国連気候変動プレスリリースによると、パリ協定の国際炭素市場を運営する国連の監督機関「第6.4条監理団体」は10月10日、温室効果ガス除去が後に失われるリスクに対処する規則について合意した。これは、森林などによる炭素吸収が災害や管理不全で失われた場合の責任と補償の仕組みを定めたもので、2024年11月のCOP29で各国が合意した排出量基準を実施する重要な一歩となる。
監理団体は今週、ドイツのボンで会合を開催し、「逆転基準」の草案について実質的な進展を見せた。この基準は、炭素クレジットの信頼性を確保するために不可欠とされてきたが、プロジェクトの監視期間、リスクの定義、責任解除の条件などをめぐり議論が続いていた。監督委員長のマーティン・ヘッション氏は「科学に基づく確固たる基盤を提供する基準に到達した。実用的な解決策も考慮した」とコメントした。
合意された規則は、プロジェクトごとに監理団体が承認する期間にわたってリスクを監視することを求め、投資家が監視と保険プールを通じてリスク管理を行うインセンティブを提供する。また、リスクを早期に償還したり、堅固な保険や保証を提供する第三者にリスクを移転したりする選択肢も盛り込まれた。国際的な炭素市場では、途上国での植林や再生可能エネルギープロジェクトが炭素クレジットを生み出すが、その永続性を担保する仕組みが課題となってきた。今回の規則は、プロジェクトの手法、監視期間、リスク管理ツールを最新の科学に基づいて継続的に見直す方針も明記している。
同じ会合で、監理団体は「コモン・プラクティス分析ツール」を承認した。これは、ある種のプロジェクトがすでに地域で普及しているかを確認し、既存の取り組みを超える「追加性」のあるプロジェクトにのみクレジットを付与する仕組みだ。さらに、プロジェクトの検証を担当する独立監査機関4社を新たに認定した。監理団体は10月29~30日にオンライン会合を開き、パリ協定クレジットメカニズムで初の方法論を採択する予定だ。11月のCOP30では、各国が監理団体の年次報告を検討し、メカニズムの運用に関する追加指針を提供する見通しだ。今回の合意は、国際炭素市場の信頼性向上と持続可能な開発への貢献を目指す世界的な取り組みの一環として、市場メカニズムの実効性を高める重要な前進といえる。
【参照記事】Rules for managing emission reversal risks agreed by UN Body

HEDGE GUIDE編集部 ESG・インパクト投資チーム

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