米国の再生可能燃料企業Gevoはサウスダコタ州レークプレストンで計画する持続可能な航空燃料(SAF)プロジェクトについて、米エネルギー省から受けている14億6,000万ドルの融資保証の条件付き承認期限が2026年4月16日まで延長されたと発表した。10月15日付でロイター通信が報じた。
同省の融資プログラムオフィスが承認したこの延長により、プロジェクト範囲の変更可能性を評価する時間を確保。検討中の修正案には、ノースダコタ州の既存エタノール・炭素回収施設における年産3,000万ガロンのジェット燃料製造設備「ATJ-30」の建設が含まれ、より低コストでの施設展開を目指している。
航空業界の脱炭素化が世界的な急務となる中、SAFは化石燃料由来のジェット燃料と比較して最大80%の温室効果ガス削減が可能とされる。国際航空運送協会(IATA)の試算では、2050年の航空業界ネットゼロ達成にはSAFが全体の65%を占める必要がある。米国ではバイデン政権が2030年までに年間30億ガロンのSAF生産目標を掲げ、インフレ削減法(IRA)による1ガロンあたり最大1.75ドルの税額控除などで国内生産を後押し。日本でも2030年に国内航空燃料の10%をSAFに置き換える目標が設定されており、国際的なサプライチェーン構築が加速している。
Gevoが検討する計画変更の核心は、既存インフラの活用による投資効率の最大化にある。ノースダコタ州の施設では、エタノール生産と炭素回収技術がすでに稼働中で、これらを基盤にSAF製造設備を追加することで初期投資を大幅に削減できる見込み。年産3,000万ガロンという生産規模は当初計画より小規模だが、段階的拡張が可能な設計により市場需要に応じた柔軟な対応が可能となる。建設資材価格の高騰や熟練労働者不足といった課題に直面する中、既存施設の活用は現実的な選択肢として業界から注目されている。
競合他社の動向を見ると、フィンランドのNesteが2025年までに年産150万トンの生産体制構築を進め、米World Energyはカリフォルニア州パラマウント工場で日産34万ガロンの生産を実現。日本企業では、ENEOSが2027年度に年産40万キロリットル、出光興産が2030年に年産50万キロリットルの供給を計画。原料調達面では、廃食油や動物性油脂の確保競争が激化しており、Gevoのようにエタノールからの転換技術(Alcohol-to-Jet)を用いる企業は、原料の多様化という観点から戦略的優位性を持つ。
今回の融資保証延長は、SAF産業が直面する技術的・経済的課題を克服するための現実的アプローチを示している。建設コストの最適化と既存インフラの有効活用により、持続可能な事業モデルの構築を目指すGevoの戦略は、業界全体にとって重要な先例となる可能性が高い。
【参照記事】Gevo gets extension on US energy department’s loan commitment for sustainable aviation fuel project

HEDGE GUIDE編集部 ESG・インパクト投資チーム

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