WBCSDとUNEP、企業向け循環経済の世界初の国際評価基準を発表

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持続可能な発展のための世界経済人会議(WBCSD)と国連環境計画(UNEP)傘下のOne Planet Networkは11月11日、ブラジル・ベレンで開催中の国連気候変動枠組条約第30回締約国会議(COP30)において、企業向けサーキュラーエコノミー(循環経済)の国際フレームワーク「企業向けグローバル・サーキュラリティ・プロトコル(GCP)」を発表した。世界80以上の組織から150人以上の専門家が開発に参加した初めての科学的根拠に基づく循環経済の評価・報告基準であり、企業が循環経済への移行を加速するための標準的な指針となることが期待される。

GCPは、組織が循環性のパフォーマンスとその影響を測定・管理・開示するためのステップバイステップのアプローチを提供する。企業は素材の流れを追跡し、気候・自然・公正性・事業業績への影響を評価し、比較可能で意思決定に有用な情報として結果を開示できるようになる。主な特徴として、グローバルに標準化されたスコープ・指標・方法論の提供、GRI、ISO 59020、ESRS、IFRS S1/S2、GHGプロトコルなど既存のサステナビリティ報告基準との相互運用性の確保、そしてあらゆる規模・業種・地域の組織が素材・製品・事業レベルで活用できる柔軟な設計が挙げられる。WBCSDの循環型移行指標(CTI)方法論を基盤としており、企業は自社の出発点から3段階のレベルを通じて循環性の評価を段階的に深化できる。

WBCSDのピーター・バッカー会長兼CEOは「2030年に向けた中間地点において、野心と実行の間にはまだ大きなギャップがある。脱炭素化は加速しているが、資源消費と廃棄物は増加し続けており、気候と自然の両方の目標を損なっている。ネットゼロは循環経済なしには達成できない」とコメントした。2024年のGCP影響分析によると、GCPの広範な導入により2050年までに1200億トンの素材節約(現在の世界の年間消費量に相当)と、760億トンのCO2排出回避(現在の年間排出量の約1.5倍)が可能になると試算されている。また、2025年時点で世界の循環率はわずか6.9%にとどまっており、この数値の改善に向けた具体的な測定・管理手法の標準化が急務となっていた。

日本国内でも循環経済への移行は重要な政策課題となっている。日本政府は2024年12月27日に循環経済に関する関係閣僚会議を開催し、「循環経済への移行加速化パッケージ」を取りまとめた。再生材供給体制の構築、国内外の資源循環市場への関与強化、循環型ビジネスモデル確立への支援などが柱となっている。経団連の試算では、サーキュラーエコノミー関連ビジネスの市場規模は世界全体で2030年までに4.5兆ドルに達するとされ、日本でも2030年までに約80兆円規模への成長が目標として掲げられている。GCPのような国際標準の登場により、日本企業がグローバル市場で循環経済ビジネスを展開する際の評価・報告の基盤が整うことになる。

GCPバージョン1.0は今後の発展の出発点と位置付けられており、将来のバージョンでは適用範囲の拡大や財務・ESG報告フレームワークとのさらなる統合が予定されている。循環経済への移行を経営戦略の中核に据える企業にとって、本プロトコルは資源リスクの管理、サプライチェーンの強靭化、そして新たなビジネス機会の創出を支援する重要なツールとなることが見込まれる。

【参照記事】WBCSDとUNEP、企業向け循環経済の世界初の国際評価基準を発表

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