EU、2040年に温室効果ガス90%削減目標で合意

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欧州連合(EU)理事会は11月5日、2040年までに温室効果ガス(GHG)純排出量を1990年比で90%削減する拘束力のある中間目標を設定することで合意した。欧州気候法(ECL)の改正案として採択されたこの目標は、2050年の気候中立達成に向けた重要な一歩となる。デンマークのラース・オーガード気候・エネルギー・公益事業相は「科学的根拠に基づきながら、競争力と安全保障を両立させた目標」と評価した。

この合意は、欧州委員会が7月に提案した改正案をもとに、加盟国の多様な状況や産業競争力への配慮を反映して調整されたもの。理事会は90%削減目標そのものは維持しつつ、達成に向けた柔軟性を拡充した。具体的には、2036年以降に国際炭素クレジットを1990年のEU純排出量の最大5%まで活用可能とし、国内削減を85%に抑えられる仕組みを導入。2031年から2035年には試験期間を設ける。また、削減困難な残余排出に対しては、EU排出量取引制度(ETS)における国内の恒久的炭素除去の活用も認める。

欧州委員会の提案では、2030年以降の政策枠組みにおいて、産業競争力の強化や行政負担の軽減をより重視する方向性が示された。各セクターや手段の間での柔軟性を高め、加盟国が費用対効果の高い方法で目標を達成できるよう配慮している。技術中立的なアプローチでイノベーションと安全でスケーラブルな技術の展開を促進し、エネルギー効率を中心原則として維持する。さらに、再生可能エネルギー、エネルギー価格の手頃さ、送電網の近代化に焦点を当てたエネルギー安全保障の強化も盛り込まれた。理事会は、最新の科学的根拠、技術進歩、EUの国際競争力に基づいて中間目標への進捗を追跡する2年ごとの評価制度も導入し、必要に応じて委員会が気候法の改正を提案できるようにした。評価では、EU全体の純除去量の状況や産業競争力の変化、エネルギー価格の動向と産業・家計への影響も考慮される。

今回の合意では、建物・道路輸送向けEU排出量取引制度(ETS2)の適用開始を2027年から2028年に1年延期する条項も追加された。理事会は欧州議会が立場を採択次第、交渉を開始し、改正案の最終テキストで合意を目指す。欧州気候法は2021年に初めて採択され、パリ協定に沿ってEUの長期的な気候政策の法的基礎を提供しており、今回の2040年目標の設定は、その実現に向けた具体的な道筋を示すものとして注目される。

【参照記事】2040 climate target: Council agrees its position on a 90% emissions reduction

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HEDGE GUIDE編集部 ESG・インパクト投資チーム

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