高市早苗首相は11月4日、経済戦略本部の初会合を開き、半導体や人工知能(AI)、防衛など17の重要産業分野への戦略的公共投資を通じて、世界第4位の経済規模を持つ日本経済の再活性化を目指す方針を明らかにした。ロイター通信が報じた。この新たな政策司令塔は、岸田文雄前首相が掲げた「新しい資本主義」に代わる高市政権の経済政策の柱となる。
会合で高市首相は「責任ある積極的な財政政策の原則のもと、戦略的な財政支出を実行する」と述べ、「日本経済の供給構造を強化し、所得を増やし、消費者マインドを改善し、企業収益を向上させ、最終的には増税なしで税収を増やすことが目標だ」と説明した。政府はまだ具体的な資金計画や投資規模を明らかにしていないが、17の産業分野を指定し、AI、半導体、造船、航空宇宙、防衛などが含まれる。同本部には民間専門家を含む諮問委員会も設置され、リフレ政策の著名な支持者であるクレディ・アグリコル銀行の会田卓司チーフエコノミストや元日本銀行審議委員の片岡剛士氏(現PwCコンサルティング・チーフエコノミスト)ら12人の専門家が任命された。
日本では近年、経済安全保障の観点から半導体や先端技術への投資が重視されている。政府は2021年に台湾の半導体大手TSMCの熊本工場誘致に数千億円規模の補助金を提供するなど、半導体産業の国内回帰を積極的に支援してきた。また、防衛費についても、政府は2027年度までにGDP比2%へ引き上げる方針を示しており、今回指定された産業分野の多くは、この経済安全保障戦略と密接に関連している。高市政権の新たな経済戦略は、こうした流れを一層加速させるものと見られる。
高市首相は指定分野の担当閣僚に対し、投資内容、時期、目標額を明記した官民共同の投資ロードマップの策定を指示した。このロードマップに基づき、政府は来年夏までに新たな成長戦略をまとめる予定だ。賃上げによる成長と分配の好循環を目指した岸田前政権の「新しい資本主義」から、ターゲットを絞った戦略投資による産業基盤強化へと経済政策の軸足を移す今回の取り組みが、日本経済の構造的課題にどこまで応えられるかが注目される。
【参照記事】Japan PM Takaichi launches economic HQ, gears up public investments
HEDGE GUIDE編集部 ESG・インパクト投資チーム
最新記事 by HEDGE GUIDE編集部 ESG・インパクト投資チーム (全て見る)
- 高市首相、経済戦略本部を始動—半導体など17分野に重点投資 - 2025年11月7日
- EU、2040年に温室効果ガス90%削減目標で合意 - 2025年11月7日
- 欧州投銀とイベルドローラ、バルト海洋上風力に5億ユーロ融資 - 2025年11月5日
- インド最大の農業廃棄物発電事業者が年内最大規模のグリーンエネルギーIPOを計画 - 2025年11月5日
- 金融庁、サステナビリティ保証制度の詳細案を公表 国際基準に整合した保証業務実施者の登録制度を提案 - 2025年11月4日























