米エネルギー省、中西部送電網に16億ドル融資保証

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AP通信によると、米エネルギー省は10月16日、国内大手電力会社アメリカン・エレクトリック・パワー(AEP、本社オハイオ州)の子会社に対し、中西部5州で約5千マイルに及ぶ送電線のアップグレード事業に16億ドルの融資保証を決定した。データセンターや人工知能による急増する電力需要に対応するため、送電網の信頼性と容量を強化する狙いがある。AEPは石炭、天然ガス、原子力を主力とし、風力や水力などの再生可能エネルギーも利用する11州で560万人の顧客を抱える国内最大級の電力会社である。

この融資保証は、トランプ政権が今夏の税制・歳出法で創設した「エネルギー・ドミナンス・ファイナンシング・プログラム」の下で承認された初の案件となった。同政権は今月初め、昨年の大統領選挙で民主党ハリス候補に投票した16州の76億ドル相当のクリーン・エネルギー・プロジェクト223件を中止しており、化石燃料重視の姿勢を一層鮮明にしている。カリフォルニア州のクリーン水素燃料開発プロジェクトへの最大12億ドルなどが含まれる。

AEPトランスミッションは、インディアナ、ミシガン、オハイオ、オクラホマ、ウェストバージニアの5州で、既存の送電線を高容量の新型送電線に置き換える。最大の更新規模となるオハイオ州では150万人に供給する2千マイル超の送電線が対象となる。インディアナとミシガンでは60万人に供給する1,400マイル超、オクラホマでは120万人に供給する1,400マイル、ウェストバージニアでは46万人に供給する26マイルの送電線が更新される。プロジェクトは計約1,100人の建設雇用を創出する見込みだ。

クリス・ライト・エネルギー長官は声明で「大統領は明確にしている。米国は過去の政権のエネルギー削減政策から方向転換し、電力網を強化しなければならない」と述べた。IEA(国際エネルギー機関)の2024年1月の報告によれば、世界のデータセンターの消費電力量は2022年の460テラワットから2026年には1,000テラワットを超えると予測されており、特に生成AIによる電力需要増加が著しい。一方でライト長官は7月、中西部から東部へ太陽光・風力発電を送電する予定だった「グレインベルト・エクスプレス」への49億ドルの連邦融資保証を取り消している。民間開発者が進めるべき商業プロジェクトであり、厳格な財務条件を満たせないとの判断を理由に挙げた。

トランプ大統領とライト長官は風力や太陽光エネルギーを信頼性に欠けると繰り返し批判し、気候変動対策のための化石燃料からの転換に反対する姿勢を示してきた。今回の融資保証について、ライト長官はバイデン前政権下で条件付き承認されていたことを認めつつ、「すべてのプロジェクトがナンセンスだったわけではない」と述べ、送電アップグレードを進める考えを明らかにした。プログラムを通じて融資を受ける電力会社は、財務的恩恵を顧客に還元する保証を政府に提供する必要があるとエネルギー省は説明している。この政策は、電力網の強化と再生可能エネルギーへの投資のバランスを巡る議論が続く中で、トランプ政権のエネルギー政策の方向性を改めて示すものとなった。

【参照記事】Energy Department offers $1.6 billion loan guarantee to upgrade transmission lines across Midwest

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HEDGE GUIDE編集部 ESG・インパクト投資チーム

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