ロイターが10月8日に報じたところによると、世界最大の食品企業ネスレが同日、酪農分野におけるメタン排出削減を目指す国際連盟「酪農メタン行動連盟(Dairy Methane Action Alliance)」からの脱退を発表した。同連盟は2023年12月に発足し、ダノンやクラフト・ハインツ、スターバックスなど大手企業が参加。メンバー企業は酪農サプライチェーンから排出されるメタン量の測定・開示と、その削減計画の公表を約束していた。
ネスレは脱退理由を明らかにしていないが、「サプライチェーン全体でのメタンを含む温室効果ガス排出削減に引き続き取り組む」とし、2050年までのネットゼロ達成目標は維持すると表明した。同社によると、2024年末時点でメタン排出量を2018年比で約21%削減したという。10月9日には世界農民機構(World Farmers’ Organisation)と提携し、気候変動に対する食料システムの強靭性向上に取り組むと発表している。
今回の脱退は、気候変動対策に向けた企業連盟が相次ぎ打撃を受けている現状を浮き彫りにした。米トランプ政権による気候保護政策の解体を背景に、複数の大手銀行が金融セクターにおける炭素排出削減の主要グループから離脱している。メタンは米国環境保護庁によると二酸化炭素の約30倍の温室効果があり、地球温暖化抑制の重要な焦点となっている。環境保護基金(EDF)によれば、農業は人為的なメタン排出の約40%を占め、その大半は畜産に起因する。
連盟を運営するEDFは「ネスレは外部パートナーシップの見直しプロセスの中で脱退を決定した」と説明。食品・森林担当シニアディレクターのケイティ・アンダーソン氏は「ネスレが酪農気候計画とネットゼロロードマップを通じて酪農排出への取り組みを継続していることに感謝する」とコメントした。企業による自主的な気候変動対策が政治的・経済的圧力により揺らぐ中、実効性のある排出削減への道筋が問われている。
【参照記事】Nestle quits global alliance on reducing dairy methane emissions
HEDGE GUIDE編集部 ESG・インパクト投資チーム
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