株式投資デビューをする時は、不明点が様々に出て迷うことも多いでしょう。株を売買する際の注文方法や、株の具体的な値段を表す板情報の読み方も、最初は専門用語が多く分かりにくいものです。
そこで、この記事では株式投資初心者の方に向けて、注文方法と板の読み方の基本をわかりやすく解説していきます。
目次
1.株の注文方法
証券取引所に上場している株式の売買注文は、証券会社を通して取引所に集められ価格が形成されます。株式を売ったり買ったりする場合の基本的な注文方法には、成行(なりゆき)と指値(さしね)があります。これらを状況に応じて使い分けることが重要です。
東京証券取引所(東証)の取引時間は午前9時から11時30分、12時30分から15時までで、土日・祝日は休場(お休み)です。午前9時から11時30分までを前場(ぜんば)、12時30分から15時までを後場(ごば)といいます。なお市場が閉まっている時間帯でも注文することはできます。米国株など海外株式の注文については、証券会社により扱いが異なります。
1-1.成行(なりゆき)
成行とは、株価にこだわらずに売買する際に用いる注文方法です。メリットは一部の例外を除き発注した時点で約定(取引が成立)すること、デメリットは売りと買いの価格差が大きい場合、約定価格が低く/高くなるということです。
成行注文を出す場合は、板(いた)を確かめてから発注するようにしましょう。板とは価格ごとの買い注文と売り注文を表示している表をいいます(後述)。特に、値がさ株(株価が5,000円以上の単価が高い銘柄)の場合は想定していた約定価格と離れた値段が付くことがあるため、発注前に板を確認する必要があります。
1-2.指値(さしね)
指値とは、ある特定の価格で株式を購入(売却)したい場合に用いる注文方法です。価格を決めて株を購入する場合に、あらかじめ必要金額を計算できる点がメリットです。デメリットは、市場での取引価格と離れた水準で指値を入れた場合、約定までに時間がかかったり、約定できなかったりすることです。
取引時間帯に注文する際には、成行より指値が無難です。成行の場合、板にあったはずの注文が突然キャンセルになってしまい、思った値段で取引できないことがあるからです。自分が思ったよりも不利な約定価格になってしまい、マイナスの影響を被る可能性もあるということです。
2.板(いた)とは
板とは、個別銘柄の価格ごとの買い注文と売り注文を表示している表をいいます。投資家達がその銘柄に対し注文している買い希望株数や売り希望株数が一目でわかります。板をみることで注目度や株価の方向性を推測できるため、先手を打つことができます。
では具体的に、寄付き前(市場が始まる前)と、その後の板を見てみましょう。下の表は、寄付き前と寄付き後の板を示しています。寄付き前は、まだ値段が成立していない状況です。東証は午前9時に開きますので、それ以前の個別銘柄の注文状況を表しています。
2-1.板の読み方
寄付きの価格は、「板寄せ方式」と言う方法で求めることができます。以下の例で始値を求めてみましょう。日本での板には上表のように、価格(気配値)を中心に、左が売り、右が買いの注文株数がでています。
- 成行の買いと売りの差額を計算
上表のケースでは買いの30,000株に対し、売りが25,000株と、買いが売りを5,000株上回っています。 - 成行5,000株が同値で約定することができる水準を求める
売りは7,445円に200株、7,447円に2,500株、7,448円に3,500株が確認できます。5,000株の買いは、売値の安い価格から優先され順に高い価格を見ていきます。これを「価格優先の原則」といいます。まず、7,445円の200株の売りが出ているので、残りが4,800株です。次に7,447円の2,500株が出ているので、残りは2,300株(4,800株-2,500株)です。2,300株については7,448円の3,500株から2,300株が取引され、1,200株が売れ残ります。 - 結果:寄付きの価格は7,448円(7,445円や7,447円の売り注文も全て)です。寄付き直後の板は7,448円ヤリ(売り)1,200株、7,446円買い15,000株となります。
寄付き後に成行100株を買うと価格は7,448円、100株を売れば7,446円が約定価格となります。成行5,000株の買い注文が入った場合は7,449円で1,200株、7,449円で2,000株、7,450円で残りの1,800株というように約定価格がばらばらになります。
2-2.値幅制限
人気が高いIPO株(新規上場銘柄)などの場合は、買いが集中するため値段がその日のうちにつかないものもあります。それぞれの株価の価格帯によって、一日に変動する変動幅(制限値幅)が証券取引所によって決められているためです。
例えば現在、株価が1,000円の銘柄なら変動幅は上下300円、株価が5,000円なら上下1,000円という具合です。値幅いっぱいまで株価が上昇するとストップ高、下落するとストップ安と呼ばれる状態になります。企業の不祥事や想定外の好決算やニュースなどの要因で、場合によっては連日、ストップ高・ストップ安になることがあります。
なお外国株の場合は、米国のように値幅制限がない国もあるので、成行注文には注意する必要があります。急激に板状況が変化した場合、非常に不利な値段で約定してしまい、その後のリカバリーが難しくなるリスクがあるためです。
まとめ
株式投資を始めたての頃は、注文方法や板の見方にもわからない部分が様々に出てくるかと思います。まずは基本を押さえてから、実際に少しずつ取引を行ってみることで慣れていきましょう。
株初心者のための投資ガイド
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藤井 理
大学を卒業後、証券会社のトレーディング部門に配属。転換社債は国内、国外の国債や社債、仕組み債の組成等を経験。その後、クレジット関連のストラテジストとして債券、クレジットを中心に機関投資家向けにレポートを配信。証券アナリスト協会検定会員、国際公認投資アナリスト、AFP、内部管理責任者。
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