株価に影響を与える、金融政策・人口構造・GDPとは?概要と歴史、日本市況

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株価は様々な要因で変動しますが、中でも主な要素として、その国の金融政策、人口構造、国内総生産(GDP)が大きく影響を及ぼします。今回は、それぞれについて詳しく解説します。

目次

  1. 中央銀行の政策
    1-1.1980年代の日本
    1-2.新型コロナと金融政策
  2. 人口構造と株価
  3. 国内総生産(GDP)と株価
  4. まとめ

1 中央銀行の金融政策

株で損をしないためには、中央銀行の金融政策を理解する必要があります。中央銀行の金融政策は、物価と金融システムの安定化を目的としており、日本では日本銀行がその役割を果たしています。中央銀行の金融政策が理解できると、株式市場の大きな流れが予想できます。

現在、BOJ(日本銀行)、FRB(米国の中央銀行)、ECB(欧州の中央銀行)は、2020年に世界中に広がった新型コロナの影響による経済失速を回避するため、大量の資金を市場に供給しています。こうした供給資金が株式市場に流入したことで、株価が押し上げられています。

このように、中央銀行の金融政策は株価に影響を与えます。状況次第では大きな影響を与えることもあります。1980年代の日本の株式市場は、金融政策により天国と地獄をみました。そこで、当時の日本経済と日本銀行の金融政策を例として金融政策が株価に与えた影響をみてみましょう。

1-1 1980年代の日本

1980年代のアメリカは貿易赤字に苦しんでいました。過度なドル高是正のため、1985年9月にニューヨークのプラザホテルで開かれたG5において、為替レートの安定化に関する合意、いわゆる“プラザ合意”が発表されました。この合意の後、円高が急激に進み、1ドル約240円だった円は翌年1月に200円を割り込み、1年後には150円台をつけました。円高により日本の輸出企業は大打撃を受け、日本経済は円高不況に突入しました。

こうした状況を受け、日本銀行は景気対策として当時5%だった公定歩合(こうていぶあい=日本銀行が民間の金融機関に資金を貸し出す際の基準金利)を数回にわたり2.5%まで引き下げ、市場に資金を供給しました。この緩和マネーが株式市場や不動産に流れ、日本経済はバブルに突入。当時、東京23区全部の地価とアメリカ全土の地価が同じ価格と言われるほど、不動産価格が上昇しました。一方、株式市場では、NTTのIPOが大成功したこともあり、空前の株式ブームが起きました。

加熱しすぎた景気を抑えるために、1989年6月に日本銀行は金融政策を引き締め策に転換し、公定歩合を2.5%から3.25%に引き上げ、12月末には4.25%に引き上げました。短期間に大幅に利上げしたことで株価が下落に転じました。日経平均株価指数は、1989年12月末に史上最高値3万8,957円を付けたのち下落に転じ、1990年末には2万4,000円を下回ってしまいました。

株が売られた理由の一つとして、当時の大口定期預金(3ヵ月)の金利が6%以上の高い水準にあったことも挙げられます。当時、大口定期預金の下限額が1億円から段階的に1,000万円まで引き下げられました。そのため、持っていた株式を売却し、株式から預金に資金を移動させた人が多くいました。

株価が下落し始めたころ、地価は高い水準にありました。そのため、政府が土地関連融資の総量規制をしました。総量規制による銀行の不動産融資の制限に加え、金融引き締め策による金利上昇、不動産の短期売買の税率引き上げなどもあり、地価が下落し始め、バブルが終焉を迎えました。バブル崩壊後の日本経済は停滞が続き、のちに「失われた20年」と呼ばれる時代が始まりました。

1-2 新型コロナと金融政策

2019年12月に中国湖北省武漢市で発生した新型コロナウィルス感染症は、世界中に広がっていきました。世界各国でロック・ダウンにより人の移動や物流が制限され、経済が止まってしまいました。特に、航空各社や旅行関連企業の売上が激減。世界中で株式市場が下落しました。

コロナによる経済停滞を抑えるため、世界各国の中央銀行は政策金利を引き下げたり、債券を市場から購入したりするなどし、市場に資金を供給しています。この資金が株式市場に流れ、米国ではダウやS&P500などが、欧州ではドイツDAX指数などが史上最高値を更新。日本や欧州の国債金利はマイナス水準に低下しました。

世界各地でワクチン接種が始まり接種率が高まるにつれ、市場ではFRBなど各国の中央銀行が量的緩和縮小(テーパリング)の開始時期への関心も高まってきています。それは、金融政策の転換が株価に影響を与えるためです。

2 人口構造と株価

人口構造の変化も株価に影響を与える要因の一つです。経済成長を後押しする生産年齢人口が多い状態であれば、経済が成長し株価も上昇する可能性が高いと言えます。日本は人口減少と高齢化が進んでいます。

日本の人口は、2011年4月に約1.28億人でしたが、2021年5月には1.25億人にまで減少しました。平均寿命は過去最高を更新しており、2011年には女性85.90歳、男性9.44歳でしたが、2019年には女性87.45歳、男性81.41歳となっています。日本の中央年齢は45.9歳で世界ランキング1位です。米国と中国は37.4歳です。

日本は人口減少下で平均寿命が伸びているため、中央年齢が上昇しています。高齢化を迎える国の消費は抑えられる傾向があるため、このような国の株式市場は長期的には魅力的ではありません。

3 国内総生産(GDP)と株価

国内総生産(GDP)とは、一定の期間に国内で新たに生み出されたモノやサービスの価値の合計金額のことです。GDPには名目GDPと実質GDPの2種類があり、名目GDPはその時の市場価格でGDPを評価したものです。この名目GDPと株式時価総額を比較することで、株式市場が割高か割安かを判断することができます。

各国の株式時価総額と名目GDPの比率が1以上の場合は割高、下回れば割安と解釈され、著名投資家のウォーレン・バフェット氏がこの指数を重視しているため、バフェット指数とも呼ばれています。

まとめ

株価は、相対的なものであり、絶対的なものではありません。仮に市場のPERが15倍とすると、ある銘柄のPERが10倍なら割安、20倍なら割高という評価になります。

株式市場は、流動性が高く、大きな資金を受け入れることができるため、資金量により株価全体の水準が決まります。市場の資金量を調整する役割を持つ中央銀行の金融政策によって、株価の水準が大きく変化することがあります。中央銀行は、景気が悪化している時には市場に資金を供給することで株式市場などを活性化させ、景気の回復を後押しします。

しかしながら、資金を供給し続けると物価が上昇し、悪いインフレに繋がります。物価が上昇すると、中央銀行は物価上昇を抑えるために金融引き締め政策をとり、インフレを抑える行動にでます。

企業の業績も株価の重要要素ですが、中央銀行の金融政策が株価に与える影響の方がより大きいと言えます。株価の動向を占う上では、中央銀行の金融政策を注視する必要があります。

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藤井 理

大学3年から株式投資を始め、投資歴は35年以上。スタンスは割安銘柄の長期投資。目先の利益は追わず企業成長ともに株価の上昇を楽しむ投資スタイル。保有株には30倍に成長した銘柄も。
大学を卒業後、証券会社のトレーディング部門に配属。転換社債は国内、国外の国債や社債、仕組み債の組成等を経験。その後、クレジット関連のストラテジストとして債券、クレジットを中心に機関投資家向けにレポートを配信。証券アナリスト協会検定会員、国際公認投資アナリスト、AFP、内部管理責任者。