10年後はインドとアメリカの2強になる!?投資のプロが中国との違いも解説

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10年後の世界経済は、中国経済が停滞するなか、インドとアメリカの2強になっている可能性が高いでしょう。

モディ首相は2036年夏季五輪の誘致を目指しており、「36年の五輪開催に向けて、あらゆる手を尽くす」と公言しています。2028年のロサンゼルス五輪にインドの国技とも言えるクリケットが採用されたことを機に、インドの五輪開催の可能性が高まっています。10年後のインドは五輪を目前に控え、いたるところでインフラ整備や建設ラッシュが起きていることでしょう。

参照:ブルームバーグ「インド、2036年の夏季五輪招致目指す-モディ首相

本稿では、投資のプロである筆者が、10年後の世界経済を予想します。インド経済についても解説するので、是非参考にしてみてください。
※本記事は2024年6月19日時点の情報です。最新の情報についてはご自身でもよくお調べください。
※本記事は投資家への情報提供を目的としており、特定商品・ファンドへの投資を勧誘するものではございません。投資に関する決定は、利用者ご自身のご判断において行われますようお願い致します。


目次

  1. 10年後の世界経済
  2. インド躍進の理由
    2-1.政治が安定
    2-2.人口構造
    2-3.所得が増加傾向
    2-4.言語と地理
    2-5.白物家電・自動車の普及
  3. 10年後のインド経済
  4. まとめ

1.10年後の世界経済

10年後の世界は、米国経済が安定的に成長し、インド経済は躍進する一方で、中国経済は超高齢化社会、人口減少などを背景に衰退していることが予想されます。10年後の世界経済は、インドとアメリカの2強となっていることが予想されます。

2.インド躍進、中国衰退の理由

インド経済の躍進の背景には様々な理由があります。ここでは、中国とインドを比較し、インド躍進の理由を解説します。

2-1.政治が安定

中国の最大リスクは政治リスクです。一般的に、憲法は国を規制しますが、中国共産党は憲法や国家の上にあるので憲法により規制されません。中国共産党の首席による国家運営が直接、法律改正につながります。

2023年の反スパイ法が改正され、外国企業の経営幹部や社員が拘束される事例が相次いでいます。こうした政治リスクの高まりから中国本土や香港からの撤退を進める海外企業が増加しています。海外企業撤退に伴い、若者を中心に失業率が上昇し、経済問題に発展しています。

一方、インドでは第3期モディ政権が発足しました。今回の選挙では、野党の躍進が目立ち、モディ首相が率いる与党は議会で単独過半数を失い、かろうじて与党連合で過半数を確保しました。

野党躍進の背景の一つには、モディ政権が進めるイスラム教徒への弾圧が挙げられます。この選挙結果で、イスラム教徒への弾圧が収まることを国民が期待しています。

2-2.人口構造

平均年齢は中国が38歳に対しインドが31.1歳です。中国では1980年以降の一人っ子政策を背景に高齢化が進んでいます。中国国家衛生健康員会が発表では、2021年時点で総人口に占める60歳以上の割合は約19%、2035年には30%を超えるとしました。

一方、インドの人口は増加傾向にあり、2023年には総人口が中国を上回ると予想されています。インドの人口の6割以上が35歳以下で、生産年齢人口(15歳~64歳)の増加は2050年まで続くとされています。こうしたインドの人口構造が、インド経済の原動力を担っていると言えそうです。

参照:ジェトロ「2035年前後に60歳以上の高齢者比率が30%超え

2-3.所得が増加傾向

インドでは所得が上昇傾向にあります。特に、低所得者層と中間所得層の世帯収入の増加が鮮明です。Empowering people with dataによると、2021年から2023年にかけての世帯収入の上昇率は、低所得者層が75.3%、下位中間所得者層が52.3%、中間所得者層が31.6%、上位中間所得者層は25.6%です。一方、高所得者層の所得上昇率は9.6%でした。

インドでの中間所得者層(可処分所得推移5,000ドル~35,000ドル)は、2020年時点で53%を占め、2030年には70%台に達すると予想されています。中間所得者層の増加は消費拡大に繋がるため、経済成長を牽引するエネルギーとなります。

参照:AAIC「大きな成長ポテンシャルを取り込む! 「アジアの大国インドの近年の動向」

2-4.言語と地理

インドでは英語を公用語のひとつとしており、英語を話せる人が多い国です。英語力を示すEF EPI英語能力指数ランキングでは、インドが60位(2023年)と、中国の82位を大きく上回っています。

参照:EF「EF 英語能力指数

インドでは、米国企業とのタイアップが進んでいます。IT人材が豊富なインドは、アメリカのシリコンバレーと協働でソフトウエア開発をするのに適しています。インドとシリコンバレーとの時差が12時間で、シリコンバレーで開発されているソフトウエアを、その日の夕方にインドに送れば、ビジネスタイムを迎えたインドで開発を継続できます。また、米国企業がインドにコールセンターを置くことで、24時間顧客対応ができるようになります。

2-5.白物家電・自動車の普及

インドでの白物家電の普及率は低く、冷蔵庫の普及率が約33%、エアコンが4.5%、洗濯機は13%と言われています。経済成長とともに所得が上昇しており、白物家電の販売が増加傾向にあります。

参照:Mordor「インドの主要家電市場規模と市場規模株式分析

空調機器大手のダイキンの、2023年度のインドにおける売上高は、前年比120%増と好調でした。日本冷凍空調工業会によると、2020年に457万台だったインドの家庭用エアコン市場は、2022年には765万台と、2年で約67%成長しました。インドでは最高気温が40度を上回る地域もあり、所得の増加とともに、エアコンの普及率は高まることでしょう。

参照:ダイキン「2024年3月期決算説明資料

白物家電ばかりでなく、自動車販売も好調です。インド国内での2023年新車販売台数は22年比8.4%増の421万台でした。インドでの自動車保有率は8.5%と低く、経済成長や所得向上を背景に、自動車保有率も拡大することが見込まれます。

参照:ジェトロ「2024年3月の部門別自動車の国内販売台数

3.10年後のインド経済

10年後の2034年のインドでは、2036年開催される夏季五輪の建設ラッシュが起きているでしょう。インドの国技とも言われるクリケットが2028年夏のロサンゼルスオリンピックに採用されることが決まりました。クリケットが採用されたことで五輪誘致への熱が一層高まっています。

ムンバイには13.2万人収容可能な世界最大のクリケット・スタジアムが整備されており、インディアン・プレミアリーグなどの試合会場となっています。また、クリケット・ワールドカップの試合会場として使用された経緯があります。

鉄道や道路などインフラ整備も整備されていることでしょう。ムンバイ等の大都市では、交通渋滞が慢性化しており、タクシーなどで5キロ移動するのに1時間もかかる場合があります。歩道も整備されていない場所が多く、歩くにも難があります。

五輪開催前には、デリーとムンバイなどの大都市間を結ぶ高速鉄道網も整備されていることでしょう。交通インフラが整備されれば、より快適に目的地に着けるようになります。

GDPでみると、2020年台後半には日本やドイツを上回り世界第3位の経済大国になると見込まれています。インドの人口ボーナス期*は2040年代後半まで続くため、経済発展は続き、2023年時点で2,500ドルだった一人当たりGDPは、5,000ドルまで拡大している可能性があります。

*人口ボーナス期:生産年齢人口(15歳~64歳)が非生産年齢人口(15歳未満及び65歳以上)の2倍以上となる期間

4.まとめ

中国の経済停滞が予想されるなか、10年後のインド経済は躍進している可能性があります。2036年に開催される夏季五輪を控えたインドでは、交通インフラの整備が進み、都市間の移動がより快適にできるようになっていることでしょう。

経済成長が続いているため、一人当たりGDPは約2倍の5,000ドルに拡大しています。可処分所得の増加で、白物家電や自動車の普及率が高まる可能性があります。インド経済が躍進するため10年後はアメリカとインドの2強が世界経済のけん引役となっていることでしょう。

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藤井 理

大学3年から株式投資を始め、投資歴は35年以上。スタンスは割安銘柄の長期投資。目先の利益は追わず企業成長ともに株価の上昇を楽しむ投資スタイル。保有株には30倍に成長した銘柄も。
大学を卒業後、証券会社のトレーディング部門に配属。転換社債は国内、国外の国債や社債、仕組み債の組成等を経験。その後、クレジット関連のストラテジストとして債券、クレジットを中心に機関投資家向けにレポートを配信。証券アナリスト協会検定会員、国際公認投資アナリスト、AFP、内部管理責任者。