株式市場には、複数の株式をまとめた株式指数というものがあります。指数の動きが株式市場を代表した動きとされ、報道でよく取り上げられています。代表的な指数は、日本では日経平均株価(日経225)やTOPIX、マザーズ指数、米国ではダウ平均やS&P500、ナスダック総合指数が挙げられます。
あまり知られていませんが、指数にはダウ・ジョーンズ式(ダウ式)と時価総額方式の2つがあり、日経平均株価やダウ平均がダウ方式、TOPIXやマザーズ指数、S&P500、ナスダック総合指数が時価総額方式です。
「木を見て森を見ず」ということわざがあるように、個別株にこだわりすぎると、大きな資金の流れを見失ってしまうことがあります。便利な指数ですが、指数には悪い点もあります。そこで今回は日本の代表指数である日経平均株価とTOPIXの算出方法や問題点について解説します。
目次
- 指数の算出方式
1-1.ダウ・ジョーンズ方式
1-2.時価総額方式 - 日経平均株価
2-1.日経平均株価を求める
2-2.日経平均株価の問題点 - TOPIX
3-1.TOPIXを求める
3-2.TOPIXの問題点 - まとめ
1.指数の算出方式
指数とはどのように価格が算出されるものなのでしょうか。以下から見ていきます。
1-1.ダウ・ジョーンズ方式
ダウ・ジョーンズ方式とは米国のダウ・ジョーンズ社(経済新聞社)が1884年7月に11銘柄の単純算術平均株価を発表したことが始まりです。単純算術平均とは、11銘柄の株価の合計を11で割った平均値です。しかし、指数の継続性を維持するため、株式の分割や統合等を指数に反映させる必要があります。そのため、除数を用いて各銘柄の株価を修正し、その合計の平均値が指数となります。
除数を以下の簡単な例で求めてみます。
A社の株価が2,000円、B社が700円、C社が1,500円の時、平均値は1,400円です。A社が株式を2分割し、A社株が2株になったので、株価は1,000円に下落します。しかし、この下落はあくまで分割に伴う株価の調整です。
分割後の平均株価は1,066.67円((1,000円+700円+1,500円)÷3))です。この値と分割前の平均値1,400円が等しくなる指数を求めます。計算式は1,400円=1,066.67Xです。この結果、除数は1.3125となります。このように除数は分割や統合等の都度、修正されます。
項目 | A | B | C | 平均値 |
---|---|---|---|---|
分割前株価 | ¥2,000 | ¥700 | ¥1,500 | ¥1,400.00 |
分割後株価 | ¥1,000 | ¥700 | ¥1,500 | ¥1,066.67 |
除数 | 1.3125 |
1-2.時価総額方式
時価総額方式は、株価に株式数を乗じた指数で、基準時価総額に対する比較時の時価総額の比率を示しています。株式数については、基本的に上場株式数が用いられます。
計算式:時価総額方式=(比較時価総額÷基準時価総額)×100
ダウ・ジョーンズ方式と同様に、市場変動によらない時価総額の増減が発生した場合には連続性を維持するために基準時価総額が修正されます。修正される要因には有償増資、CBの転換、自社株買いなどが挙げられます。
2.日経平均株価
日経平均株価の求め方と問題点を解説します。
2-1.日経平均株価を求める
日経平均株価は日本を代表する225社の単純平均ですが、単に225銘柄の株価平均ではなく「みなし額面による調整」と「除数」により求められます。
現在は廃止されていますが、かつては株式には額面がありました。額面は企業によって異なり、多くは50円でしたが、なかには500円や5万円という銘柄もありました。指数を算出する場合、額面を50円として計算する「みなし額面」の方法が採用されています。なお、株式分割や株式合併に対し、指数算出に用いる株価の水準がその前後で変わらないように調整します。
例えばソフトバンクの4月末時点の株価は9,885円ですが、指数算出にあたり59,310円に修正されます。同社は2006年1月に1株を3株に、2019年6月に1株を2株に分割しました。2006年1月の分割以前に株式を保有していた投資家の株数は、現在6株(1株⇒2006年1月に3株⇒2019年6月時点で6株)です。そのため、指数算出にあたり株価を6倍した値が採用されます。
各銘柄のみなし額面については、日本取引所グループの用語集にある日経平均株価の日経平均プロフィルを参考にして下さい。
このように、他の224銘柄についても株価を額面調整後の値に変換し、225銘柄の合計を求めます。その値を除数で割ると、日経平均株価の値が求められます。指数算出当時から現在までに多くの会社が株式分割をしているため、現在の除数は27.769です。
2-2.日経平均株価の問題点
日経平均株価の問題点は、構成銘柄が225銘柄にも関わらず、構成比率が高い上位銘柄の動きで指数が大きく変動してしまうことです。
上位銘柄をみると、1位:ファーストリテイリングの11.21%、2位:ソフトバンクGの7.41%、3位が東京エレクトロンの6.03%、4位がファナックの3.14%、5位がダイキンの2.74%となっており、上位5銘柄で指数の約28%を占めています(2021年4月末時点)。そのため、株価の高い銘柄(値がさ株)の影響を受けやすい傾向があります。
3.TOPIX
TOPIXについても解説します。
3-1.TOPIXを求める
TOPIXは東京証券取引所の1部に上場している全ての株式時価総額(株価×上場株式数)が基準となり算出されます。2021年4月末時点の一部上場銘柄数は、2,191社です。これは上場銘柄数3,770社の58.11%に相当するため、市場の動きを代表する指数と言われています。
指数の計算式:(算出時の指数用時価総額÷基準時時価総額=1968年1月4日の時価総額)×100(基準値)
3-2.TOPIXの問題点
TOPIXの問題点は、指数の構成銘柄が多い点です。TOPIXは、年金基金や投資信託の運用など多額の資産を多くの銘柄に分散投資する際の連動指数として用いられています。また、TOPIX型のETF(上場投信)も上場し、機関投資家から個人投資家まで広く利用されています。巨額な資金がTOPIXをベンチマークとし運用されています。そのため、指数連動を目指す運用をしようとすると、流動性(上場株式数)が低い銘柄の価格に歪みが生じてしまう可能性があるのです。
このことから、2022年4月から指数構成銘柄の算出ルールが見直されることになりました。具体的には、時価総額が100億円未満の銘柄について、段階的に指数を算出する際のウエイトが引き下げられます。
まとめ
日本を代表する株式指数である日経平均株価とTOPIXを比較すると、値動きは日経平均株価の方が軽い(値動きが激しい)と言えます。それは、指数構成銘柄の上位銘柄の指数に対する影響が大きいためです。価格変動が大きいため、デリバティブ商品が組成されやすく、日経リンク債の指数に採用されるのはそのためです。
またTOPIX指数は、一部上場全銘柄の時価総額を元に算出されるため、日本の株式指数を代表する指数と言えます。
指数は投資を行うにあたって欠かさずチェックするものです。各指数の価格が決まる要因や特徴、問題点を把握し、個別銘柄やファンドを選ぶ際の参考に使ってみてください。
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藤井 理
大学を卒業後、証券会社のトレーディング部門に配属。転換社債は国内、国外の国債や社債、仕組み債の組成等を経験。その後、クレジット関連のストラテジストとして債券、クレジットを中心に機関投資家向けにレポートを配信。証券アナリスト協会検定会員、国際公認投資アナリスト、AFP、内部管理責任者。
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