外貨建て投資信託、為替リスクはどう考えればいい?為替のプロが解説

2021年3月現在、コロナショックから経済が回復するに伴って世界的に金利が上昇していますが、相変わらず日本の金利は低位安定しており、円預金ではなく他の資産で運用を考えている人が増えています。

その一つの選択肢として、高利回りの外貨建て資産が挙げられます。個人で良さそうな外貨建て資産を探して投資するとなるとハードルは高いものですが、投資信託であれば海外への投資は簡単です。

しかし、海外に投資する際には「為替リスク」に十分注意しなければいけません。外国の株式や債券で運用する投資信託には基本的に為替変動リスクがあるのですが、多くのファンド名称で「為替ヘッジあり」、「為替ヘッジなし」といった文言が含まれています。

今回は、このよく見聞きする「為替ヘッジ」について説明し、投資信託に内包されている為替リスクとその考え方について解説していきます。

目次

  1. 為替リスクとは
    1-1.為替リスクの具体例
  2. 為替ヘッジとは
    2-1.為替ヘッジの具体例
  3. 為替ヘッジコストとは
    3-1.ヘッジコストの具体例
  4. 為替リスクの考え方
  5. まとめ

1.為替リスクとは

為替相場は様々な要因が複雑に絡み合い、専門家でも予想が難しいといわれていますが、為替リスクとは、円と外国の為替相場の変動により、外貨建て資産の価値が変動する可能性のことをいいます。

例えば、海外投資では、自国の通貨を他国の通貨に替えて、そこから株式や債券を買い付けることになりますが、海外資産の価値を“円”で評価すると、仮に株式、債券の価格が変わっていなくても為替レートによって価値が上昇したり下落したりするという「変動」が生じます。投資の世界においてリスクとは、値上がり・値下がりを含めてリターンの変動のことを意味します。

では、海外に投資する投資信託を円で購入し、円建てで基準価額を公表している投資信託に為替リスクが存在しないのかというと、そうではありません。集まった円を使って、実際の運用はその国の通貨で行われていますので、為替リスクが発生することに変わりはありません。

たとえ、外貨建て資産価値が変わらなかったとしても、為替レートが購入時よりも円安になると、投資信託の基準価額の上昇要因になります。反対に、円高となると基準価額の下落要因となります。つまり、為替リスクは毎日の基準価額に内包されているのです。

1-1.為替リスクの具体例

ある純資産総額10,000円のファンドが、1ドル=100円の時に、米国の株式を100ドル分購入したケースを考えてみましょう。今回は、分かりやすくするために税金や手数料などは考慮していません。スタート時点でのファンドの基準価額は10,000円です。

その後、購入した米国株式の株価に変化はなかったものの、ドル高円安が進み、1ドル=120円になりました。すると、ドルベースでの資産価値は100ドルで変わらないものの、円換算すると、純資産総額は100ドル×120円=12,000円になり、基準価額は10,000×(12,000/10,000)=12,000円となります。投資した米国株式は値上がりしていないのに、基準価額は12,000円に上昇してしまいました。

反対に、ドル安円高が進み、1ドル=80円になったとします(同じく米国株式の株価は変わらない場合)。すると、円ベースでの純資産総額は100ドル×80円=8,000円ですから、基準価額は8,000円に減少します。

2.為替ヘッジとは

為替ヘッジとは、外国資産へ投資する場合に、外国為替の売予約や先物取引等を利用し、あらかじめ将来の通貨を交換するときの為替レートを約束しておくことによって為替の変動リスクをヘッジ(回避)する仕組みのことです。

具体的には、外国資産を買うということはその通貨をロングにしているということですから、為替ヘッジ付きということは、その通貨をショートにして為替のポジションを実質ゼロにしているということになります。

2-1.為替ヘッジの具体例

先ほどの米株投資ファンドの例の続きです。例えば、「○年後に、為替相場がどうなっていたとしても〇〇円で交換します」という為替予約のしくみを利用してあらかじめ「1年後に1ドル=100円で交換する」という約束をしておけば、円ベースでの資産は目減りしないで済む、これが為替ヘッジの基本的な考え方です。

ただ、1年後に80円と円高になっていた時にも100円で交換できるというメリットはありますが、円安が進んで120円になったとしても100円で交換しなければならず、本来海外資産に投資することで得られる為替差益メリットは享受できません。

3.為替ヘッジコストとは

ヘッジコストとは、ヘッジポジションを維持するのに掛かるコストのことです。為替ヘッジを行う通貨の金利と円金利の差で、米国ドル建ての資産に対して為替ヘッジを行う場合、基本的には日米の金利差相当分と需給要因から発生する上乗せ金利(ベーシス)を合わせたものがヘッジコストとなります。

そのため、投資先の政策金利が高ければ高いほど為替ヘッジコストは高くなり、運用成績を下げる要因となります。費用は直接的に支払うものではなく、信託財産から引かれるため、基準価額にマイナスの影響を与えます。

3-1.ヘッジコストの具体例

現在100円で購入したにもかかわらず、1年先も100円で売るという為替予約は結論から言うとできません。米ドルと円には金利差が存在しますし、仮に金利差が全くなかったとしても米ドルと円では人気度が違います。

たとえば為替が1ドル=100円だとして、1年の円金利が1%、米ドルの金利が3%だとします。100円は年率1%の利息が付いて、1年後101円になります。同じく1ドルは1年後に1.03ドルになります。そうすると現時点における1年先の為替レートの予約は101÷1.03≒98.06円となります。つまり、現在の為替レート100円と1年後の為替予約水準98.06円の差1ドル≒1.94円(約2%=日米金利差)分が為替ヘッジコストということになります。

加えて、為替ヘッジコストは、「外貨の短期⾦利と⽇本円の短期⾦利の差」以外の影響も受けます。各通貨の⾒通しや需給などの状況によって決まってくる外貨の調達に対する上乗せ⾦利(ベーシス)です。これら短期金利差とベーシスを合わせることで、為替ヘッジコストが算出されます。

4.為替リスクの考え方

一般的には「海外株式投資を行うときは為替リスクをヘッジしないほうがベター、海外債券投資を行うときは為替リスクをヘッジした方がベター」と考えられますが、株式の価格変動リスク、債券の価格変動リスク、為替リスクのそれぞれのリスクの大きさが理由です。

株式相場は日常的に大きく変動しており、海外株式投資のリスクにおける為替レート変動の寄与分が小さいことから、わざわざコストを払ってまでも為替リスクをヘッジする必要はないかもしれません。

一方、債券価格と為替レートでは短期の変動幅では為替レートの方が大きいため、資産価値が日常的に上がったり下がったりすることへの寄与分のほとんどが為替レートの変動となっていることから、為替リスクをヘッジする必要が出てきます。しかしこれは短期的には正しいのですが、長期投資の観点から考えてみると違った側面が見えてきます。

もし、ある程度金利が高いのであれば、長期投資になればなるほど、債券投資は利息が積み重なっていく一方で為替は変動が落ち着いていきますので、債券がもたらすインカム収益の資産価値への寄与度が徐々に上がっていくことになり、さほど為替リスクを気にする必要はなくなります。

まとめ

中銀が金融緩和を継続して短期金利を低く押さえつけている状況であれば、確かにヘッジコストは低くなります。しかし、この状況がいつまでも続くことはなく、中銀が利上げをスタートすると当然コストも高くなってきます。殆ど手元に残らなくてもリスクヘッジを取りたいのであれば為替ヘッジ付きが良いかもしれませんが、それではあえて外貨建て資産へ投資した意味が分からなくなってしまいます。

結局、考えるべきは投資対象資産の変動率と、為替の変動率を比較し、為替の変動率の方が低いのであれば、ヘッジを付けずに純粋に国の分散投資と考えればよいでしょう。

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HEDGE GUIDE 編集部 投資信託チーム

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