不動産売買の契約書、印紙税を減額する方法は?消費税の区分記載を解説

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不動産売買の契約書を作成すると、印紙税がかかります。契約価格が大きくなるとかかる印紙税も高くなるため、適正な方法によって減額できる部分は減額して少しでもキャッシュアウトを抑えたいところです。

本記事では、不動産売買の契約書の印紙税を減額する方法について、消費税等の区分記載をする方法を中心に、その他の方法についても解説していきます。

※記事内の税金・税率などは2021年9月時点の情報となります。最新の情報については、国税庁などのサイトをご確認のうえ、税理士など専門家へのご相談もご検討ください。

目次

  1. 不動産売買の契約書で必要な印紙税
    1-1.平成26年4月1日から令和4年3月31日までの軽減措置
    1-2.平成9年4月1日から平成26年3月31日までの印紙税
  2. 消費税額等が区分記載されていれば、印紙税を減額できる
    2-1.区分記載の方法と印紙税額軽減効果
  3. 印紙税を減額するその他の方法
    3-1.契約書のコピーを使用
    3-2.電子契約の利用
  4. まとめ

1.不動産売買の契約書で必要な印紙税

不動産売買の契約書を作成する際には、契約書に収入印紙を貼付して印紙税を納めることになります。この印紙税の金額は、不動産の契約価格に応じて決められており、契約価格が高くなるほど印紙税も高くなります。

1-1.平成26年4月1日から令和4年3月31日までの軽減措置

不動産の契約価格によって印紙税の金額は次のようになっています。平成26年4月1日から令和4年3月31日までに作成される、不動産売買の契約書の印紙税は、軽減措置により原則の半額となっています。

なお、建物の譲渡と土地の譲渡とが併せて記載されている契約書の場合、それらの契約価格の合計額に対応する印紙税がかかります。

契約価格 印紙税額
1万円未満 非課税
1万円超50万円以下 200円
50万円超100万円以下 500円
100万円超500万円以下 1,000円
500万円超1,000万円以下 5,000円
1,000万円超5,000万円以下 10,000円
5,000万円超1億円以下 30,000円
1億円超5億円以下 60,000円
5億円超10億円以下 160,000円
10億円超50億円以下 320,000円
50億円超 480,000円

※引用・国税庁「不動産の譲渡、建設工事の請負に関する契約書に係る印紙税の軽減措置

1-2.平成9年4月1日から平成26年3月31日までの印紙税

平成9年4月1日から平成26年3月31日までの印紙税と比較してみましょう。

契約価格 印紙税額
1万円未満 非課税
1万円超50万円以下 200円
10万円超50万円以下 400円
50万円超100万円以下 1,000円
100万円超500万円以下 2,000円
500万円超1,000万円以下 10,000円
1,000万円超5,000万円以下 15,000円
5,000万円超1億円以下 45,000円
1億円超5億円以下 80,000円
5億円超10億円以下 180,000円
10億円超50億円以下 360,000円
50億円超 540,000円

※引用:国税庁「不動産の譲渡・消費貸借等に関する契約書

2.消費税額等が区分記載されていれば、印紙税を減額できる

印紙税の金額を判断する基準となる契約価格の中に、消費税等の額が含まれていることがあります。

そのような場合、不動産売買の契約書であって消費税額が区分記載されていれば、税抜き価格を印紙税の判断基準の価格とすることができます。建物の工事請負契約書であっても、同様の取扱いになります。

2-1.区分記載の方法と印紙税軽減効果

消費税等の金額を区分記載して、税抜価格を印紙税の判断基準とするには、その取引における消費税額等が明らかであることが必要です。

たとえば、次のように記載することで、税抜価格5,000万円を印紙税の判断基準の契約価格とすることができます。この場合の印紙税額は、10,000円となります。

  • 建物価格5,500万円(税抜価格5,000万円、消費税額等500万円)
  • 建物価格5,500万円(うち消費税額等500万円)
  • 建物価格5,000万円(消費税額等500万円、計5,500万円)
  • 建物価格5,500万円(税抜価格5,000万円)

これに対して、次のような記載は、必ずしも消費税額等が明らかとはいえず、税抜価格を印紙税の判断基準とすることができません。この場合の印紙税額は、30,000円となります。

× 建物価格5,500万円 消費税額等10%を含む
× 建物価格5,500万円(税込)

このように、区分記載の方法を採ることで、しない場合と比較して印紙税を数万円単位で軽減することができます。仮に、5億円の建物価格であれば、税抜価格を採用することで、10万円の印紙税負担を減らすことができます。

3.印紙税を減額するその他の方法

不動産売買の契約書について、消費税等の税区分の記載を工夫する方法以外に、印紙税を減額する方法をみてみましょう。

以前から実務上用いられている方法としては、契約書のコピーを使用する方法が挙げられます。また、令和4年5月より解禁が見込まれている電子契約を利用すれば、2021年9月時点の税法上では印紙税はかからない可能性が高いと言えます。

3-1.契約書のコピーを使用

印紙税を減額する方法の1つとして、実務上、しばしば用いられるのが、契約書を1通のみ作成し、取引の一方はそのコピーで済ませるという方法です。

不動産売買の契約では、買主と売主で1通ずつ契約書を作成し、お互いに保管し合うのが通常です。そうすると、印紙税は、買主の分と売主の分の契約書に課せられるため、2通分かかるのですが、いずれか一方がコピーの保管とすることで、印紙税は1通分、すなわち半額で済ませることができることになります。

複写機によるコピーには印紙税はかからない、と国税庁が解釈しており、印紙税の課税実務上、問題はありません。(※参照:国税庁「印紙税の手引」)

ただし、民事訴訟では、私文書が真正であることは、署名又は押印によって推定するものとしており、契約書の真正性が争われたとき、コピーであると真正なものであることを証明する根拠が弱くなる可能性があります。

3-2.電子契約の利用

デジタル関連改革法が令和3年9月に施行されたことに伴い、宅建業法が改正され、不動産売買の契約についても、令和4年5月より電子化が解禁される予定です。(国土交通省「国土交通省からのお知らせ 法令等改正のご案内」)

電子契約は、電子署名法によって、押印された契約書と同等の真正性が担保されています。電子契約であれば、印紙税の課税対象となる文書に該当せず、印紙税は課税されないという見解を過去の国会で総理大臣が答弁しており、現状では、印紙税はかからないものと考えられます。

ただし、今後の法改正によって印紙税の取り扱いが変わる可能性もあります。税法の改正は頻繁に行われているため、電子契約が一般に普及した段階で新たな対応が加えられる可能性があることにも注意しておきましょう。

まとめ

不動産売買の契約書で消費税等の区分記載をすると、税抜価格を印紙税の判断基準の契約価格とすることができます。

この取扱いを適用するには、消費税等の金額が明らかになる必要があるため、消費税等10%を含む、あるいは、税込み、といった記載では適用されないので注意しましょう。

その他、印紙税を減額する方法には、消費税等の区分記載以外に、契約書のコピーを使用する方法や、電子契約を利用する方法があります。コピーを使用する場合、裁判の証拠能力が弱くなるデメリットがあります。

不動産売買の電子契約は2022年5月に解禁される見込みであり、印紙税の徴収が行われない可能性が高いと言えますが、今後税法の変更によって課税されることとなる可能性があります。いずれにせよ、税法の改正は頻繁に行われているため、国税庁のウェブサイトを小まめに確認したり、専門家への相談も検討しておくことが大切です。

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佐藤 永一郎

筑波大学大学院修了。会計事務所、法律事務所に勤務しながら築古戸建ての不動産投資を行う。現在は、不動産投資の傍ら、不動産投資や税・法律系のライターとして活動しています。経験をベースに、分かりやすくて役に立つ記事の執筆を心がけています。