不動産の売却は収入額が大きいため、多額の譲渡所得税が発生する場合があります。譲渡所得税の確定申告では、特別控除などの特例を利用することで納める税金が大きく軽減されることもあります。
サラリーマンの方などで、確定申告に慣れていない場合、不動産売却の確定申告を自分で行うのは、税務リスクが高いこともあるでしょう。しかし、税理士に確定申告を依頼する場合、費用がいくらぐらいかかるのかも気になるところです。
この記事では、不動産売却の確定申告について、税理士に依頼する費用、税理士に依頼するメリット・デメリットについて解説します。
※記事内の税制内容は2021年7月時点の情報となります。最新の情報については、国税庁などのサイトをご確認のうえ、税理士などの専門家へのご相談もご検討ください。
目次
- 不動産売却時に確定申告が必要な2つの理由
1-1.譲渡所得税を申告・納付する必要がある
1-2.特別控除の利用や損益通算によって税金の軽減ができる - 不動産売却時の確定申告を税理士に依頼するメリット
2-1.正確な確定申告をおこない、税務リスクを減らすことができる
2-2.税金の軽減などについてアドバイスをもらうことができる
2-3.自分で確定申告をする手間を省き、本業に集中できる - 不動産売却時の確定申告を税理士に依頼するデメリット
3-1.税理士に対して支払う費用がかかる
3-2.確定申告についてのノウハウが身に付きづらい - 不動産売却の確定申告を税理士に依頼する費用
4-1.売却金額に応じて基本費用が変わる場合
4-2.追加費用がかかる場合 - まとめ
1.不動産売却時に確定申告が必要な2つの理由
不動産を売却したときにかかる税金のうち、最も大きなものに譲渡所得税・住民税があります。
譲渡所得税は、不動産を売却した人がその不動産の売却による利益がいくらあったかを計算して確定申告をおこない、その計算に基づいて納付することになっています。
1-1.譲渡所得税を申告・納付する必要がある
不動産の売却について利益が出た場合、売却した年の翌年3月15日までにその利益(譲渡所得)の確定申告をおこない、譲渡所得税を納付する必要があります。
譲渡所得は、売却価格-(取得費+売却費用)-特別控除の算式によって計算します。不動産を売却した人は、売却時や購入時の売買契約書などの資料に基づいて、計算することになります。
住民税は、この確定申告に基づいて、各市区町村が翌年6月頃に決定し、賦課してきます。これらを申告・納付しないと、無申告加算税などのペナルティが課せられる可能性があります。
1-2.特別控除の利用や損益通算によって税金の軽減ができる
不動産売却後に確定申告をするもうひとつの理由には、課税される税金を軽減できる可能性がある、という面もあります。
例えば、譲渡所得税の制度には、マイホームを売却したときに、譲渡所得から3,000万円を控除することができるなどの特別控除の特例があります。(※参照:国税庁「マイホームを売ったときの特例」)
また、特定のマイホームを売却して損失が出た場合にも、その損失を給与所得などの他の所得と損益通算することができる特例があります。(参照:国税庁「特定のマイホームの譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例」
これらの特例を利用して税金を軽減するには、確定申告をすることが条件になります。
2.不動産売却時の確定申告を税理士に依頼するメリット
不動産売却時の確定申告を税理士に依頼するメリットとしては、次のような点が挙げられます。
- 正確な確定申告をおこない、税務リスクを減らすことができる
- 税金の軽減などについてアドバイスをもらうことができる
- 自分で確定申告をする手間を省き、本業に集中できる
2-1.正確な確定申告をおこない、税務リスクを減らすことができる
税理士は税務の専門家ですので、税法の法令に基づいた正確な確定申告をおこなうことができます。
また、確定申告業務は、単なる書類の作成代行ではなく、納税者に代わって税務署に主張を伝えるという税務代理業務であるため、税務署から問い合わせなどがあった場合、税理士に対応してもらうことが可能です。
万一税務調査が入った場合でも、確定申告を税理士に依頼していれば、対応を依頼しやすいでしょう。このように、税理士に依頼することで確定申告に関連する税務リスクを減らすことができます。
2-2.税金の軽減などについてアドバイスをもらうことができる
不動産売却の確定申告では、特別控除や損益通算の特例を利用することによって税金を軽減できる場合があります。
これらの特例の適用は、条件が複雑であり、税制改正によって制度自体が変わることも多く、適用できる税金の軽減適用を余すところなく受けるには、税理士に依頼した方がよいといえます。
また、マイホームの特別控除と買換え等による課税繰延べなど、いずれか一方の適用しか受けられず、どちらの特例の適用を受ければよいのか判断に迷うケースもあります。このような場合にも、税理士に依頼することで税法の法令に基づいたアドバイスを受けることが可能です。
2-3.自分で確定申告をする手間を省き、本業に集中できる
不動産売却の確定申告を一般の方が初めて行うには、調べなければならない事項や面倒な手続きもあり、申告期限までにすべての作業を間違いなく完了させるためにある程度の労力が必要になるでしょう。
確定申告のために労力をかけると、本業に影響が出てくる可能性もあります。税理士に確定申告を依頼することでそのような不安をなくし、本業に集中できるという点は大きなメリットと言えるでしょう。
3.不動産売却時の確定申告を税理士に依頼するデメリット
不動産売却の確定申告を税理士に依頼するデメリットは、費用がかかってしまうこと、ノウハウが身に付かないこと、が挙げられます。
3-1.税理士に対して支払う費用がかかる
不動産売却の確定申告を税理士に依頼すると、税理士に対して報酬を支払う必要があります。また、税理士との打ち合わせや資料収集など、最低限自分でおこなう作業もあることもデメリットでしょう。
ただし、不動産売却の確定申告で利用できる特例を利用しなかったり、間違いがあったりした場合にかかってくる譲渡所得税の金額は大きいことから、そのようなリスクとの費用対効果を見極めて依頼を検討することが大切です。
3-2.確定申告についてのノウハウが身に付きづらい
不動産売却の確定申告を税理士に依頼した場合、確定申告についてのノウハウが身に付きづらいという点がデメリットです。
不動産投資をおこなっていて、今後、簡単な確定申告であれば自分で手掛けたいと考えていたり、あるいは、既に不動産所得の確定申告を自分でおこなっていたりする場合、税務のノウハウの幅を広げるために自分で確定申告をおこなうことを考えてもよいでしょう。
4.不動産売却の確定申告を税理士に依頼する費用
不動産売却の確定申告を税理士に依頼する費用は依頼先の税理士事務所によって異なりますが、売却金額に応じた基本費用の体系となっているケースが多く見られます。
特別控除などの特例を利用したり、売却額が高額になったりする場合、追加費用や別途見積りとなることがあります。
4-1.売却金額に応じて基本費用が変わる場合
売却金額に応じた基本費用の体系となっている場合、売却金額が2,000万円程度増えるごとに、おおよそ5万円~20万円程度まで基本費用が上がる費用体系となっています。
売却金額が1億円を超えるなど高額であったり、特別控除などの特例や複雑な計算が必要であったりする場合には、基本費用の他に追加費用がかかることがあります。
4-2.追加費用がかかる場合
マイホームの3,000万円控除、空き家等の3,000万円控除などの特別控除を利用する場合、特定のマイホームの売却損の損益通算の特例やマイホームの買換えの課税繰延べの特例などを利用する場合、追加費用としておおよそ3万円~5万円程度の料金がかかります。
その他、売却金額が1億円を超えるなど高額である場合にも、費用は別途見積りとなることがあるでしょう。
4-3.税理士紹介サイトで相場を調査する
税理士紹介サイトを利用して、不動産売却に強い税理士の費用相場を調査するという方法もあります。税理士紹介サイトでは、コーディネーターが、相談者のニーズに合った複数の税理士をピックアップし、面談を調整してくれます。税理士との依頼内容の調整や、料金交渉などもコーディネーターに任せることが可能です。
税理士ドットコム
税理士ドットコムは、全国5,900名の税理士の中から無料で希望に沿った税理士を紹介してもらえるウェブサービスです。複数の税理士を比較することができるうえ、「費用はいくら?」「どんな税理士を選ぶべき?」といった税理士を選ぶ際の相談も可能となっています。
報酬引き下げの実績も豊富なため、すでに税理士と契約している方でも利用が可能です。コーディネーターが複数の税理士に相見積りをとり、費用についての交渉までサポートしてくれます。
利用時の主な注意点としては、提携している税理士の紹介しか受けられない点です。提携外の税理士も比較していきたい方は、自身で探すことと並行して利用を検討してみると良いでしょう。
【関連記事】税理士ドットコムの口コミ・評判は?メリット・デメリットや利用手順も
まとめ
不動産売却の確定申告を税理士に依頼することで、税務リスクを軽減でき、税法に基づいたアドバイスを受けることが可能です。
ただし、不動産売却の確定申告を税理士に依頼すると、多くの場合、売却金額に応じて基本費用が変わってきます。複数の税理士事務所に問い合わせ、依頼に必要な費用を確認しておくことも大切です。
不動産売却の確定申告では、譲渡所得税の金額が大きくなることから、税務リスクと税理士に依頼する費用との費用対効果を見極めて依頼することを検討してみましょう。
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佐藤 永一郎
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