不動産を代償分割で相続する方法は?現金がない時の対策や工夫も

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不動産を相続人のうち1人が代表して相続する「代償分割」は不動産を現物で受け継ぐことができますが、他の相続人に代わりの金銭又は財産を分配するため相続人には資金力が必要となります。

また、遺産分割協議では、不動産の相続人や評価額に加え代償金・代わりとなる財産についても全員が合意する必要があります。後のトラブルを回避するため、不動産の評価や代償金の設定について、慎重に進めていくことが大切です。

本記事では代償分割とは、相続前におさえておきたいこと、不動産の代償分割の手順と現金がない時の対策を解説していきます。

目次

  1. 代償分割のメリット・デメリット
  2. 代償分割で不動産を相続する方法・手順・流れ
    2-1.不動産相続の前にローンの有無と資産価値を確認する
    2-2.不動産を相続する人を決定する
    2-3.相続登記(名義変更)を行う
    2-4.他の相続人に代償金又は財産を譲る
    2-5.相続税の計算・申告・納付(相続開始から10ヶ月以内)
  3. 相続人に現金が無い時の代償分割の方法
  4. まとめ

1.代償分割のメリット・デメリット

代償分割とは相続人のうち一人が代表して相続を行い、他の相続人には金銭または相応の財産を譲る方法です。

不動産のような分割しにくい資産を処分せずに相続でき、相続税の対象となる評価額を現金で相続するよりも抑えられるというメリットがあります。一方、代表となる相続人に資金力が無いと難しいというデメリットがあります。

他の相続人に渡す代償金は、相続人全員の合意が得られている場合には金銭以外の財産でも問題ありません。ただし、通常想定される評価額よりも資産価値の低い財産で代償分割をした場合には贈与税が、高い金額で代償分割をした場合には譲渡所得税が課される可能性がありますので注意が必要です。

なお、代償分割の他には財産をそのまま分配する現物分割、財産を売却して金銭に換えて分配する換価分割、複数の相続人が持ち分割合に応じて共有名義で相続する共有分割という三つの方法があります。

これらの分割方法と比較し、どの方法で不動産を分割するのが良いのか、相続人同士で話し合いの機会を設けておきましょう。

2.代償分割で不動産を相続する方法・手順・流れ

不動産の分割は、遺言書がある場合は遺言書通りに分配、または遺産分割協議で相続人全員が相談し合意した方法で決定する流れとなります。代償分割で不動産を相続するのであれば、下記のような流れとなります。

  • 不動産相続の前にローンの有無と資産価値を確認する
  • 不動産を相続する人を決定する
  • 不動産の評価額について話し合い決定する
  • 相続登記(名義変更)を行う
  • 他の相続人に代償金・代償物を譲る
  • 相続税の計算・申告・納付(相続開始から10ヶ月以内)

2-1.不動産相続の前にローンの有無と資産価値を確認する

不動産を相続する前に、不動産のローンが残っているか確認しましょう。ローンが残っている場合、相続人は不動産と共にローンを引き継ぐことになります。

ローンの有無は取引のあった金融機関に尋ねる、登記事項証明書を取得するなどの方法で確認しましょう。登記事項証明書は「権利部(乙区)」の部分に「抵当権設定」の記載があり、下に抵当権解除と書かれていない場合にはローンが残っていることになります。

ローンの残債と不動産の時価を比較し、ローン残債が上回る時にはオーバーローン状態となります。オーバーローンの不動産は負債の方が大きい状態であるため、資産としての価値はマイナスです。マイナスの資産を相続する場合には、他の金融資産などの分配方法にも注意しましょう。

なお、不動産の時価を調査するときに注意しておきたいポイントは、不動産の時価は相続税の評価額とは異なるという点です。

不動産の価格は買主との相対取引によって決まるため、不動産の評価額は参考値とはなるものの、その価格通りに売却できるというわけではありません。複数の不動産会社の査定結果を比較したり、不動産鑑定士による鑑定を受け、時価を調査することが重要です。

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2-2.不動産を相続する人を決定する

代表として不動産を相続する人相続人全員で話し合い決定します。相続人に代償金を支払える資本力があることが望ましいですが、事情がある場合には代わりに相応の財産を譲る代物分割といった方法で対処することも可能です。

2-3.相続登記(名義変更)を行う

不動産の名義変更(所有権移転登記)の手続きを行います。必要書類を法務局の窓口へ持参・オンライン申請・郵送するという3つの方法から選択できます。遺産分割協議・遺言書で相続を行う場合の必要書類はそれぞれ以下の通りです。

遺産分割協議による相続の必要書類

  • 遺産分割協議書
  • 遺産分割協議書に捺印された印鑑の登録証明書
  • 申告者全員の住民票または戸籍の附票
  • 被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本
  • 先に法定相続人がいないことを確認できる戸籍謄本(第2順位以後)
  • 法定相続人全員の現在の戸籍謄本

遺言書による相続の必要書類

  • 遺言書
  • 検認済証明書※(法務局・公証役場で保管されている場合は必要ありません)
  • 遺言書情報証明書(法務局で保管されていたケース)
  • 被相続人の死亡が確認できる戸籍謄本もしくは住民票(本籍・筆頭者の記載有り)
  • 申告者全員の住民票または戸籍の附票

書類に加え、登録免許税(要件を満たす場合には免除・軽減される可能性あり)が必要となり、相続人の順位や被相続人との関係によって必要書類は異なる可能性があります。司法書士に代行を依頼する場合は委任状と司法書士への報酬が必要となります。

2-4.他の相続人に代償金又は財産を譲る

所有権移転登記によって所有者が相続人となったため、他の相続人に代償金を支払います。一度で支払いきれず他の相続人から了承が得られた場合には分割で支払う事が可能です。

代償金は、遺産分割として行われるため基本的に贈与税の対象となりません。遺産分割協議書に「相続人Aは不動産を取得する代償として相続人Bに金●万円を●月〇日までに支払う」旨を明記しておきましょう。

代償として金銭以外の物を譲る際には、「譲渡時の価額(時価)-取得費と譲渡のための費用」がプラスになった分が譲渡益とみなされ、控除額を超える場合譲渡所得税が課されます。また財産の種類に応じて名義変更を行う必要があります

2-5.相続税の計算・申告・納付(相続開始から10ヶ月以内)

相続税の基礎控除「3000万円+600万円×法定相続人の数」を超える時には、被相続人が亡くなった事を知って(相続開始)から10ヶ月以内相続税を申告・納付する義務があります。

3.相続人に現金が無い時の代償分割の方法

代償相続では「被相続人と長年同居しており、住み慣れた家を譲り受けたいがお金が無い」「事業を承継するため相続したいが手元に現金が無い」といったケースもあります。

相続人が金銭以外の財産(不動産・有価証券・骨董品など)を所有しているケースでは、代わりの財産を譲る方法で遺産分割を行うことも可能です。

金銭以外の財産も無い場合には、双方合意の元で代償金を分割で支払う、相続した不動産を担保にローンを組むという方法があります。分割で支払う事を約束した時には、遺産分割協議書に支払い期間・金額などを明記しておくことで後のトラブルが回避できることがあります。

まとめ

不動産の代償分割は、遺産分割協議で相続する人、代わりに他の相続人に分配するお金・財産などについて話し合い意見がまとまった上で相続登記、代償金又は財産を譲ります。

遺産分割協議では他の分割方法より話し合う事柄が多くなりますので、決定した時には遺産分割協議書に必ず内容を明記しておきましょう。

相続人に現金が無い場合は分割での支払いや財産を分与する方法があります。場合によっては不動産担保ローンや他の分割方法を検討されてみるのも良いでしょう。この記事を参考に不動産相続の代償分割を知り、今後に活かしていきましょう。

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田中 あさみ

経済学部在学中に2級FP技能士(AFP)の資格を取得。ライターとして不動産投資を含む投資や年金・保険・税金等の記事を執筆しています。医療系の勤務経験がありますので、医療×金融・投資も強みです。HEDGE GUIDEでは不動産投資を始め、投資分野等を分かりやすくお伝えできるよう日々努めてまいります。