コロナ禍を機に初の寄付額1兆円超え、20代の寄付増加…「寄付白書2021」に見る日本の寄付市場

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寄付・社会的投資が進む社会の実現を目指す特定非営利活動法人日本ファンドレイジング協会は12月16日、国内の寄付と社会的投資に関する最新動向に関する調査レポート「寄付白書2021」のトピックスを公開した。東日本大震災以降、初めて寄付額が1兆円に達したのをはじめ、ふるさと納税が前回(2016年)調査から2.4倍に増加、さらに新型コロナ関連の寄付率トップは20代など、大きな変化が顕在化している。

同書は、全国寄付実態調査を基に、新型コロナウィルスと寄付動向、急伸中のESG(環境・社会・企業統治) 投資・インパクト投資などの社会的投資の全体像の解説、遺贈寄付やクラウドファンディングなど、寄付を取り巻く重要なトピックスと最新動向を紹介している。東日本大震災の発生により「寄付元年」と言われた2011年からの10年間における社会の意識・行動の変化に関する統計データを中心に、寄付および社会的投資といった「共感資本社会」の全体像を多角的・複合的に示した唯一の資料といえる。最新刊は今月17日に一般発売された。

20年の個人寄付総額は、名目GDPの0.23%に相当する、1兆2126億円。前回調査(16年1月〜12月)比で、7756億円から156.3%の増加となり、東日本大震災以降、初めて1兆円を超えた。寄付者率は44.1%で、寄付実施人数の推計は4352万人。16年の45.4%から、44.1%と1.3 ポイント減少した。新型コロナ関連の寄付を行った人の割合は、全体の1割弱にあたる8.7%で、これは全寄付者中の19.6%に相当する。

寄付額を見ると、寄付を行った人の平均金額は3万7657円(中央値は1万円)。性別では男性の平均値が4万3521円(中央値1万1450円)、女性は平均3万2325円(中央値6000円)。年齢別では、男女共に高年齢ほど寄付者率が高く、男性では20歳代の29.6%が最も低く、70歳代の51.7%が最も高い。同協会は「個人寄付額は日米英いずれもパンデミックにより増加トレンドにある」と見ている。

寄付総額のうち、ふるさと納税への寄付は6725億円(総務省調べ)で、16年の2844億円から2.4倍に急増。調査ではふるさと納税を行った人は14.6%、平均金額は7万5156円(中央値4万円)だった。ふるさと納税額を除いた寄付総額は5401億円で、16年比で1割増加した。

通常の寄付では、年齢が高くなるほど寄付者率は高くなり、若いほど低い傾向にあるが、新型コロナ関連の寄付では20歳代が高齢層よりも高い寄付者率となり、同協会は「寄付の逆転現象」として紹介している。逆転現象の傾向は世界的に共通しており、理由としては、同世代が失職や機会の損失などの影響を受けている状況があったこと、SNS上で支援の輪が広がったことが、重症化しにくい若い世代に影響を与えたと考えられる。

同白書では、コロナ禍が人々の寄付・ボランティア活動にどのような影響を与えたかを調べた。20年の1年間にどのような変化があったのかを尋ねたところ「世帯収入が減少した」と答えた人は34.1%、「自由に使える金額が減少した」は27.3%、「金銭寄付の額が減少した」は11.0%、「自由に使える時間が減少した」は16.8%。さらに「ボランティア活動時間が減少した」は14.5%となった。

こうした変化について、同協会は「世帯収入が少ないほど、より顕著。寄付やボランティア活動には自由に使えるお金や時間など、一定の資源が必要になるものの、コロナ禍によって参加資源の減少を引き起こした」と推測している。

同白書は今年2月24日から3月5日にかけ、全国20~79 歳の男女5678名にインターネットで調査を行い、「寄付月間(Giving December)」の今月、4年ぶりの発刊となった。
寄付月間は、国際機関、行政、企業、NPO、大学、個人が幅広く集い、“寄付が人々の幸せを生み出す社会”を目指し活動する啓発キャンペーン。コンセプトは、「欲しい未来へ、寄付を贈ろう」。昨年は674法人が賛同パートナーとして参加、196件の寄付月間公式認定企画が実施された。

【関連サイト】認定特定非営利活動法人 日本ファンドレイジング協会「調査研究(寄付白書)」