寄付金控除となる対象団体は?金額の上限や申請手順も解説

一定の公共的な活動をおこなう団体に対して寄付をした場合、寄付金控除の適用を受けることによって税金が軽減される制度があります。

この記事では、寄付金控除の種類と計算方法、金額の上限について概要を説明したうえで、寄付金控除の対象となる団体、寄付金控除の申請手順について解説します。

※記事内の税金・税率などは2021年3月時点の情報となります。最新の情報については、国税庁のウェブサイトをご確認のうえ、税理士などの専門家へのご相談もご検討ください。

目次

  1. 寄付金控除の種類と計算方法、金額の上限
    1-1.所得税の所得控除
    1-2.所得税の税額控除
    1-3.住民税の税額控除
  2. 寄付金控除の対象団体
    2-1.寄付金控除別に対象団体を比較
    2-2.主な寄付金控除の対象団体
  3. 寄付金控除の申請手順
    3-1.領収書の発行・保管とその他書類の準備
    3-2.確定申告
    3-3.ふるさと納税のワンストップ特例
  4. まとめ

1.寄付金控除の種類と計算方法、金額の上限

寄付金控除は、所得税と住民税、それぞれから控除されます。所得税では、税金計算をする前の所得から差し引く所得控除と、税額そのものから直接控除する税額控除があり、選択制となっています。

住民税は、税額控除となります。軽減される金額の上限は、それぞれの制度に応じて異なります。なお、ここでは、個人が寄付をする場合を想定して説明していきます。

1-1.所得税の所得控除

寄付金控除は、所得税の課税される所得金額の合計額から差し引くことができる控除の一つです。寄付金(寄附金)控除額は、次の算式で計算されます。

寄付金控除額=その年に支出した特定寄付金の額-2,000円

所得から控除できる寄付金額は、その年の総所得金額の40%から2,000円を差し引いた金額が上限となります。減税となる所得税額は、この寄付金控除額に所得税の税率(0%~45%までの所得額に応じた累進税率)を乗じた額となります。

なお、特定寄付金は寄付金のうち、一定の団体などへの寄付や金銭の拠出を対象としています。

※参照:国税庁「寄附金を支出したとき

1-2.所得税の税額控除

所得税では、寄付金額から2,000円を差し引いた額の30%~40%を、所得税額から直接控除する制度もあります。税額控除の金額は、次のように計算します。

寄付金税額控除額=(その年に支出した一定の寄付金の額-2,000円)×40%(30%)

控除される所得税額は、その年の所得税額の25%が上限となります。控除対象となる寄付金額の上限は所得控除よりも少ないですが、累進税率が23%以下(課税所得が900万円未満)であれば、税額控除の方が所得控除よりも軽減される税額は多いといえるでしょう。

なお、上述の所得控除の対象となる寄付金は、特定寄付金のうち一定の団体などへの寄付金に限定されます。

※参照:国税庁「政党等寄附金特別控除制度
※参照:国税庁「認定NPO法人に寄附をしたとき

1-3.住民税の税額控除

住民税では、寄付金額から2,000円を差し引いた額の10%を、住民税額から直接控除します。税額控除の金額は、次のように計算します。住民税は、前年の所得を下に課税されるため、税額が控除されるのは寄付金を支出した年の翌年になります。

寄付金税額控除額=(一定の寄付金の額-2,000円)×10%

対象となる寄付金額は総所得金額の30%が上限となります。特例として、ふるさと納税対象の寄付金のみ、基本控除に加えて、以下の算式により計算された控除額があります。

寄付金税額控除額=(一定の寄付金の額-2,000円)×(90%-寄付者に適用される所得税率)

ふるさと納税による住民税の税額控除は、住民税の20%が上限となります。ふるさと納税額が全額控除される目安については、家族構成、収入別に総務省が試算しています。

※参照:総務省「ふるさと納税以外の寄附金税制
※参照:総務省「ふるさと納税の仕組み>税金の控除について

2.寄付金控除の対象団体

所得税の所得控除、税額控除、および住民税の税額控除、の区分ごとに対象となる寄付金団体は異なります。

所得税の所得控除が対象となる寄付金の範囲は広く設定されています。住民税の税額控除の対象となる寄付金は、地方公共団体(いわゆるふるさと納税)、日本赤十字社の住所地の支部、住所地の都道府県共同募金会以外は、条例の定めるところによります。

2-1.寄付金控除別に対象団体を比較

所得税の所得控除、税額控除、および住民税の税額控除、の区分ごとに対象となる主な寄付金団体を比較すると、以下の表のようになります。住民税の税額控除を受けることができる寄付金の対象団体は、ある程度(表の△)、条例によって定めることが可能です。

対象となる寄付金 所得税の所得控除 所得税の税額控除 住民税の税額控除
×
地方公共団体 〇(ふるさと納税)
公益社団法人、公益財団法人 △(条例による)
社会福祉法人 △(条例による)
更生保護法人 △(条例による)
国立大学法人等 △(条例による)
学校法人 △(条例による)
独立行政法人等 △(条例による)
自働車安全運転センター、日本司法支援センター、日本私立学校振興・共済事業団 △(条例による)
日本赤十字社 〇(住所地の支部)
都道府県共同募金会 〇 
認定NPO法人 △(条例による)
認定外NPO法人 × △(条例による)
政党、政治資金団体 ×

なお、団体によっては、一部事業のみが対象となる場合もあります。寄付の際には各団体にご確認ください。

2-2.主な寄付金控除の対象団体

所得税の税額控除と所得控除とを選択適用できる団体を中心に、対象団体について説明します。

公益社団法人、公益財団法人

行政庁から、公益目的事業をおこなうことを主たる目的とするという認定を受けた、社団法人、財団法人をいいます。公益目的事業比率が50%以上であることなどの要件があります。

内閣府のホームページで、税額控除の対象となる都道府県別の公益法人の一覧を確認することができます。

社会福祉法人

社会福祉事業をおこなうことを目的として、社会福祉法によって設立された法人をいいます。特別養護老人ホームや障害者支援施設、保育所や訪問介護施設などが該当します。

更生保護法人

更生保護事業法に基づき、更生保護事業を営む団体であり、更生保護施設を運営するなど、罪を犯した者の更生を助けることを目的とする事業をおこなっています。

独立行政法人等

業務の質の向上や活性化、自律的な運営、透明性の向上を図ることを目的として、各府省の行政活動から一定の事務や事業を分離して担当する法人です。

国民生活および社会経済の安定等の公共上の見地から確実に実施されることが必要な事務及び事業をおこないます。総務省のウェブサイトで、各独立行政法人の一覧を確認することができます。

認定NPO法人

NPO法人のうち、広く市民から支援を受けていること(PST)、共益的活動の占める割合が50%未満であること、特定非営利活動の事業費が80%以上であること、など一定の要件について、所轄官庁から認定を受けた法人です。

内閣府のウェブサイトで、各認定NPO法人の一覧を確認することができます。

3.寄付金控除の申請手順

寄付金控除の申請をおこなうには、基本的に確定申告による必要があります。給与所得者であっても、年末調整で申請することはできません。ただし、寄付金控除の申請がふるさと納税のみである場合、一定の条件の下、ワンストップ特例によることができます。

3-1.領収書の発行・保管とその他書類の準備

寄付した団体などから、寄付の受領証や領収書の交付を受けます。寄付金を受領した法人の名称、受領した旨、寄付金額、受領年月日、寄付金控除(寄付金税額控除)の対象であること、が記載してあるかどうか、を確認しましょう。

確定申告を紙ベースでおこなう場合は、受領証や領収書を添付して税務署に提出する必要があります。電子申告でおこなう場合は、提出は不要ですが、5年間保管し、税務署から提示などを求められたときはこれに応じる必要があります。

確定申告によって、寄付金控除の申請をするには、その年のすべての所得を示す書類が必要になります。給与所得がある人は給与所得の源泉徴収票、不動産所得がある人は不動産所得の決算書などを準備しましょう。

3-2.確定申告

寄付金控除を受けることを記載した所得税の確定申告書の提出を、翌年3月15日までにおこないます。確定申告書の提出方法は、主に電子申告と紙ベースでの申告の2つの方法があります。

所得税の寄附金控除を受けて減額された税額は、確定申告後に還付されます。住民税の寄附金控除適用による減額分は、地方自治体で課税される住民税額に反映します。

電子申告

確定申告書の提出を電子申告でおこなうには、マイナンバーカードを用意します。まず、国税庁ホームページの確定申告書作成コーナーにアクセスします。

スマートフォンを利用する場合は、その後、マイナポータルAPという専用アプリをインストールし、マイナンバーカードを読み取って、収入・所得金額、寄付金控除を含めた各種控除情報を入力します。税額の計算結果を確認してから、データを保存し送信します。

パソコンを利用する場合は、カードリーダーを用いてマイナンバーカードを読み取り、e-Taxで送信します。

いずれの方法による場合でも、寄付金の受領証や領収書の提出は不要です。

紙ベースでの申告

国税庁ホームページの確定申告書作成コーナーで、住所、氏名などの個人情報、収入・所得金額、寄付金控除を含めた各種控除情報を入力し、紙ベースで申告書を印刷します。

印刷した申告を、住所地の所轄税務署に郵送などで提出します。この際、寄付金の受領証や領収書のほか、収入・所得を証明する源泉徴収票などの書類、各種控除の証明書、マイナンバーカードの写しなどの本人確認書類を添付することが必要になります。

所轄税務署の設置する確定申告会場で相談を受けながら、申告書を作成し、提出することも可能です。

3-3.ふるさと納税のワンストップ特例

ふるさと納税の寄付金については、以下の条件を満たす場合に限り、確定申告をおこなわずに寄付金控除を受けることができる特例があります。ただし、確定申告を行う場合、その確定申告において同時に寄付金控除の申請もおこなう必要があります。

  • 確定申告が不要な給与所得者(給与収入先が1箇所のみ、年間2,000万円以下)であること
  • ふるさと納税先の自治体数が5団体以下であること
  • ふるさと納税先の地方自治体に、ワンストップ特例の適用に関する申請書を提出すること

まとめ

寄付金控除の対象となる団体は、所得税の所得控除、税額控除、および住民税の税額控除、の区分ごとに異なります。控除金額の上限は、所得税の所得控除が最も大きくなりますが、所得税の税率が一定以下の場合では税額控除の軽減額が大きくなることもあります。

ふるさと納税は、住民税の税額控除を併せると、2,000円を除いて寄付金額全額の控除が可能ですが、住民税の20%が上限となっています。

寄付金控除を受けるには、原則として確定申告をおこなう必要があります。寄付金の受領証や領収書の発行を受けて、翌年3月15日までに手続きするようにしましょう。

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佐藤 永一郎

筑波大学大学院修了。会計事務所、法律事務所に勤務しながら築古戸建ての不動産投資を行う。現在は、不動産投資の傍ら、不動産投資や税・法律系のライターとして活動しています。経験をベースに、分かりやすくて役に立つ記事の執筆を心がけています。