ソーシャルレンディングは預金や債券などの運用に比べ、利回りが高い一方で失敗のリスクも大きい投資です。そのため、できるだけ損失が発生しないように事前に入念なリスクヘッジをしていかなくてはいけません。
そこで今回はリスク管理の方法として、投資初心者が失敗しがちなポイントを5つ挙げて解説をしていきたいと思います。失敗例の数々を教訓に、ソーシャルレンディングで利益を出して行くには、どういった点に注意を払えばよいのか考えてみましょう。
目次
- 運用期間の長い案件に投資して、自由に資金が使えない
- わずかな資金で投資した結果、再投資や出金ができない
- 利回りに惹かれてリスクの高い案件に投資してしまう
- 「源泉徴収されているから」と確定申告をしない
- 分散投資をしたつもりが、実際はできていない
1 運用期間の長い案件に投資して、自由に資金が使えない
ソーシャルレンディングの各案件には、運用期間が設定されています。短期案件では1~2ヶ月程度で運用が終了するものもありますし、逆に長期案件では2~3年以上運用されるものもあります。
案件の運用期間中、ソーシャルレンディングでは投資資金を自由に引き出せません。運用期間中に分配金が毎月入ってきますが、何らかの用途で資金が必要になった時、自由に引き出せないという点がリスクにつながることがあります。
たとえば、生活に必要な資金までソーシャルレンディングに投資をしていると結婚・出産・病気・事故・介護などのライフイベントでまとまったお金が必要になった際に、お金を引き出すことができずにカードローンなどで高い金利で借りることになるリスクや、2年以上の案件への投資中に、日本を取り巻く経済の実態が大きく変化する可能性もゼロではありません。経済危機による市況の大変化でソーシャルレンディング業界が危機的状況に陥るだけでなく、ソーシャルレンディング会社そのものが倒産するリスクも生じます。
また、株価の急激な下落や円高などによって絶好の投資機会が巡ってきたにも関わらず、ソーシャルレンディングに投資資金をつぎこんでいたためにお金を引き出せず、好機を見逃すという機会損失のケースも考えられます。
このように、長期案件では投資資金を自由に引き出せず、様々なリスクに巻き込まれる可能性が高くなるのです。リスクを回避するには、長期案件の投資額を、生活資金は確保した上でリスク資産全体の5%~多くても20%程度に留めることや、融資先の会社や事業の健全性を入念に調査してから投資の是非を判断するといったことが大切です。
2 わずかな資金で投資した結果、再投資や出金ができない
ソーシャルレンディングでの少額投資はメリットの一つに挙げられますが、投資金が少額の場合は、運用で得られる利息も少額となります。
例えば、利回り8%の案件に1万円を投資しても、年間の収入は640円程度(税引き後)です。640円を12ヶ月で割れば、ひと月あたりの分配金は50円あまりです。
現在、ソーシャルレンディングは1口1万円~数万円程度と少額で始めることができますが、逆に言えば数百円~数千円の利息を得ても再投資はできない、ということでもあります。利息分を再投資できなければ、複利の効果を得ることはできず、結果として投資効率が下がってしまいます。
「分散投資」ということで10万円の資金を10社に1万円ずつ投資しても、50円前後の分配金が毎月振り込まれるだけであり、得られた利息が出金手数料に満たない金額にしかならずに引き出そうにも損失が出てしまうというケースも考えられます。
一方、1社に20万円投資していれば、毎月の分配金は1,000円以上になります。年間で12,000円とある程度まとまった金額になりますので、複利投資もしやすくなります。
数万円の投資をする場合は、「まずはサービスの使い方を知りたい」「ソーシャルレンディング投資に慣れたい」「ソーシャルレンディング業界を見極める時間がほしい」などの目的を達成するための手段として考え、ソーシャルレンディングの収益性を最大限に高めていきたいのであれば、少なくても1社ごとに10万円~20万円程度の金額を入れるようにすると良いでしょう。
3 利回りに惹かれてリスクの高い案件に投資してしまう
ここ最近で、ソーシャルレンディング業界で行政処分が下ったのは、『みんなのクレジット』『ラッキーバンク』、そして『グリーンインフラレンディング』の融資を募集していた『maneoマーケット』の3社。行政処分を受ける前、みんなのクレジット・ラッキーバンク・グリーンインフラレンディングはいずれも利回り10%以上の案件を提供していました。
しかし、現在では、みんなのクレジット・ラッキーバンク・グリーンインフラレンディングの3社とも案件の募集を全て停止する危機的状況に陥り、投資家が投資資金を引き出せない状態が続いています。
銀行金利が非常に低い中で、利回り10%以上の案件は、投資家にとって大きなリスクを孕んでいると考えられます。もちろん全ての案件に問題があるという意味ではなく、あくまで一部に限った話です。
ただ、融資の常識から考えて10%以上の利回り案件で貸し倒れが一切起こらないということは不自然です。貸し倒れリスクが高いからこその高い利回りであることを念頭に入れて会社や案件を見極めることが大切です。
きちんとした融資先の事業内容に無理がないか、返済実績がある業者なのかなど、「自分が、その事業者に直接お金を貸しても良いと思えるか」という視点で比較・検討を行った上で、最終的に投資先を決めていいましょう。
また、「投資効率が良さそうだから」と利回り10%以上の案件にリスク性の資産を集中させるのではなく、ローリスク・ローリターンの投資先も複数組み合わせる、ということも重要なポイントです。
4 「源泉徴収されているから」と確定申告をしない
ソーシャルレンディングサービスを提供しているどの会社でも、利回りに対して20.42%の源泉徴収(※)を行った後、投資家の口座に分配金を振り込んでいます。約20%という所得税率は、年間所得が330万円から660万円までの場合に適用(※)されます。※いずれも2018年時点
源泉徴収されているからといって、それ以上の所得がある人が確定申告を行わないままでいると、何年も放置しているうちに納税漏れとみなされ、追徴による課税義務が生じます。また、逆に所得が少ない人であれば、ソーシャルレンディング投資分の確定申告で、納めすぎた所得税から還付されることもあります。
所得の多い人は、所得に応じた適正な税金を納めるために、反対に所得の少ない人は、戻ってくるはずの税金を見逃さないために確定申告をすることが必要です。毎年2月から3月にかけ、確定申告のシーズンが到来します。ソーシャルレンディングによる所得がある人は必ず、確定申告を行うようにしましょう。
5 分散投資をしたつもりが、実際はできていない
ソーシャルレンディング投資では、「リスク対策として分散投資することが重要だ」と言われています。「色々な会社に投資しているので分散投資ができている」「同じ会社の中でも事業内容が違うものにも投資しているので大丈夫だ」と思っている方も少なくないのではないでしょうか。
しかし、投資先の事業内容や名称をよく見ておかないと、分散投資のはずが全くできていないことがあります。例えば、ソーシャルレンディング会社1社を通じて、違う事業内容の会社に投資したとします。ところが、融資を受けている会社が結局、同資本系列の会社だったということもあるのです。
ソーシャルレンディングでは、融資先の名前を開示する義務がありません。ソーシャルレンディング会社が隠そうと思えば、簡単に名前を隠せてしまうのです。融資先について多くの会社では、イニシャルや事業所の所在する地名などの情報を記しています。ただ、それを頼りに投資しても、確実に分散投資ができるとは限りません。
また、色々な会社に投資すれば、分散投資ができると考える人もいます。ただし、投資先の事業分野が重なっている場合、業界全体に問題が発生した際に一気に倒産するリスクを負ってしまうことも考えられます。
たとえば、ソーシャルレンディング業界では不動産投資事業や不動産を担保としている案件は人気が高くなっています。しかし、リーマンショック級の経済危機が起これば、不動産の価格が一気に低下し、不動産関連の案件の多くが貸し倒れになる恐れが強くなります。
そのため、1業界だけではなく複数の業界に、日本だけではなく海外案件への投資を行う、30案件前後に分散して投資する、株式投資やバランスファンドなどソーシャルレンディング以外の投資も並行して行っておくなど、分散投資のポイントを抑えて投資を進めていきましょう。
まとめ
ソーシャルレンディングは、投資先を選んで資金を入れるだけで簡単に投資できてしまいます。その後の運用には一切の手間がかかりません。そのため、適当に投資先を決めてしまう人もいます。
しかし、簡単に投資できるからといって何も対策を行わないのでは、投資リスクがはね上がってしまいます。今後は、限られた情報の中からきちんとリスク対策を行う、また情報をできるだけ開示する会社を選んで投資するなどの戦術が必要になるでしょう。
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HEDGE GUIDE 編集部 ソーシャルレンディングチーム
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