投資信託、トータルリターンと利回りの違いは?それぞれの見方も

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投資信託のトータルリターンと利回りは似たような言葉なので、それゆえにファンド成績の見方がよくわからなくなっている方もいらっしゃるのではないでしょうか。

この記事では、トータルリターンと利回りの違い、そして主なファンド分析指標の一つとなるトータルリターンの詳細について記事にしています。投資信託の指標について知識を整理したい方はご確認ください。

※本記事は投資家への情報提供を目的としており、特定商品・ファンドへの投資を勧誘するものではございません。投資に関する決定は、利用者ご自身のご判断において行われますようお願い致します。

目次

  1. 利回りとトータルリターンの違い
    1-1.トータルリターンの考え方
    1-2.トータルリターンを決める3つの要素
    1-3.分配再投資と特別分配金
    1-4.利回りとは
  2. トータルリターンの計算方法
  3. トータルリターンランキング
  4. トータルリターンを見る時の注意点
    4-1.手数料や税金が考慮されていない
  5. 「分配金利回り」について
  6. まとめ

1.利回りとトータルリターンの違い

トータルリターンと利回りにはどのような違いがあるのでしょうか。2つの指標について、内容を確認しつつ解説を行います。

1-1.トータルリターンの考え方

トータルリターンとは、投資した人が解約した時に実際に受け取る金額を正しく表したものです。支払った買付金額や分配再投資に対して、分配金や解約金など実際に受けとった金額の差額で表されます。分配金は特別分配金か普通分配金かにかかわらず、支払われた分配金として算出する点が特徴です。

以前は、特別分配金(元本払戻金)を連発しているファンドが、元本が減少しているのに収益がプラスになっているように錯覚しやすかったため、トータルリターンという指標が誕生した経緯があります。トータルリターンの誕生により、投資した人は自分の収益を正しく把握できるようになりました。

なおトータルリターンには、手数料や税金は考慮されていませんので注意が必要です。

1-2.トータルリターンを決める3つの要素

トータルリターンの数値を決定する要素3点について解説します。最終的にこの3つの数値を統合して、トータルリターンの金額を決定します。

分配金利回り

分配金利回りとは配当利回りと同じ考え方で、以下の計算式で求められます。

過去1年間の分配金÷基準価額×100

株式の配当利回りは、高配当な株式銘柄を探すときに使われる指標ですが、投資信託でも分配金の成績が良いファンドを探す時に役立ちます。投資信託の場合、特別分配金を出しながら無理に分配金を出し続けているケースがありますので、分配金のペースと基準価額の推移を並列に見なければいけません。

騰落率

騰落率は、一定の期間の始めから終わりの間にどの程度価格が変化したかを表す指標です。基準価額10,000円のファンドが11,000円になれば10%プラスとなります。投資信託の騰落率は、設定来や3ヶ月、5ヶ月、1年、3年、5年などの期間で設定されることが多く見られます。

運用コスト

解約時に受け取る予定の金額から、運用コストなどを差し引いた金額がトータルリターンとして算出されます。

投資信託の運用コストは①購入時、②保有中、③解約時という3つのタイミングで発生します。主な運用コストは以下の通りです。

  1. 購入時手数料
  2. 信託報酬
  3. 信託財産留保額

2021年11月現在では、購入手数料や信託財産留保額は無し、というファンドが増えてきましたので、メインとなる運用コストは信託報酬となります。

1-3.分配再投資と特別分配金

トータルリターンと利回りは、特別分配金や分配再投資の取り扱いについて違いがあります。

分配再投資

分配再投資とは、分配金として受け取った収益をそのまま新規の買付に回すことを指します。分配金をその都度受け取るか、自動的に再投資に回すかは、事前に設定が必要で、途中で変更することもできます。分配再投資を行うと収益分配金の分だけ、その都度元本が増えていくことになります。

特別分配金

特別分配金は元本払戻金とも呼ばれ、10,000円の基準価額が9,000円になっているのにもかかわらず出された場合の分配金のことを指します。特別分配金は収益ではないので非課税です。分配金といいつつも、実際には自分の資産が払い戻されて受け取っているだけなので、個別元本が減っていく状況になります。

以前は、毎月分配金のファンドが純資産を積み上げ、ランキングの上位となっている時期がありました。毎月分配金がもらえると儲けているような気がしますが、実は分配金の内訳が頻繁に特別分配金になっていた、といったことがあり、その経緯でトータルリターン表示が義務付けられました。

1-4.利回りとは

トータルリターンに対して、一般的な利回りの算出計算式を紹介します。

不動産などの投資で用いられる利回りの概念は、投資元本に対してどの程度の収益を得られたか?を測るもので、計算式は以下となり、一般的に1年の期間で計算されます。

収益÷投資元本×100

騰落率は基準価額に対する増減ですが、利回りは投資元本に対する利益の増減である点がポイントです。投資信託の場合、投資元本を削ってでも毎月分配金を出し続けるファンドが存在するため、特別分配金を考慮しないまま収益に分配金を加算すると計算が合わなくなるのです。

分配金を再投資する場合、投資元本が増えることになりますので、この点も考慮しなければいけません。したがって、投資信託の場合、利回りという概念は基本的に用いず、特別分配金や分配再投資、運用コストを含めたトータルリターンで見るということになります。

2.トータルリターンの計算方法

トータルリターンは以下の計算式にて算出されます。

評価金額+受取分配金額-買付金額

買付金額や解約金額に購入手数料、信託財産留保額は入っていませんが、評価金額に信託報酬が勘案されていますので、信託報酬込の運用コストの数字がこの計算式にて算出されます。算出される金額は収益の金額となりますので、%であらわしたい場合、収益込の総額を投資元本で割り算して100をかけると、利回りのような%の数字を算出できます。

トータルリターンの概念と計算式が身についていれば、分配金の金額に惑わされてファンド選びを間違えることがなくなります。

3.トータルリターンランキング

SBI証券の取り扱いファンドより、トータルリターントップ5をピックアップしました(2021年11月15日時点)。
トータルリターンだけに注目してみると、価格変動が比較的穏やかな投資信託でも、年率100%を超えている、もしくは100%付近のファンドがトップ5を占めていました。

ファンド名 基準価額(円) トータルリターン
6ヶ月 1年 3年
1.三菱UFJ国際-eMAXIS Neo バーチャルリアリティ 40,550 -0.36% 143.82%
2.三菱UFJ国際-eMAXIS Neo ナノテクノロジー 25,175 -8.47% 80.17%
3.SBI-SBI 日本株4.3ブル 12,841 -9.65% 125.39% 15.97%
4.楽天-楽天日本株4.3倍ブル 18,511 -9.63% 125.23% 17.37%
5.ファイブスター-ベトナム・ロータス・ファンド 20,456 41.91% 115.32% 25.10%

4.トータルリターンを見る時の注意点

投資信託の正確なパフォーマンスを見る指標として、トータルリターンは重要ですが、注意すべき点もあります。

4-1.手数料や税金が考慮されていない

WEBサイトで確認できるファンドのトータルリターンは、購入手数料、信託財産留保額、換金時の税金は勘案されていません。購入手数料や信託財産留保額が無いファンドも多くなり、かかったとしても税金ほど高額ではありませんが、税金(所得税等)はNISA口座でない限り、利益に対して約2割が源泉徴収されます。

5.「分配金利回り」について

SBI証券のランキングには、分配金利回りという指標がありますが、この計算式は1万口あたりの年間分配金を、12ヶ月前の基準価額で割ったものです。価額の変動には以下の計算式にて対応しています。

【当該月末時点の基準価額が12ヵ月前の月初の基準価額以上の場合(当該月末基準価額≧12ヵ月前の月初の基準価額)】
 分配金利回り(%) = 1年間の分配金累計÷12ヵ月前の月初の基準価額×100

【当該月末時点の基準価額が12ヵ月前の月初の基準価額未満の場合(当該月末基準価額<12ヵ月前の月初の基準価額)】
 分配金利回り(%) = {1年間の分配金累計+(当該月末の基準価額-12ヵ月前の月初の基準価額)}÷12ヵ月前の月初の基準価額×100

注意書きを確認したところ、特別分配金を加味していないようなので、ファンドを選ぶ場合は月次レポートなどの運用成績で分配金成績を確認しましょう。

まとめ

一般的に利回りの考え方は、投資元本に対してどの程度利益が上乗せされているか、もしくはどの程度投資元本が減っているかを示す指標で、トータルリターンは、投資信託特有の特別分配金、分配金の再投資を加味して計算される指標です。また、騰落率はある期間のスタート時点の騰落率に対して増減を表した数値とされており、投資元本に対する計算ではありません。

投資信託の特性上、利回りの計算を持ち込むと正確な数字が分かりにくくなりますので、トータルリターンを見るべきでしょう。トータルリターンは金額を算出するものですが、パーセントで表示にするためには、以下の計算で表すことができます。

投資元本+損益÷投資元本×100

投資信託のパフォーマンスを確認するには、トータルリターンを確認するようにしましょう。

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sayran

「資産形成をより身近に」をモットーに、証券会社にて投資信託を中心にリスクの低い資産形成をオススメしていました。 テキストではよりわかりやすくみなさんの興味分野を解説し、資産形成の理解を広めていきたいと思っています。