不動産を売却する際は「より高値で売りたい」と考える方も多いのではないでしょうか。不動産は売主と買主の相対取引で価格が決まってしまうため、より高く売却するには売主が押さえておきたい売却のコツがあります。
そこで今回のコラムでは、物件を高く売却するための手順や準備のポイント、さらには売却後に必要になる税金についても解説します。
目次
- 賃貸物件を売却する手順とコツ
1-1.不動産査定を依頼
1-2.媒介契約の締結
1-3.売却活動
1-4.不動産売買契約の締結
1-5.賃貸物件の引き渡し - 賃貸物件を高く売却するための準備のポイント
2-1.清掃する
2-2.修繕を行う
2-3.満室にする
2-4.サブリースにする
2-5.ホームインスペクションをする - 賃貸物件を売却するときにかかる税金
3-1.登録免許税
3-2.印紙税
3-3.不動産譲渡所得税 - まとめ
1 賃貸物件を売却する手順とコツ
賃貸物件も不動産ですから、売却の手順は住宅を売却するときと大きく違うところはありません。査定をしてもらうところからはじまり、下記のように進んでいきます。
- 査定を依頼
- 媒介契約の締結
- 売却活動
- 売買契約の締結
- 物件の引き渡し
ただし高く売却するにはそれぞれの手順でコツがあります。次から見てみましょう。
1-1 不動産査定を依頼
不動産を売却するにはまず物件がいくらで売れそうか、査定をしてもらいます。この時、1社だけでなく複数の不動産会社から査定価格を出してもらい、適切な売り出し価格を判断することが重要です。
複数の不動産会社から査定をしてもらうためには、不動産一括査定サービスの利用を検討してみましょう。効率的に不動産会社への査定依頼ができるため、容易に査定価格を比較することが出来ます。
不動産一括査定サイトはそれぞれに特徴があります。下記の一覧を参考に確認してみましょう。
主な不動産一括査定サイト
サイト名 | 運営会社 | 特徴 |
---|---|---|
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【関連記事】不動産査定会社・不動産売却サービスのまとめ・一覧
1-2 媒介契約の締結
査定価格が出揃いましたら、営業担当者の姿勢なども判断して不動産会社を選び、媒介契約を結びます。媒介契約には「一般媒介契約」「専任媒介契約」「専属専任媒介契約」の3つの方法があります。それぞれに特徴があり、メリットとデメリットもあります。物件に合わせて、より良い契約方法を選びましょう。
項目 | 一般媒介契約 | 専任媒介契約 | 専属専任媒介契約 |
---|---|---|---|
複数の不動産会社への依頼 | ○ | × | × |
自分で見つけた買主との単独契約 | ○ | ○ | × |
指定流通機構への登録義務 | 無 | 有 | 有 |
販売活動の報告義務 | 無 | 有 | 有 |
契約期間 | 規制は無し | 3ヵ月以内 | 3ヵ月以内 |
例えば、築浅で最寄駅から近いなど多くの需要が見込める物件なら、「多くの人に見てもらえる一般媒介契約がいいのでは」と判断することもできます。また高額の物件であれば、「資産家や高額所得者との付き合いが多い不動産会社に専属専任媒介契約で依頼したほうがいい」と考えることもできます。
媒介契約の種類に悩むのであれば、契約期間の定めがない一般媒介契約を締結し、売却活動が想定通りに進まない場合に専任媒介へ切り替えることも可能です。それぞれの状況や物件の特性に合わせて、検討してみましょう。
1-3 売却活動
媒介契約を交わしたら、不動産会社が物件の売却活動を行います。ここでポイントとなるのが、実際の売り出し価格は査定価格にとらわれなくてもいいことです。例えば査定価格が4,000万円だったとしても、売り出し価格は売主の判断で決めることができます。買主からの指値(減額)交渉を見越すのであれば、価格を4,400万円にして売り出すことも可能です。
不動産投資をしている多くの投資家は賃貸物件の売買を何度も経験しています。そのため売買交渉に慣れていて、価格の値下げ交渉を行ってくることがあります。そのため売り出し価格はあらかじめ高めに設定しておくことも高値で売却するポイントになるのです。
しかし、「この価格で売りたい」という理想を優先しすぎて、相場とかけ離れた売り出し価格にすると売却期間が長引く可能性もあります。売却を依頼する不動産仲介会社とも相談しながら、慎重に検討しましょう。
1-4 不動産売買契約の締結
買主候補が現れたら条件の交渉に入りますが、値下げ交渉をされることを考えて事前に価格の最低ラインを決めておくといいでしょう。不動産会社にその価格をあらかじめ伝えておくと、買主候補とすり合わせをしてくれることもあります。
値下げ交渉に適切に対応できるよう、類似物件の取引事例などを把握しておくことも重要です。相場の価格を確認しておけば、適切な売却価格の判断ができます。
また問い合わせが多い物件は値下げには応じず、問い合わせがそれほど多くなければある程度の値下げには応じるといったように臨機応変に対応することも必要です。
買主候補と条件の交渉をし、それぞれ内容に納得できたら売買契約を結びます。この際、買主から物件価格の10%~20%の手付金を受領します。
1-5 物件の引き渡し
売買契約の際に決めた引き渡し日が来たら代金を受領し、物件を引き渡します。物件の引き渡しは、所有者を売主から買主に移転する所有権移転登記によって行われます。
2 賃貸物件を高く売却するための準備のポイント
賃貸物件を高く売るためには、「売却しよう」と決めたときから準備をすることが大切です。高く売却するためにどのような準備をすればいいのか、そのポイントを紹介します。
2-1 清掃する
物件が綺麗だと売主が大切にしていたことも伝わり、査定する不動産会社や買主候補にも良い印象を与えることができます。そのためできるだけ綺麗にしておきましょう。
物件の清掃はご自身で行うこともできますが、専門業者に依頼することもできます。一棟アパートであれば外壁や物件の周辺なども、状況に合わせて検討しましょう。
2-2 修繕を行う
前項の清掃同様に、できるだけ物件を綺麗な状態にするために修繕の検討もしましょう。外壁や廊下などにヒビ割れなどがあると、買主候補は「建物が倒壊しないか」などと不安になることもあるからです。またヒビ割れや塗装の剥がれ、手すりなどにサビがあると値下げ交渉で不利になることもあります。
ただし、大規模な修繕やリフォームを行うと、修繕費用を売却価格に上乗せできずに収支がマイナスとなることもあります。大きな費用が掛かる場合には不動産仲介会社とも事前に相談し、費用回収ができる可能性があるかどうか、あらかじめ確認しておくと良いでしょう。
2-3 満室にする
中古の賃貸物件を購入する際、家賃収入がすぐに得られる満室物件を好む投資家もいます。例えば想定利回りが10%で、空室があるため実質利回りが6%の物件より、満室で実質利回りが9%の物件のほうが購入後にすぐに利益が出せるからです。
空室がある状態で売りに出すよりも、可能な限り満室状態に近づけて売りに出したほうが売り出し価格も高めにつけることもできます。
2-4 サブリースにする
家賃保証型のサブリースに管理形態を変更するのも高く売却する手法のひとつです。空室になっても契約期間の間収入が一定となるサブリースは収益の予測が立てやすく、同じ利回りであっても高値売却につながるケースがあります。
ただしリース料がかかるため、相場の家賃収入より手元に残る金額が少なくなるなど、買主側のデメリットもあります。特に築年数の古い物件などはリース料が高くなることもあるため、物件の状態を見て判断しましょう。
2-5 ホームインスペクションをする
ホームインスペクションとは専門家による住宅診断のことです。住宅に欠陥がないか、劣化部分がないかなどを調査してもらいます。ホームインスペクションは主に住宅などの売買の際に行われますが、賃貸物件でも同様にホームインスペクションは有効に活用することができます。
あらかじめホームインスペクションを行うと、相場より高い価格でも「重大な欠陥がある可能性が低い」という付加価値があるため、興味を持ってくれる投資家もいます。
3 賃貸物件を売却するときにかかる税金
賃貸物件を売却するときに意外と忘れてしまうのが税金のことです。売却はしたけど税金が納められないといったことがないように、あらかじめ把握しておきましょう。賃貸物件の売却には次の3つの税金がかかります。
3-1 登録免許税
登録免許税は所有権の移転や抵当権の設定および抹消にかかる税金です。納税義務は売主と買主のどちらにもあります。ただし慣例としては、以下のように分担されます。
- 買主:所有権の移転にかかる登録免許税、抵当権を設定する場合の登録免許税
- 売主:抵当権が残っていた場合に抹消する際の登録免許税
登録免許税は1つの不動産につき1,000円です。アパートやマンションの場合は建物と土地と分けて登録免許税が必要になりますので、2,000円が必要ということになります。
3-2 印紙税
行政関係の書類には手数料の代わりに収入印紙を貼ることが印紙税法で定められています。この書類は課税文書と呼ばれ、全部で20種類あります。第1号から第20号まであり、そのうち不動産売買契約書は第1号文書にあたります。
この第1号文書に貼付する印紙税額は、記載された金額によって下記のように決まっています。
文書に記載された金額 | 貼付する収入印紙の金額 |
---|---|
100万円を超え500万円以下 | 2,000円 |
500万円を超え1千万円以下 | 1万円 |
1000万円を超え5000万円以下 | 2万円 |
5000万円を超え1億円以下 | 6万円 |
1億円を超え5億円以下 | 10万円 |
※参照:国税庁「 No.7140 印紙税額の一覧表(その1)第1号文書から第4号文書まで」より抜粋
不動産売買契約書に貼付する収入印紙は、どちらが払うのか決まりはありません。ただし、売買契約書の原本は買主が持つことになるので、買主が負担することが多いです。不動産会社から収入印紙について話があった際は調整をするようにしましょう。
3-3 不動産譲渡所得税
不動産譲渡所得税とは、不動産を売却した際に所得があった場合にのみ発生する税金です。求める計算式は下記になります。
収入金額−(取得費+譲渡費用)−特別控除額=課税譲渡所得金額
具体的には収入金額とは売却した価格で、物件を購入したときの費用から減価償却費を差し引いた取得費と、売却する際にかかった仲介手数料などの譲渡費用を差し引いた金額が課税譲渡所得金額となります。
この譲渡所得は、賃貸物件の所有期間が5年以内であれば短期譲渡所得税、所有期間が5年以上であれば長期譲渡所得税に分かれます。税率は下記のようになります。
- 短期譲渡所得税=課税短期譲渡所得金額×30%(住民税9%)
- 長期譲渡所得税=課税長期譲渡所得金額×15%(住民税5%)
※参照:国税庁「No.1440 譲渡所得(土地や建物を譲渡したとき)」
2037年までは、各年分の基準所得税額の2.1%を復興特別所得税として、所得税と併せて申告および納付することになっています。
なお、譲渡所得税の計算や確定申告については税理士への相談も検討してみましょう。税理士報酬がかかる点はデメリットですが、税理士に依頼することで正確な納税額を知ることができ、確定申告書の作成を代行してもらうことが可能です。
普段依頼している税理士がいない場合には、無料で全国5,900名の税理士の中から希望に沿った税理士を紹介してもらえる「税理士ドットコム」というウェブサービスの利用を検討してみましょう。複数の税理士を比較することができるうえ、「費用はいくら?」「どんな税理士を選ぶべき?」といった税理士を選ぶ際の相談も可能となっています。
【関連記事】不動産売却にかかる税金はいくら?計算手順や税控除に使える特例も紹介
まとめ
賃貸物件を高く売るためのポイントを紹介しました。「不動産一括査定サイトを使う」「満室にする」「管理形態を変更する」などいくつかありますので、ご自身でやりやすい方法、物件にふさわしい方法を検討してください。
また、賃貸物件の購入をする方の多くは実需目的ではなく、不動産投資を目的とした投資家の方です。売主の希望を優先させすぎず、相場に沿った売出価格の設定や買主にもメリットのある交渉をするなど、一つずつ丁寧に対応していくことが大切です。
倉岡 明広
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