不動産のローンを完済した時・売却を行う際には、抵当権抹消の手続きが必要となります。
「不動産を売却し、売却代金でローンを完済する」といったケースでは、確実に抵当権を抹消する必要があるため、自身では行わず司法書士に依頼することになります。
一方で、ローンの支払いを終えた場合の手続きは法務局に必要書類を持参・郵送・オンライン申請のいずれかの方法によって、所有者自身で行うことも可能です。
本記事では抵当権抹消手続きの手順や必要書類、自身で手続きができるケース・できないケースなどの注意点を解説していきます。
目次
- 抵当権抹消の手続きとは
- 抵当権抹消手続きの手順・必要書類とは?
2-1.金融機関から各種証明書類を受け取る
2-2.必要書類を準備する
2-3.法務局の窓口・郵送・オンラインで申請する - 抵当権抹消手続きの注意点
3-1.司法書士に依頼したほうが良いケース
3-2.相続登記と同時に行う場合 - まとめ
1.抵当権抹消の手続きとは
抵当権とはローン契約者が返済できなくなった際、金融機関(債権者)が残債を回収するために不動産を差し押さえ競売にかけられる権利を指します。
ローンを完済した時や不動産を売却する前には、必ず「抵当権抹消登記」の手続きを行いましょう。
抹消手続きを行わなかった場合、不動産を売却する時や新たに融資を申し込む際に売却できない、融資審査に通らないといったトラブルに繋がる可能性があります。
2.抵当権抹消手続きを自身で行う手順・必要書類
抵当権抹消手続きの手順や必要書類は以下の通りになります。
- 金融機関から各種証明書類を受け取る
- 必要書類を準備する
- 法務局の窓口・郵送・オンラインで申請する
2-1.金融機関から各種証明書類を受け取る
ローンが全額返済された際には、金融機関から書類が送られてきます。例えば住宅金融支援機構では以下の4点が送付されます。
- 金銭消費貸借抵当権設定契約証書
- 抵当権解除証書(登記原因証明情報)
- 抵当権抹消についての委任状
- 登記識別情報を入れた封筒(登記識別情報がある場合のみ)など
「抵当権抹消についての委任状」は、抹消手続きを家族や司法書士など、契約者以外の方が行う場面で利用します。
2-2.必要書類を準備する
抵当権抹消手続きに必要となる書類は以下の通りです。
- 抵当権抹消登記申請書
- 登記識別情報(又は登記済証)
- 登記原因証明情報(弁済証書・解除証書など)
法人の場合
- 会社法人等番号
代理人が申請する場合
- 委任状(代理権限証明情報)
登記識別情報は、登記識別情報を記載した書面を封筒に入れ提出します。封筒には抵当権者の名前と登記の目的を記載し、登記識別情報を記載した書面が在中する旨を明記します。
登記済証(権利証)は原本を提出し、登記完了後に返却されます。何らかの事情で登記識別情報又は登記済証を提出することができない場合には、申請書の理由(不通知・失効 失念・管理支障・取引円滑障害・その他)にチェックをします。
抹消登記の費用は登録免許税として、不動産1個につき1000円を支払います。土地1個と建物1個(計2個)を1度に申請する場合には合計2000円です。
登録免許税は、原則として現金で納付を行いますが税額が3万円以下の場合には収入印紙を郵便局やコンビニエンスストアで購入し、印紙で納付をすることができます。
現金で納付する場合には領収書を貼り付けた用紙、収入印紙で納付する場合には収入印紙(割印や消印は不可)を貼り付けた用紙を、申請書と一括してつづり申請人又は代理人がつづり目に契印を行います。
不明な点がある場合には、法務局に事前に電話で予約を取り相談してみましょう。
2-3.法務局の窓口・郵送・オンラインで申請する
申請の方法は、不動産が所在する法務局の窓口へ書類を持参する、郵送、オンラインの3つの中から選ぶ事ができます。
法務局は午前9時から午後5時15分までが開庁時間で、土日祝日は休みです。法務局で申請するとその場で必要書類の正誤や受付の可否を知る事ができますが、平日の昼間に出向く事が難しい方は郵送又はオンラインの利用を検討しましょう。
郵送の場合、申請書と必要書類を入れた封筒の表面に「不動産登記申請書在中」と記入し、書留郵便で送付します。申請書はA4の用紙で他の必要書類と共に左とじにしておきます。
オンライン申請の受付は平日の8時30分から21時までとなっており、17時15分を過ぎて申請情報がシステムに送信された場合は、送信日の翌日(翌業務日)に受け付けます。
「登記・供託オンライン申請システム」で「申請用総合ソフト」をダウンロード、インストールを行います。ソフトを用いて申請書作成、書類を添付し、電子署名を行い申請します。
電子署名を行うためには「公的個人認証サービスポータルサイト」により、「電子証明書」を取得する必要があります。電子証明書を取得するためにはマイナンバーカードが必要となりますので、まだマイナンバーカードの申請を行っていない方はご注意ください。
なおオンライン申請では添付できる書類が限られており、郵送が必要となるケースがあります。
それぞれの方法で申請を行い、法務局で審査が行われおよそ10日以内に手続きは完了です。登記が終了した後は「登記事項証明書」により抵当権抹消の証明が出来ますが、証明書の取得には600円の費用を支払うことになります。返送書類がある場合には、法務局から書類が郵送されます。
3.抵当権抹消手続きの注意点
抵当権抹消の手続きは、売却した代金でローンを完済する場合や、イレギュラーなケースなどでは、司法書士に依頼することを検討しましょう。
また相続により不動産を取得し、抵当権抹消と相続登記の手続きを同時に行わなければいけない時には、先に「所有権移転登記」を行う必要があります。以下、これらの注意点について詳しく解説していきます。
3-1.司法書士に依頼したほうが良いケース
抵当権の抹消手続きは自身で行う事が出来ますが、以下のケースでは司法書士への依頼を検討しましょう。
- 売却する予定の不動産の抵当権を抹消する場合
- 自身で手続きする時間がない、手間をかけたくない
- イレギュラーな事例
不動産を売却し売却した代金でローンを一括返済する場合には、売主の都合だけでなく買主の所有権移転や買主側の抵当権設定など、様々な事情が加わります。確実な手続きを行う必要があるため、原則的には司法書士に依頼することになります。
特に売主指定の司法書士がいない場合、不動産売却の仲介会社が司法書士を紹介してくれます。不動産仲介会社がまだ定まっていない場合には、複数の会社の査定を受け、査定価格や査定の根拠を比較しながら慎重に検討してみましょう。
【関連記事】不動産売却はどこに依頼する?評判の良い不動産会社を見極めるポイント3つ
また、自身で手続きする時間がない方や手続きが面倒な方は、金融機関から送られてきた書類を司法書士に渡し、手続きを依頼することで時間や手間を省くことができるでしょう。報酬の費用が掛かりますが、このような場合にも依頼を検討できます。
その他、古い抵当権を抹消する場合や、住所・氏名の変更がある場合などイレギュラーな事例では権利関係が煩雑となり、自身では対応できないケースもあります。このような場合も、司法書士に依頼する事で手続きが可能となる可能性が高くなります。
3-2.相続登記と同時に行う場合
相続財産の中に不動産があり、抵当権が設定されているため、ローンを完済して相続する場合には、抵当権抹消手続きと相続登記を必要があります。
被相続人(亡くなった方)から相続人に所有権移転の登記を行った後、相続人が抵当権抹消の手続きを行う流れとなります。登記手続きが続くため、相続と抵当権設定の両方を受け持ってくれる司法書士を探すことを検討してみるのも良いでしょう。
まとめ
抵当権抹消登記は金融機関から送られてきた書類を、申請書と一緒に郵送又は法務局へ持参・オンラインで申請する事により手続きを行うことが可能です。
ただし、売却した代金でローンを完済するケース、イレギュラーな事例などの場合には司法書士に手続きを依頼しましょう。
この記事を参考に抵当権抹消の概要や流れを把握し、スムーズな手続きを行っていきましょう。
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田中 あさみ
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