「投資のリターンを得ながら社会貢献したい」「資産運用と寄付を両立したい」という方は多いのではないでしょうか。
近年、投資信託の収益や信託報酬(運用中の手数料)の一部を寄付する投資信託が増えています。
本記事では投資と寄付の両立について、投資しながら寄付もできる3つのファンド、注意点を解説していきます。
※本記事は投資家への情報提供を目的としており、特定商品・ファンドへの投資を勧誘するものではございません。投資に関する決定は、利用者ご自身のご判断において行われますようお願い致します。
目次
- 投資と寄付の共通点、両立する方法
- 投資しながら寄付もできる投資信託の銘柄・ファンド3つ
2-1.コモンズ30ファンド
2-2.「志」プロジェクト
2-3.イノベーティブ・カーボンニュートラル戦略ファンド - 寄付ができる投資信託を購入する際の注意点
- まとめ
1.投資と寄付の共通点、両立する方法
投資は金融商品の売買や保有などの方法によって資産運用を行い、利益を得る行為です。
例えば、株式投資であればその資金は投資先の企業の事業活動に利用され、新しいサービスや雇用が生まれることになります。このように、投資は寄付と同様に「今すぐお金を必要としない人」が「お金を必要としている人」にお金を回すという点に共通点があると言えるでしょう。
ただし、投資は出資割合に応じてリターンを得ることができますが、寄付は「困っている人を支援する」「社会にとって大切な活動を応援する」などの目的で行われ、返礼品が用意されているようなふるさと納税などの一部例外を除き、寄付額に応じたリターンを期待することはありません。
投資と寄付にはこのような違いがありますが、投資利益を得ることと支援を両立する方法として、収益・信託報酬の一部を寄付する投資信託があります。
寄付ができる投資信託では、運用会社が運用により得た収益や信託報酬の一部を寄付することで、必要としている人に金銭を贈ることが可能となります。また、投資信託であるため、売却益や配当金が得られた場合には投資家も金銭的なリターンが得られます。
2.投資しながら寄付もできる投資信託の銘柄・ファンド3つ
- コモンズ30ファンド
- 「志」プロジェクト
- イノベーティブ・カーボンニュートラル戦略ファンド
2-1.コモンズ30ファンド
コモンズ30ファンドは、国内企業30社の株式に投資する「日本株の長期集中投資ファンド」です。投資先はコモンズ投信株式会社が「真のグローバル企業」として約30銘柄を厳選し、30年に渡って運用します。
長期・分散・積立投資を推進する非課税制度のつみたてNISAにも対応しており、信託報酬の一部は社会起業家を応援する独自の寄付プログラム「コモンズSEEDCap」に充てられます。
コモンズ投信株式会社では、長期的な視点で投資先の企業と積極的に対話をおこない、投資先企業と投資家が対話できる交流セミナーも積極的に開催しています。
投資先企業には2022年9月時点で、味の素株式会社・丸紅株式会社・株式会社セブン&アイ・ホールディングス・株式会社小松製作所などがあります。リターンを得ながら日本企業を支援したい方、起業家を応援したい方に適しているファンドの一つです。
2-2.「志」プロジェクト
野村アセットマネジメントの「志」プロジェクトは、地域金融機関と連携して地方創生応援税制(企業版ふるさと納税)の仕組みを活用したシステムです。
野村アセットマネジメントのESG運用戦略商品(ファンド)を取り扱う各地域金融機関の販売残高に応じて、ファンドから得られる収益(信託報酬)の一部を企業版ふるさと納税により寄付します。
ESGとは環境(Environment)、社会(Social)、統治(Governance)の頭文字をとったもので、環境・社会・統治を意識し投資先を選定することをESG投資と呼びます。
例えば、CO2排出削減(環境)に取り組む企業や、労働環境を改善する(社会)企業、株主の利益を実現できるように管理・監督するシステムを構築・整備する(統治)企業などへの投資が当てはまります。
志プロジェクトの対象ファンドは「グローバルESGバランスファンド」「世の中を良くする企業ファンド」の2つです。
グローバルESGバランスファンド
グローバルESGバランスファンドはESGの観点を考慮しながら、世界の債券・株式・REIT(不動産投資信託)の3つの資産に分散して投資します。
2022年8月時点で、米ドル建てESG先進国社債マザーファンド※、ACIESGグローバル小型株マザーファンドなど債券が50%、株式が25%、REIT25%の割合で運用されています。
※マザーファンド:複数の投資信託を一括して運用するファンド
世の中を良くする企業ファンド
世の中を良くする企業ファンドはSDGs(持続可能な開発目標)・ESGなど社会的課題に解決に取り組みながら成長が期待できる国内の企業に投資するファンドです。
「世の中を良くする企業」への投資を通じ、環境問題や高齢化社会など社会的課題の解決に貢献しながらリターンの獲得も目指すことが可能です。
ファンドの組み入れ銘柄として、2022年8月末時点で日立製作所・ダイキン工業・中外製薬・ユニ・チャームなどの企業があります。
例えば、ダイキン工業は省エネエアコンの普及による環境負荷の低減、ユニ・チャームは新興国で生理用品や紙おむつなど衛生用品の社会的認知の向上や事業拡大を積極的に行っていることが評価され選定されました。
2-3.イノベーティブ・カーボンニュートラル戦略ファンド
イノベーティブ・カーボンニュートラル戦略ファンドは、三井住友DSアセットマネジメントが世界の上場株式から主に脱炭素化社会実現に向けた取り組みやイノベーションに貢献する企業を選定する投資信託です。
カーボンニュートラルとは、温室効果ガスの排出量と吸収量をトータルでゼロにすることを意味します。
二酸化炭素をはじめとする温室効果ガスの「排出量」から、植林・植樹・森林管理などによる「吸収量」を差し引いて合計をゼロにする取り組みで、日本を含めて120以上の国と地域が「2050年カーボンニュートラル」という目標を掲げています。
カーボンニュートラル戦略ファンドには2022年8月末時点でアメリカの太陽光発電装置開発・製造企業、天然ガス・水素関連の低温システム機器製造企業などが組み入れられています。
なお、2022年4月には三井住友DSアセットマネジメント株式会社が同ファンドで得た収益の一部合計1,500万円を国立研究開発法人理化学研究所、公益財団法人地球環境産業技術研究機構」に寄付しています。
寄付先の国立研究開発法人理化学研究所はSDGs、カーボンニュートラルを目指す「パリ協定」を指標とし研究を行っており、地球環境産業技術研究機構は革新的な環境技術の開発、二酸化炭素(CO2)吸収源の拡大を国際的に推進する研究機関です。
3.寄付ができる投資信託を購入する際の注意点
寄付と投資を両立させるために、収益や信託報酬の一部を寄付する投資信託の購入を検討する方はファンドの「交付目論見書」や「運用報告書」チャート、組み入れ銘柄、運用方針などをチェックしておきましょう。
「運用報告書」や最新の組み入れ銘柄を見ずに購入してしまうと「貧困問題に取り組む企業を応援したい」という方が、環境問題解決に向けた企業が多く組み入れられているファンドを購入してしまうといったことにもつながります。
また、継続的な支援を行うためにも、投資家として収益を得る事も重要なポイントです。過去の運用実績、投資先企業の将来性などを考慮し、ファンドを選びましょう。
投資信託への投資は、銀行預金とは違って元本保証のない資産運用の方法となります。元本棄損のリスクがあるという点に注意し、余裕資金で投資を行うなどの対策を取っておくことも大切です。
まとめ
投資と寄付の両立と、投資しながら寄付もできる3つのファンド、購入にあたっての注意点をお伝えしてきました。
寄付ができる投資信託を購入する際には、自身の希望に沿った寄付と資産運用ができるように投資先企業や運用方針・実績などを調べ、検討した上で購入することを心がけましょう。
田中 あさみ
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