実物資産であるマンションは、景気の動向や不動産の需要と供給バランスなどによって価格が変動します。また、経年劣化によって時間経過とともに緩やかに資産性が失われているため、売却を検討しているのであれば適切なタイミングを推し測るのは重要なポイントとなります。
そこで今回の記事では、マンション売却のタイミングを知る上で重要な判断のポイントについて解説していきます。
目次
- 社会的な情勢によるマンション売却のポイント
1-1.新築マンションの価格が上昇しているか
1-2.金利は上がりそうか - シーズンによるマンション売却のポイント
2-1.住宅に対する需要が増加するのは2月と3月 - 価格の変動によるマンション売却のポイント
3-1.資産価値は下落していないか
3-2.大規模修繕工事が終わったのはいつか - 支払う税金によるマンション売却のポイント
4-1.長期譲渡所得が適用されるかどうか
4-2.相続したマンションかどうか - まとめ
1 社会的な情勢によるマンション売却のポイント
中古住宅の市場は社会的な情勢や景気に合わせて変動することがあります。そのため今、社会がどうなっているのか、景気がどのような状態かを知ることもマンション売却のタイミングを判断する際に役立ちます。
1-1 新築マンションの価格が上昇しているか
中古マンションの価格は、新築マンションの価格と連動する傾向があります。この背景には、新築マンションの価格が中古マンションの価格の近くまで下落すると、中古マンションの需要が減少して価格下落につながることが要因として考えられます。
新築マンションの価格を確認しておくことで、不動産市場の全体的なトレンドを把握することに繋がります。例えば、国土交通省が発表している「不動産価値指数」の2021年3月のデータから、不動産価格指数と対前月比を確認してみましょう。
東京・愛知・大阪の不動産価値指数(2021年3月)
都道府県 | 不動産価値指数 | 対前月比 |
---|---|---|
東京都 | 159.6 | ▲0.5 |
愛知県 | 165.6 | ▲0.1 |
大阪府 | 161.7 | ▲2.8 |
※参照:国土交通省「不動産価値指数(令和3年3月)」
上図の不動産価格指数は、2010年を100として、数字が高ければ価格上昇が起きているということを表しています。2021年3月時点の3都府県は、2010年よりも1.5倍以上に不動産の価値が上がっていますが、前月比でみると、それぞれ下落していることが分かります。
これらのデータから、長期的なトレンドとして上昇傾向にあった一方で、短期的には下落トレンドとなる可能性があることが分かります。このような不動産市場のトレンドを掴むことで、中古マンションの売りどきを考える際にも役立てることが出来るでしょう。
1-2 金利は上がりそうか
住宅ローンの金利は、住宅の購入意欲に大きな影響をおよぼします。住宅ローンは20年や30年といった長期にわたって返済していくため、金利が少し違うだけで返済総額は大きく違うからです。そのため、金利が上昇した場合は購入するのを控える人も出てきます。
金利が上昇して中古マンションが売れにくくなると、値崩れが起きやすくなり、価格を下げたり、売却まで時間がかかったりという事態が起きます。そのため金利について見極めることもマンションの売却タイミングの判断材料となります。
2 シーズンによるマンション売却のポイント
次に判断ポイントとなるのはシーズンによるタイミングです。毎年決まったシーズンにマンション市場が活況となる傾向があるためです。
2-1 住宅に対する需要が増加するのは2月と3月
1年のうちで最も住宅に対する需要が増加する2月と3月です。これには、4月から新年度や新学期が始まり、転勤や入学、さらには就職などで新しい住居を購入する必要があることが要因として考えられます。(※参照:不動産流通機構レインズ月例速報2020年03月度「中古マンションの年月別成約件数(東京)」)
マンションの売却を2月に行うためには、11月頃から準備を始めると良いでしょう。複数の不動産会社から査定価格を提示してもらい、12月には売却を依頼する不動産会社と媒介契約を結んでおきます。1月になったら、市場の状況やタイミングを見て売り出しを始めるという流れにします。
3 価格の変動によるマンション売却のポイント
マンションの資産価値は物件の状態によって変動していきますので、できるだけ資産価値の高いうちに売却することも方法のひとつです。
3-1 資産価値は下落していないか
建築物であるマンションは築年数が経つごとに資産価値が下がり、売却額も下がっていきます。築年数によって資産価値がどれくらい下落するのか確認してみましょう。
下記は、東日本不動産流通機構が発表した「首都圏中古マンション・中古戸建住宅地域別・築年帯別成約状況【2021年01~03月】」から抜粋した数値を表にしたものです。
首都圏 | 〜築5年 | 〜築10年 | 〜築15年 | 〜築20年 | 〜築25年 | 〜築30年 | 築30年〜 |
---|---|---|---|---|---|---|---|
㎡単価(万円) | 92.4 | 80.7 | 68.9 | 62.6 | 52.2 | 35.3 | 34.4 |
※参照:東日本不動産流通機構「首都圏中古マンション・中古戸建住宅地域別・築年帯別成約状況【2021年01~03月】」
首都圏で売買が成立したマンションにおける㎡の単価は、築5年に比べて築10年では約87%、築20年では約68%、築30年では約38%に下落していきます。このような資産価値の下落状況も確認しながらタイミングを見計らいましょう。
3-2 大規模修繕工事が終わったのはいつか
売却する物件をリフォームして売り出すことはありますが、マンション自体に古さを感じたり、不備があることで、成約に結びつかないこともあります。
しかし、マンションが大規模修繕工事を行ったあとであれば、買主候補へのアピールとなります。大規模修繕工事では外壁塗装や屋上防水工事、耐震工事、共用部分の内装工事などが行われ、見た目と機能が改善されているからです。
大規模修繕工事のタイミングは個々のマンションで違います。売却を検討しているのであれば、管理組合に大規模修繕工事の時期を確認してみましょう。マンションの売却をそのタイミングに合わせられるのであれば、大規模修繕工事のあとに売却できるよう準備を進めるのも一つの手です。
4 支払う税金によるマンション売却のポイント
マンションを売却して利益が出た場合、その利益は譲渡所得になり税金が発生することになります。この税金はマンション売却時期によって変動することもあります。そのため売却のタイミングに影響を与えることがありますので、詳しく見てみましょう。
4-1 長期譲渡所得が適用されるかどうか
不動産を売却した際に利益が出た場合は譲渡所得になりますので、所得税と住民税を支払うことになります。しかしこの譲渡所得には不動産の所得期間によって種類があり、税率も違います。
- 短期譲渡所得税=課税短期譲渡所得金額×30%(住民税9%)
- 長期譲渡所得税=課税長期譲渡所得金額×15%(住民税5%)
※参照:国税庁「No.1440 譲渡所得(土地や建物を譲渡したとき)」
上記を見て分かる通り、5年を超えた長期譲渡所得のほうが税率は低いため支払う税金は安くなります。つまりマンションを売却するには5年経ってからのほうが、所得税の大きさから見るといいということです。
ただし譲渡所得は譲渡益がある場合のみです。下記の計算式を用いて、利益が出るのかどうか確認しましょう。
課税譲渡所得金額=収入金額−(取得費+譲渡費用)−特別控除額
なお、投資用マンションではなく、実際に居住しているマンション(マイホーム)である場合は「居住用財産を譲渡した場合の3,000万円の特別控除の特例」を適用できる可能性があります。この特例を適用することで、所有期間の長短に関係なく譲渡所得から最高3,000万円まで控除が可能です。(※参照:国税庁「マイホームを売ったときの特例」)
マイホームを売った時の特例については、下記の記事でも解説をしています。譲渡所得税について気になる方はご参考下さい。
【関連記事】自宅の売却で適用したい5つの特例とは?それぞれ適用の流れと条件を解説
4-2 相続したマンションかどうか
相続不動産3年10カ月以内に売却すると、「相続税の取得費加算」と呼ばれる特例を適用できる可能性があります。この特例は、相続又は遺贈により取得した土地、建物、株式などの財産を一定期間内に譲渡した場合に、相続税額のうち一定金額を譲渡資産の取得費に加算することができます。(※参照:国税庁「相続財産を譲渡した場合の取得費の特例」)
譲渡所得を計算するには、収入金額(不動産の売却代金と固定資産税などの精算金の合計額から算出)から取得費と譲渡費用を控除しますが、所得税の一部を取得費に上乗せできるのです。そのため譲渡所得が少なくなるメリットがあります。
この「相続税の取得費加算」が適用になるには、相続開始日から3年10カ月までとなります。相続不動産の場合、このようなタイミングも検討材料としておくと良いでしょう。
まとめ
適切なマンション売却のタイミングを知ることで、適切な価格で、早期に売却できる可能性があります。その一方で、タイミングを間違えてしまうと、期待した売却額にならないことも少なくありません。
マンションの市場などを見たり、不動産会社にアドバイスをもらいながら、自分にとってふさわしいタイミングで売却できるようにしていきましょう。
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倉岡 明広
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