自宅の売却で適用したい5つの特例とは?それぞれ適用の流れと条件を解説

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自宅を売却する際に譲渡所得が生じることがあります。譲渡所得には税金が課されるため、不動産を高く売れたとしても売却益の全てを自由に使えないことがあります。

この記事では、自宅の売却で生じた利益に課される税金を控除できる可能性のある5つの特例や適用の流れ・条件を解説します。

※記事内の税金・税率などは2021年3月時点の情報となります。最新の情報については、国税庁のウェブサイトをご確認のうえ、税理士などの専門家へのご相談もご検討ください。

目次

  1. 自宅の売却で適用したい5つの特例
    1-1.3,000万円の特別控除
    1-2.軽減税率の特例
    1-3.買換え特例
    1-4.損益通算および繰越控除の特例(買換え)
    1-5.損益通算および繰越控除の特例(オーバーローン)
  2. 特例を利用する際の注意点
  3. まとめ

1.自宅の売却で適用したい5つの特例

自宅の売却によって利益が生じた場合、譲渡所得として扱われるため、課税対象となります。譲渡所得は以下のような計算式で算出します。

譲渡所得=譲渡価額-取得費-譲渡費用

譲渡価額は自宅の売却価額、取得費は不動産の購入価格(建物は減価償却費を控除)、譲渡費用は自宅の売却にかかった諸経費(仲介手数料、印紙税など)です。

プラスの場合を譲渡益、マイナスの場合を譲渡損失と表現し、譲渡益が生じた場合は所得税、住民税、復興所得税が課されることになります。所得税の税率は、建物の所有期間によって以下のように異なります。

所有期間 所得税 住民税 合計税率
5年以下(短期) 30.63% 9% 39.63%
5年超(長期) 15.315% 5% 20.315%

※所得税に復興特別所得税2.1%が上乗せ

この譲渡所得に対し、以下の5つの特例が適用されれば課税額を減額できる可能性があります。

  • 3,000万円の特別控除
  • 軽減税率の特例
  • 買換え特例
  • 損益通算および繰越控除の特例(買換え)
  • 損益通算および繰越控除の特例(オーバーローン)

それぞれの特例について詳しく見ていきましょう。

1-1.3,000万円の特別控除

3,000万円の特別控除とは、自宅の売却によって譲渡益が生じた場合に3,000万円までは非課税となる特例です。建物の所有期間の長短に関係ないため、適用しやすい特例と言えるでしょう。

ただし、3,000万円の特別控除は、売買を繰り返すたびに適用できるものではありません。3年に1度しか適用できず、前年、前々年に軽減税率の特例を除く他の適用を受けていれば適用できない点に注意しましょう。

※参照:国税庁「マイホームを売ったときの特例

1-2.軽減税率の特例

軽減税率の特例とは、所有期間10年超の居住用財産を譲渡した場合に、税率が軽減される特例です。所有期間が10年を超えた場合、課税譲渡所得がいくらなのかによって、税率は以下のように異なります。

課税譲渡所得 所得税 住民税 合計税率
6,000万円以下の部分 10.21% 4% 14.21%
6,000万円超の部分 15.315% 5% 20.315%

※所得税に復興特別所得税2.1%が上乗せ

前年、前々年にこの特例の適用を受けていなければ適用対象となり、6,000万円超の部分の税率は変わりませんが、6,000万円以下の部分の税率が低くなります。

ただし、所有期間が10年を超えていても、特例が適用されないケースもあります。例えば、2010年4月1日に取得した自宅を2020年5月1日に売却する場合、一見して10年経過しているとも考えられます。

しかし、所有期間は自宅を売却した年の1月1日時点を基準とするため、上記の場合には所有期間9年となります。2021年1月1日以降になってようやく10年超を満たしたことになるという点に注意が必要です。

※参照:国税庁「マイホームを売ったときの特例

1-3.買換え特例

買換え特例とは、自宅を買換える際に、一定の要件を満たした場合に限り、譲渡益に対する課税を将来に繰り延べられる特例です。2021年の12月31日までに自宅を譲渡した場合に限定されます。

譲渡価額が買換え住居の取得価額よりも上回る場合は一部課税、譲渡価額が下回る場合は買換え時に課税されず、将来に繰り延べられます。

ただし、この特例は以下のように適用条件が複雑なので注意が必要です。

  • 売却した年の1月1日時点で所有期間が10年を超えている
  • 売却価額が1億円以下
  • 居住期間が10年を超えている
  • 買換えた住宅の床面積が50㎡以上、土地面積が500㎡以下
  • 中古住宅の場合は築25年以内

また、前年、前々年に3,000万円の特別控除、軽減税率の特例を受けていないことも条件に含まれます。軽減税率の特例のケースと同様、建物の所有期間の算出に注意しましょう。

※参照:国税庁「特定のマイホームを買い換えたときの特例

1-4.損益通算および繰越控除の特例(買換え)

2021年12月31日までに自宅を買換えるために、自宅を売却して譲渡損失が生じた場合、損益通算および繰越控除の特例を適用すれば源泉徴収された税金が戻ってきます。

ただし、この特例も以下のように適用条件が複雑なので注意が必要です。

  • 所有期間が売却する年の1月1日時点で5年を超えている
  • 自宅は譲渡した年の前年の1月1日から翌年12月31日までに取得する
  • 居住部分の床面積が50㎡以上
  • 取得の日から取得した年の翌年12月31日までに居住の用に供する

例えば、2020年に自宅を売却して1,000万円の損失が生じた場合に、2020年の給与所得が400万円だったとすると、損益通算すれば所得がマイナスとなるため、非課税となります。

1年で相殺できなければ翌年以降3年は繰り越せるため、2021年以降も同じ給料の場合は2021年も非課税、2022年は200万円の所得が生じるので税金が課されます。

前年、前々年に他の特例の適用を受けていないことが条件となるので覚えておきましょう。

※国税庁「マイホームを買い換えた場合の譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例

1-5.損益通算および繰越控除の特例(オーバーローン)

売却した不動産の住宅ローンの残高が売却価額よりも大きいオーバーローンのケースでも、損益通算および繰越控除の特例を適用できます。

内容は買換えの損益通算および繰越控除の特例と同様で、適用条件も買換え資産に関する条件を除いたものを満たしている必要があります。

※国税庁「特定のマイホームの譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例

2.特例を利用する際の注意点

ここまでご紹介したように、自宅を売却する際に適用できる特例はいくつかあります。これらの特例を適用するためには、どんな条件を満たしておかなくてはならないのかを確認しておくことが重要です。

例えば、いずれの特例もマイホームの売却が前提となります。マイホーム売却の定義は以下の通りです。

  • 現在主として居住する自宅を売却した
  • 居住の用に供さなくなった日から3年を経過する日の属する年末までに売却した
  • 上記範囲内で家屋を解体した日から1年以内に敷地の契約を締結した
  • 転勤による単身赴任中に配偶者等が居住している家屋を売却した

また、3,000万円の特別控除、軽減税率の特例、買換え特例を利用する場合は、住宅ローン控除との併用はできません。また、3,000万円の特別控除と軽減税率の特例は併用できても、買換え特例は併用できないといった制限もあります。

さらに、配偶者、親、子といった直系血族、生計を一にする親族、同族会社等が譲渡先だと適用できません。

各種特例を適用するには、譲渡した年の翌年の2月16日から3月15日の間に確定申告が必要です。確定申告の手順や特例の適用可否の判断が難しい場合は、税理士への相談も検討してみましょう。

3.まとめ

この記事に書かれている5つの特例を適用すれば、譲渡益に対して課される税金を控除したり減額できる可能性があります。

しかし、各種特例を適用するためにはそれぞれの条件を満たす必要があります。また、特例の申請には確定申告をする必要があります。

確定申告の手順やどの特例が適用できるかが分からない場合は、税理士への相談も検討しながら進めてみると良いでしょう。

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矢野翔一

関西学院大学法学部法律学科卒。宅地建物取引士、管理業務主任者、2級FP技能士(AFP)などの保有資格を活かしながら、有限会社アローフィールド代表取締役社長として学習塾、不動産投資を行う。HEDGE GUIDEでは不動産投資記事を主に担当しています。専門用語や法律が多く難しいジャンルですが分かりやすくお伝えしていきます。