親の死後、家の名義変更はいつまでに必要?放置してしまった場合の注意点も

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親が死亡して相続によって不動産を取得した人の中には、名義変更手続きを行っておらず、いつまでに名義変更を行う必要があるのか気になっている人もいると思います。

特に期限が設けられていないのであれば、放置していても問題がないように思われますが、放置した場合には何かペナルティがあるのでしょうか?

この記事では、相続した不動産の名義変更の期限と放置した場合における注意点について解説します。

目次

  1. 家の名義変更はいつまでに必要?
    1-1.相続不動産の名義変更は義務化される(2023年4月施行)
  2. 名義変更を放置した場合の5つの注意点
    2-1.不動産の売却が自由にできない
    2-2.不動産の担保設定が自由にできない
    2-3.権利関係が複雑になる
    2-4.次の相続にかかる費用が2倍になる可能性がある
    2-5.2024年4月以降は相続登記が義務化され、正当な理由のない申請漏れには過料の罰則がある
  3. 相続不動産の売却・寄附・相続放棄を検討する場合
    3-1.相続不動産の売却
    3-2.相続不動産の寄付
    3-3.不動産の相続放棄
  4. まとめ

1.家の名義変更はいつまでに必要?

親が死亡した場合、親が有していた財産を相続することになります。親が死亡して不動産を相続した場合は親から相続人に所有権が移転しますが、名義(不動産登記)は勝手に変更されません。

不動産の名義は相続後に自ら変更しなければなりませんが、名義変更の期限がいつなのか分からないという人も多いと思います。

例えば、相続税の申告は相続の開始後10ヶ月以内、死亡した親が事業を行っていた場合は4ヶ月以内に純確定申告と期限が決まっています。

また、相続放棄や相続の限定承認は相続開始を知った時から3ヶ月以内、遺留分減殺請求は侵害を知った時から1年以内に請求と期限が決まっているので注意が必要です。

では、不動産の名義変更の期限はいつに定められているのでしょうか?名義変更について詳しく見ていきましょう。

1-1.相相続不動産の名義変更は義務化される(2024年4月施行)

これまで相続不動産の名義変更は義務化されていませんでした。登記を管轄している法務局からの電話もないため、変更せずにそのまま放置してしまっている方も少なくありません。

しかし、2021年4月に不動産登記法の改正案が成立し相続登記・住所変更登記の申請義務化が実施されることになり、同時に相続土地国庫帰属法と土地利用に関連する民法の規律の見直しが成立・公布となりました。(※参照:法務省「所有者不明土地の解消に向けた民事基本法制の見直し」)

相続土地国庫帰属法と不動産登記法・民法の一部改正は2023年4月から施行され、2024年4月から相続登記が義務化されます。

相続登記義務化の背景には、所有者不明の土地が増加していることが挙げられます。2016年度の国土交通省「所有者不明土地の実態把握の状況について」によると、1,130地区(558市区町村)の地籍調査(土地所有者の調査)にて、 登記簿上では所在不明の土地が全体の約20%に及びました。

その内66.7%は、相続時に所有権移転の手続き(登記)を行っていないことが未登記の要因です。このような未登記の不動産は自治体で所有者を把握できず公共事業が進まないといった問題が生じます。加えて登記していない建物・土地は管理がされていない、管理不全のケースが多く、空き家増加の要因となっています。

また、2022年11月時点では名義変更は義務ではなく期限も設けられていませんが、名義を変更していないと売却が出来なかったり、借入時の担保として承認されないなど様々な問題が生じます。

不動産の所有権は登記簿謄本の権利部に明示されています。登記に記載されている人が亡くなった場合は所有者が存在していないため、所有者の変更によるトラブルを未然に防ぐために新たな所有者に変更しておく必要があります。

また、所有者が不明瞭になることで放置した後のトラブルに発展することも考えられます。名義変更はなるべくスムーズに行った方が良いでしょう。

2.名義変更を放置した場合の5つの注意点

名義変更を放置した場合の注意点として以下の5つが挙げられます。

  • 不動産の売却が自由にできない
  • 不動産の担保設定が自由にできない
  • 権利関係が複雑になる
  • 次の相続にかかる費用が2倍になる可能性がある
  • 2024年4月以降は相続登記が義務化され、正当な理由のない申請漏れには過料の罰則がある

それぞれの注意点について詳しく見ていきましょう。

2-1.不動産の売却が自由にできない

名義人が死亡している不動産は相続人の共有となるため、その不動産を売却するには共有者全員の合意が必要となります。急に不動産を売却して現金化しなくてはならなくなった場合でも、共有者全員の合意を得るか、もしくは名義変更が完了するまで売却できず、売却タイミングを逃してしまう可能性があります。

【関連記事】相続不動産を売却するには?相続と売却、それぞれ手順を解説
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2-2.不動産の担保設定が自由にできない

金融機関で大きな借入をする場合、不動産などの資産を担保に設定することがあります。その際、金融機関は登記をもとに所有者を判断するため、名義変更がされていない家を担保設定することは出来なくなります。

なお、一部の金融機関によっては、登記の共有持分を担保とするローンを扱っていることもあります。

2-3.権利関係が複雑になる

不動産を所有していた父Aが死亡して、名義変更をしていない場合、民法上は相続人(B・C・D)の共有という扱いになります。(民法898条)

遺産分割協議を行ってどのように不動産を相続するのかを決める場合には、3人が集まって話し合わなくてはなりません。

どのように相続するのか決めずに共有名義のまま放置していると、Cが亡くなってしまった際、妻Eと息子F、娘Gといったように相続人が増え、遺産分割協議が複雑化してしまう可能性があります。

2-4.次の相続にかかる費用が2倍になる可能性がある

父AAが死亡して母Bが相続したものの、Bが名義変更せずに死亡しCが相続した場合には、Cが名義変更を行おうとすると費用が2倍になる可能性があります。

この場合、AからCに直接変更できず、A→B、B→Cと2回に分けて名義変更を行う必要があるため、名義変更の費用が2倍になるので注意が必要です。

また、「租税特別措置法第84条の2の3第1項」により、平成30年4月1日~令和7年3月31日までの間に上記のような名義変更を場合には、1回目の名義変更の費用が免除となります。(※参照:法務局「相続登記の登録免許税の免税措置について」)

まだ、名義変更を行っておらず、上記のように2回分の費用がかかってしまいそうな人は、免除の適用期間内に名義変更を行いましょう。

2-5.2024年4月以降は相続登記が義務化され、正当な理由のない申請漏れには過料の罰則がある

前述したように、2024年4月以降は相続登記が義務化され、正当な理由のない申請漏れには過料の罰則があります。いずれ義務化されてしまうので、早めに相続登記を行っておきましょう。

相続登記の義務化後、相続で取得したことを知った日から3年以内に相続登記をすることが義務になります。また、義務化以前に相続した不動産については、2027年3月31日までに相続登記をする必要があります。

3.相続不動産の売却・寄附・相続放棄を検討する場合

相続登記を行ったとしても、実際の不動産の活用に悩まれる方も多いでしょう。不動産を手放す方法としては、売却・寄附・相続放棄の3つの方法があります。まずは不動産査定を行って不動産の資産性を確認し、その後に売却・寄附・相続放棄の3つのパターンを検討すると良いでしょう。

3-1.相続不動産の売却

不動産査定を行う際は、複数の不動産会社に査定依頼ができる不動産一括査定サイトが便利です。無料で複数社の査定結果を比較することができるうえ、売却する際の相談もそのままスムーズに行える点もメリットとなります。

注意点としては、不動産査定サイトによって提携会社が異なることや、対応エリア外になるケースがあることです。下記の主な不動産一括査定サイトの比較表を参考に、利用を検討されてみると良いでしょう。

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【関連記事】不動産査定会社・不動産売却サービスのまとめ・一覧

3-2.相続不動産の寄付

相続した土地は売却するだけでなく、自治体や個人へ寄付(寄贈)するという選択肢があります。不要になった土地を贈ることで、その土地を必要とする人に有効活用してもらえるだけでなく、管理の手間や固定資産税等の税負担を軽減できるメリットがあります。

しかし、土地のような現物資産の寄付は現金寄付のように手軽には行えず、寄付先に合わせた手順を踏む必要があります。

相続土地国庫帰属制度

国や地方自治体に土地を寄付することで、土地の所有権を国・地方自治体に移転することができます。

しかし、自治体への寄付は「各省各庁が国の行政目的に供するために取得しようとする場合」となっており、行政目的で使用する予定のない土地の寄付は、コストが増大するため受け付けていません。売却が難しい土地の処分方法としては、活用しづらい方法です。

この問題を解決するために、「相続土地国庫帰属制度」があります。相続土地国庫帰属制度は、相続などによって土地を取得した人が、一定の負担金を支払うことで、その土地を国に寄付することができる制度です。(※参照:法務省民事局「所有者不明土地関連法の施行期日について」)

【関連記事】相続土地の国庫帰属制度はいつから?適用条件なども詳しく解説

3-3.不動産の相続放棄

被相続人(亡くなられた方)が住んでいた又は保有していた不動産を売却する事が難しい場合、処分をする手間や時間をかけたくない時には「相続放棄」により財産の相続を放棄することができます。

ただし、相続人全員が相続を放棄した場合には、遺産を管理する責任が発生します。全員の相続放棄の結果として空き家が発生してしまった場合、空き家の管理義務が残ることになるため、売却や寄付などの対応が必要になると言えるでしょう。

まとめ

親の死亡によって不動産を相続した場合、いつまでに名義変更をしなくてはならないのか気になっている人も多いと思います。

これまで不動産の名義変更は義務化されておらず、期限も設けられていませんでした。しかし、2024年4月以降は相続登記が義務化され、正当な理由のない申請漏れには過料の罰則があります。

その他、不動産の売却が自由にできない、不動産の担保設定が自由にできない、権利関係が複雑になるなどのデメリットがあります。後でトラブルに発展する可能性が高いため、相続によって不動産を取得した場合には必ず名義変更を行いましょう。

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佐藤 永一郎

筑波大学大学院修了。会計事務所、法律事務所に勤務しながら築古戸建ての不動産投資を行う。現在は、不動産投資の傍ら、不動産投資や税・法律系のライターとして活動しています。経験をベースに、分かりやすくて役に立つ記事の執筆を心がけています。

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矢野翔一

関西学院大学法学部法律学科卒。宅地建物取引士、管理業務主任者、2級FP技能士(AFP)などの保有資格を活かしながら、有限会社アローフィールド代表取締役社長として学習塾、不動産投資を行う。HEDGE GUIDEでは不動産投資記事を主に担当しています。専門用語や法律が多く難しいジャンルですが分かりやすくお伝えしていきます。