投資用マンションの売却でかかる税金は?計算方法や課税額を抑える4つの対策も

投資用マンションの売却では収入額が大きくなり、多額の税金が発生する場合があります。ただし、譲渡所得に関連する税金の計算手続きでは、計算構造や税率の規定、特例などをうまく利用することで納める税金を抑えられる可能性があります。

投資用マンションの売却を検討する際は、併せて譲渡所得税の計算の仕組みや特例について正しい知識を備えておくことが大切であるといえるでしょう。

この記事では、不動産売却にかかる税金について網羅的に説明したうえで、特に、譲渡所得税の計算手順や、課税額を抑える対策について解説します。

※記事内の税金・税率などは2022年3月時点の情報となります。最新の情報については、国税庁などのサイトをご確認のうえ、税理士などの専門家へのご相談もご検討ください。

目次

  1. 投資用マンションを売却したときにかかる税金とは
    1-1.印紙税
    1-2.登録免許税
    1-3.譲渡所得税・住民税
  2. 譲渡所得税の計算方法
    2-1.取得費の計算方法
    2-2.取得費が不明な場合
    2-3.売却費用の計算方法
  3. 投資用マンションの売却に関連して税額を抑える方法
    3-1.譲渡所得の取得費・売却費用を漏れなく計上する
    3-2.長期譲渡所得税の税率適用を受ける
    3-3.事業用資産の買換え特例を利用する
    3-4.相続物件である場合、相続税の取得費を加算する
  4. まとめ

1.不動産を売却したときにかかる税金とは

不動産を売却したときにかかる税金は、主に、印紙税、登録免許税、譲渡所得税、住民税の4つになります。売買契約時には、買契約書の作成について売買代金に応じた印紙税がかかり、登記手続きが必要になれば登録免許税がかかります。

売却について利益が出た場合、翌年以降、譲渡所得税と住民税がかかることになります。

1-1.印紙税

売買契約書の作成の際には、契約書に収入印紙を貼付して印紙税を納めることになります。不動産の売買価格によって印紙税の金額は次のようになっています。なお、令和4年3月31日までに作成される「不動産譲渡契約書」の印紙税は、軽減措置により原則の半額となっています。

契約価格 印紙税額
1万円未満 非課税
1万円超50万円以下 200円
50万円超100万円以下 500円
100万円超500万円以下 1,000円
500万円超1,000万円以下 5,000円
1,000万円超5,000万円以下 10,000円
5,000万円超1億円以下 30,000円
1億円超5億円以下 60,000円
5億円超10億円以下 160,000円
10億円超50億円以下 320,000円
50億円超 480,000円

※引用・国税庁「不動産の譲渡、建設工事の請負に関する契約書に係る印紙税の軽減措置

1-2.登録免許税

物件にローンが残っていて、設定されている抵当権を抹消しなければならないなど、個別事情により、登記が必要な場合は、それぞれ規定の登録免許税がかかります。

  • 抵当権抹消登記:不動産1個につき1,000円
  • 住所変更登記:不動産1個につき1,000円
  • 相続による所有権移転登記:不動産の固定資産税評価額×0.4%
  • 贈与による所有権移転登記:不動産の固定資産税評価額×2%
  • 分筆登記:不動産1個につき1,000円

※参照:法務局「登録免許税の計算

1-3.譲渡所得税・住民税

不動産の売却について利益が出た場合、売却した年の翌年2月16日から3月15日までに確定申告をおこない、その利益(譲渡所得)につき譲渡所得税が課されることになります。

不動産の譲渡所得税は分離課税という方式を採用しており、総合課税の所得(給与所得、事業所得、不動産所得など)とは、分離して所得や税額を計算するという特徴があります。

住民税は、譲渡所得税の確定申告の計算に基づいて、各市区町村が翌年6月頃に決定し、賦課してきます。それぞれの税率は、売却した不動産の保有期間に応じて下表のようになっています。

短期譲渡所得(5年以下) 長期譲渡所得(5年超)
譲渡所得税(復興所得税を含む) 30.63% 15%
住民税 9% 5%

2.譲渡所得税の計算方法

譲渡所得税のかかる不動産売却の利益(譲渡所得)を計算する式は、次のようになります。

譲渡所得=譲渡価格-(取得費+売却費用)-特別控除

譲渡価格は売却した価格です。取得費は不動産を入手するのにかかった費用、売却費用は売却するときにかかった費用、と考えることができますが、それぞれ、含めることができる費用はある程度決められています。また、建物を売却したときは、減価償却費を取得費から差し引かなければなりません。

以下では、取得費と売却費用の計算方法について解説します。

2-1.取得費の計算方法

譲渡所得における取得費は、次のように計算します。

取得価格+取得の際要した費用+取得後の改良費-減価償却費(建物の場合のみ)

取得価格とは、購入時の価格や建物であれば建築費用になります。

取得の際要した費用

取得の際要した費用は、様々な種類のものが考えられますが、主に次のような費用に限定されます。

  • 仲介手数料・登記費用
  • 登録免許税・不動産取得税・印紙税
  • 立退料
  • 土地の造成費用
  • 測量費用
  • 所有権確保のための訴訟費用
  • 建物付き土地の建物取り壊し費用
  • 土地・建物利用開始前の借入利子
  • 購入契約時の違約金

取得後の改良費と減価償却費

取得後の改良費とは、修繕費ではなく、物件の価値を高めるような費用になります。原状回復ではない大規模な修繕支出であれば、取得後の改良費に含めてよいと考えられます。

建物を売却した場合は、減価償却費を差し引かなければなりません。減価償却費というのは、経年劣化によって目減りした価値部分です。減価償却費は、目的や構造によって償却率が決まっていて、次のように計算します。

減価償却費=建物の取得費×0.9×償却率×経過年数

居住用建物の償却率は次のようになっています。ただし、賃貸などの事業用に供していなかった場合、法定耐用年数の1.5倍を用いるものとされています。

構造 耐用年数(法定の1.5倍) 償却率(法定の1.5倍) 
木造 22(33) 0.046(0.031)
軽量鉄骨 27(40) 0.038(0.025)
鉄筋コンクリート 47(70) 0.022(0.015)

※参照:国税庁「建物の取得費の計算

【関連記事】マンション売却の減価償却費を計算する手順は?確定申告の注意点も

2-2.取得費が不明な場合

購入時の売買契約書を紛失してしまったり、相続によって取得した先祖伝来の不動産であったりして、購入時の取得費が不明な場合もあります。その場合、売却価格の5%を取得費とできる概算取得費の制度があります。

しかし、これでは譲渡所得がかなり大きくなってしまい、実態にそぐわないということも考えられます。このような場合、合理的な計算方法によって推計された取得費であれば、認められる可能性があります。

例えば、国税不服審判所の判断では、土地取得価格については市街地価格指数、建物取得価格については着工建築物構造別単価を用いることを認めたケースもあります。(※参照:国税不服審判所「(平12.11.16裁決、裁決事例集No.60 208頁)」)

ただし、上記は一事例であり税務慣行とまでは言えません。取得費が不明な場合は、税理士に相談するなどして慎重に計算するようにしましょう。

【関連記事】不動産売却で取得費が分からない時の税金はいくらになる?確定申告の手順も

2-3.売却費用の計算方法

売却する時に要した費用として、譲渡所得の計算に含めることができるのは、税務慣行上、次のようなものに限定されているといえます。

  • 仲介手数料
  • 立退料
  • 土地の上にある建物の取り壊し費用
  • 売却に伴って生じた違約金

不動産の売却のために直接要した費用であり、維持または管理のための費用は含まれないので注意が必要です。

3.投資用マンションの売却に関連して税額を抑える方法

ここまで投資用マンションの売却にかかる税金について整理してきました。次に、税額を抑える方法についてみていきましょう。

税額を抑えるには、まずは譲渡所得の金額そのものをできる限り小さくすることが考えられます。さらに、税法の法令に則って、譲渡所得に関連してかかる税金を抑えていくことが考えられます。特に、長期所有では譲渡所得にかかる税率が大きく下がることに留意しておくようにしましょう。

3-1.譲渡所得の取得費・売却費用を漏れなく計上する

譲渡所得にかかる税金を抑えるには、譲渡所得を法令の範囲内でできる限り小さくする方法が考えられます。

上述したように、譲渡所得は、譲渡価格-(取得費+売却費用)という算式によって計算されるため、取得費や売却費用を漏れなく計上することで、小さくすることが可能です。法令上、計上が認められている費用を確認し、漏れなく集計するようにしましょう。

ただし、賃貸料収入に対応する必要経費として不動産所得に計上した費用については、譲渡所得の計算上の費用とすることはできないので注意しましょう。建物部分の減価償却費についても取得費から差し引く必要があります。

また、前述した概算取得費制度が適用されると実態よりも取得費が低くなる傾向にあります。購入時の売買契約書を紛失している場合、購入時の不動産業者に問い合わせるなどして、実額の取得費を把握して計上するようにしましょう。

3-2.長期譲渡所得税の税率適用を受ける

譲渡所得にかかる税金を抑えるには、譲渡所得にかかる税率が軽くなるタイミングである5年を超えて保有するという方法も有効です。

短期譲渡所得の税率と長期譲渡所得の税率とでは、所得税と住民税を合わせて、19.315%の差があります。売却する時期を、取得日から5年超経過した年の翌年以降とすることで、長期譲渡所得の税率の適用を受け、課税額を抑えることができます。

長期譲渡所得の税率適用を受けるには、年初の時点で所有期間が5年を超えていることが条件となることに留意しましょう。

【関連記事】不動産売却を取得5年以内にする時の税金は?税控除と特例4つのまとめも

3-3.事業用資産の買換え特例を利用する

売却した投資用マンションの代わりに買換える収益物件がある場合、事業用財産の買換え特例を利用することで、課税額を抑えることもできます。

事業用財産の買換え特例とは、事業用資産を売却して、一定の事業用資産に買い換えた場合、売却利益の80%を上限として、譲渡所得課税を繰り延べることができる特例です。賃貸用の土地建物もこの特例の対象となります。主な適用条件は、次のようになっています。

  • 元の事業用資産を10年超所有していること
  • 買い換え資産の面積が、元の資産の面積の5倍以内であること
  • 元の資産を売った前年から翌年までの3年以内に買い換えること
  • 買い換え資産を購入してから1年以内に事業用に利用すること

※参照:国税庁「事業用の資産を買い換えたときの特例

3-4.相続物件である場合、相続税の取得費を加算する

投資用マンションが相続した不動産である場合、相続税の取得費加算制度を利用することで、譲渡所得にかかる税額を抑えることが可能です。

相続税の取得費加算制度とは、相続した不動産の売却にかかる譲渡所得の計算において、その不動産の相続で納付した相続税分を取得費に加算する制度です。取得費に加算できる相続税額は次のように計算します。

その者の相続税額×売却した財産の価額/(その者の相続税の課税価格+その者の債務控除額)

ただし、この特例の適用を受けるには、その相続した財産を、相続日から3年以内に譲渡する必要があります。

なお、相続した不動産の売却では、譲渡所得の計算上、取得費や所有期間について、被相続人が行った行為が引き継がれることになります。取得費は、被相続人が取得した価格を基にして計算します。譲渡所得税の税率や特例の適用の基礎となる所有期間は、被相続人が所有していた期間を含んで算定することになります。

※出典:国税庁「相続財産を譲渡した場合の取得費の特例

まとめ

不動産を売却したときにかかる税金の主なものは、譲渡所得税と住民税です。譲渡所得は、売却価格から取得費と譲渡費用を引いて計算し、プラスになればそれに対して税率を乗じて課税されます。

譲渡所得にかかる課税額を抑えるには、譲渡所得の計算構造上、取得費と譲渡費用を漏れなく計上するようにしましょう。取得費の計算では、購入時の取得価格が不明であると多額の納税になるおそれがあります。購入時の契約書などを可能な限り準備するようにしましょう。

譲渡所得は5年を超え保有すると、税率が大きく下がります。所有期間が5年を超えたタイミングで売却を検討すると課税額を抑えることができます。買換え、相続が関係する場合は、それぞれ課税額を抑えることができる特例があるため、適用を受けることを検討してみましょう。

譲渡所得税の計算において判断に迷うときや、自分で申告することが難しい場合は、税理士などの専門家に相談するとよいでしょう。

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佐藤 永一郎

佐藤 永一郎

筑波大学大学院修了。会計事務所、法律事務所に勤務しながら築古戸建ての不動産投資を行う。現在は、不動産投資の傍ら、不動産投資や税・法律系のライターとして活動しています。経験をベースに、分かりやすくて役に立つ記事の執筆を心がけています。